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子会社株式の評価損に関する税務上の取り扱いについて

HUPRO 編集部
子会社株式の評価損に関する税務上の取り扱いについて

子会社株式は、原則として、期末簿価で据え置きます。しかし、会計上条件を満たした場合は、減損を行い、評価損を計上しなければなりません。この評価損の税務上の取り扱いはどうなるのでしょうか。

今回は、会計上子会社株式評価損の計上が必要な場合及びその評価損に関する税務上の取り扱いについて解説していきます。

会計上子会社株式の評価損の計上が必要な場合

①子会社株式に時価がある場合

子会社株式の時価が期末簿価の50%以上70%未満である時は、各企業が自主的に設けた基準により著しい下落と判定される場合で、かつ、回復可能性がなければ、子会社株式の減損を行い、子会社株式評価損を計上しなければなりません。

また、子会社株式の時価が期末簿価の50%未満であり、かつ、回復可能性がなければ、子会社株式の減損を行い、子会社株式評価損を計上しなければなりません。

②子会社株式に時価がない場合

子会社の財政状態の悪化により、実質価額が著しく低下した場合は、子会社株式の減損を行い、子会社株式評価損を計上しなければなりません。この実質価額は発行会社の貸借対照表をベースにし、基本的に1株当たりの純資産額に持株数を掛けることで計算します。ここで実質価額が著しく低下とは、実質価額が簿価の50%未満、かつ、回復可能性がない場合を指します。

税務上、子会社株式評価損が損金に算入される場合とされない場合

税務上、子会社株式評価損の損金算入は、a)子会社の資産状態が著しく悪化し、b)その価額が著しく低下したことによりその価額が子会社株式の帳簿価額を下回ることが要件です。

ここで、a)子会社の資産状態が著しく悪化とは、法人税基本通達9-1-9によると以下の通りです。

(1) 当該有価証券を取得して相当の期間を経過した後に当該発行法人について次に掲げる事実が生じたこと。

イ 特別清算開始の命令があったこと。
ロ 破産手続開始の決定があったこと。
ハ 再生手続開始の決定があったこと。
ニ 更生手続開始の決定があったこと。

(2) 当該事業年度終了の日における当該有価証券の発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額が当該有価証券を取得した時の当該発行法人の1株又は1口当たりの純資産価額に比しておおむね50%以上下回ることとなったこと。

また、b)価格が著しく低下とは、法人税基本通達9-1-7、9-1-11によると以下の通りです。

当該有価証券の当該事業年度終了の時における価額がその時の帳簿価額のおおむね50%相当額を下回ることとなり、かつ、近い将来その価額の回復が見込まれないことをいうものとする。

子会社株式に時価がある場合

会計上は、子会社の資産状態が著しく悪化していてもしていなくても、上記のように時価をベースに減損の必要性を判定し、必要な場合は子会社株式評価損を計上します。そして、子会社の資産状態が著しく悪化しているとは認められる場合は、子会社株式評価損は損金算入されます。

しかし、仮に子会社株式の時価が著しく低下したことにより子会社株式評価損を計上したとしても、子会社の資産状態が著しく悪化しているとは認められない場合、子会社株式評価損は、税務上、損金に算入されません。

これは、特別清算開始の命令、破産手続開始の決定、再生手続開始の決定、更生手続開始の決定のどれもがない場合で、かつ、1株当たりの純資産額が子会社株式取得の時よりおおむね50%以上下落していない場合、又は、1株当たりの純資産額が子会社株式取得の時よりおおむね50%以上下落していたとしても回復可能性がある場合があたります。

子会社株式に時価がない場合

これに関しては、会計上と税務上とで、子会社株式評価損計上の条件に大きな差がないため、子会社株式評価損は損金算入できるでしょう。

子会社の解散が見込まれる場合

①会社と子会社に完全支配関係がある時

親会社において計上された子会社株式評価損は損金算入されません。

②会社と子会社に完全支配関係がない時

親会社において計上された子会社株式評価損が損金算入されるかどうかは原則通りに判定されます。

合併が見込まれる場合

①その子会社との間に完全支配関係がある他の内国法人との間で合併を行うことが見込まれる場合

親会社において計上された子会社株式評価損は損金算入されません。

②その子会社との間に完全支配関係がない他の内国法人との間で合併を行うことが見込まれる場合

親会社において計上された子会社株式評価損が損金算入されるかどうかは原則通りに判定されます。

まとめ

ここまで見て来たことをまとめると以下のようになります。

会計上、時価がある子会社株式は、時価が著しく低下し、かつ、回復可能性がなければ、子会社株式評価損を計上しなければなりません。一方で、時価がない子会社株式は、子会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下した場合に、子会社株式評価損を計上しなければなりません。

税務上、子会社株式評価損の損金算入は、子会社の資産状態が著しく悪化し、その価額が著しく低下したことにより、その価額が子会社株式の帳簿価額を下回った場合に認められます。

また、子会社散や合併が見込まれる場合に、完全支配関係がある時は、親会社において子会社株式評価損は損金算入されません。

この記事を書いたライター

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