女性の社会進出が当たり前の時代ですが、税理士全体に占める女性税理士の割合は1割程度です。女性は男性以上に結婚や出産など自分のキャリアプランについて色々と考えることが多い傾向にあります。今回は女性税理士の年収事情と、税理士資格が女性におすすめの理由についてご紹介します。
女性税理士の数は着実に増えています。日本税理士連合会の統計によれば、平成24年に初めて1万人を突破し、近年は全体の14パーセントほどまで増えています。
現状では、割合的にはそれほど多いとはいえず、また独立開業を目指す女性税理士は少数派ですが、他の業界と同じように、男女共同参画社会の進展により女性税理士の活躍は増えていくと思われます。
また、中小企業を中心に、エステ関連など経営者を初めスタッフは全員女性という業種もあります。そういう会社は女性税理士が担当することを希望するケースがあり、女性税理士だからこそのニーズも市場に存在します。
厚生労働省の発表する「賃金構造基本統計調査」によれば、平成29年度の税理士の平均年収は1042万円でした。
ただし、「賃金構造基本統計調査」は、税理士と公認会計士を一緒にして統計を出していますので、やや正確性に欠ける点に注意が必要です。これはあくまで平均年収ですから、それ以上に稼いでいる人もいればそれ以下の人もいます。中には開業税理士で1億円以上の年収がある人も全体の0.1パーセントとごく少数ですがいます。
一方で平均以下の年収の人は、小規模事業者に雇用されたり個人事務所で集客が上手くいってない場合が多いようです。
では、女性税理士の年収事情ですが、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」を参考に積算すると、女性税理士の平均年収はおよそ600万円程度になります。その一方男性税理士の平均年収は830万円程で大きな開きがあります。
しかし、これが男女間の差別だと結論付けるのは早計です。女性税理士は時短勤務者や産休で受け取る賃金が少ないといった要因が絡んでいるからだと思われます。また、役職者が少ないことも関係しているでしょう。
税理士の業界は、基本的に男女間で給与面の差をつけることはなく、実力次第で昇給していくシステムが採られています。
また、産休や育休でブランクがあっても、仕事に復帰した後に給与面で不遇な扱いを受けることもほぼありません。むしろ最近は大手の会計事務所が中心ではありますが、優秀な人材を確保するために福利厚生を民案企業並みに改善しようとする動きがあります。そういう点では女性税理士にとって有利にこそなれ不利になることはないでしょう。
では、女性の税理士として年収を上げていくためにはどのようなキャリアを歩んでいけば良いのでしょうか。ここでは30代の女性税理士のケースで考えてみたいと思います。
30代の女性税理士は、年齢的に見ても職務経験が決して豊富というわけではありません。しかし、税理士試験を突破してきたことが職務経験の少なさをカバーし実務能力があることと同様の評価を受けて、給与水準が比較的高いのが現状です。そうすると、大きな不満がない限り同じ職場で着実に実務経験を重ね実務能力を高めていくことが年収を高める近道といえます。
しかし、大手の会計事務所などで人間関係などによりこれ以上のキャリアアップが難しいと感じたら、思い切って一般企業の経理職、経験によってはCFOに転職することを考えるのもいいでしょう。大手の会計事務所での勤務経験はきく評価され幹部候補生として採用される可能性もあります。その方が年収アップを図る面でもいいでしょう。
そしてもう一つ、定年後のことも考えておく方がよいでしょう。定年後に引き続き税理士を続けるとしても、勤務税理士だと大半は再就職扱いになり非正規雇用となります。そのため給与水準は一気に下がります。もし定年を迎える年齢になった後も以前と変わらない年収を希望するのであれば、独立開業を考える方がいいかもしれません。
独立開業すれば、定年はありません。体力と気力の続く限り仕事ができますし、年入も仕事に見合った額が期待できます。いずれにしても30代は岐路に立っているといえるかもしれません。
税理士資格をおすすめする理由は大きく分けて3つあります。
第一に資格に有効期限が無いことです。一度得た税理士資格は、税理士法違反を行わない限り、はく奪されることがありません。
よって女性のライフイベント等で税理士業務の就業から離れた後に、また就業したいと考えた際にも、税理士資格は消える事が無く、次の職場等でも活かすことが出来ます。
第二に税理士資格を保有していることで一定の評価を転職の際に得られることが出来ることです。転職をする際には、いくら前職での功績があったとしても、その功績について次の職場で最初から評価されるとは限りません。
税理士資格は国家資格であることから、資格保有者は会計におけるスペシャリストとして性別を問わず多くの職場で認められています。
また、税理士事務所は全国どこに行っても必ず存在しています。
家族の転勤や、引っ越しなどで住居が変わったとしても就職できる場所を見つけられる可能性が高いです。
そして最後の理由としては、税理士試験の制度が挙げられます。
税理士試験は、全部で5つの試験科目に合格をしなくてはいけませんが、この試験科目は1年に1つずつ受験することも、1年に5つ受験することも可能です。
またその試験科目の合格実績に有効期限が無く、5つの試験科目に合格するまで何年かけても良い試験です。1年に5つ受験をして全て1度に合格を得る、という人は非常に稀であり、多くの人が複数年に渡って税理士試験の受験生活を過ごしています。
このように1つずつ受験することが可能であり有効期限がないことから、数年に渡る受験生活から女性のライフイベント等で離れる場合にも、また受験生活に戻ることが可能であることが、女性におすすめである試験であるといえます。
女性が税理士を目指すのがおすすめである理由についてご説明いたしましたが、反対に税理士を目指す懸念点・デメリットもあります。
まずは、繁忙期の残業時間です。税理士は事業会社の決算に合わせて仕事をすることが多いので繁忙期と閑散期が割と明確にあり、繁忙期には残業が多くなります。出産や子育てなどプライベートとの両立が難しくなることもあるでしょう。
税理士試験は、仕事をしながらでも両立できる試験と言われてはいるものの、やはり難関資格ですので多大な勉強時間を確保する必要があります。繁忙期に残業が多いことのデメリットと同じように、プライベートの時間を確保しながら資格勉強を進めることには覚悟が必要です。
では、女性税理士がどのように働いているのか、具体例を挙げながら見ていきたいと思います。
まず、女性税理士は最初にも述べたようにまだ人数としても少ないものの、需要があるため、非常に希少価値が高いと言われています。そのため、女性の働き方を考慮してくれる税理士法人は非常に増えており、多様な働き方がみとめられつつあります。
例えば、20~30代の場合。
20代頃に税理士資格取得を目指し始め、30代前半までかけて試験に合格する方が多いでしょう。男女関わらず、税理士法人では試験休暇や、時短を認めているケースがほとんどですので、働きながら資格取得を目指す方が多いです。
そして、30代以降になると、女性は出産や子育てなどのライフイベントが増えてきます。最近の税理士法人では、産休・育休の推奨をしていることがほとんどです。税理士資格を持っていれば、育児休暇を終えて復職しても、何の問題もなくキャッチアップすることができるでしょう。
また、税理士法人では時短勤務やパートでの勤務をする方も多く、子供が大きくなるまで育児と両立しながら働くことも可能です。
パートや時短勤務可能の求人も最近は非常に多いので、チェックしましょう。
女性が結婚、出産後も仕事を続けることは今後もますます増えていくでしょう。女性税理士は、男性税理士に比べてコミュニケーション能力が高いので相談業務などに適正があるともいわれています。またきめ細かい配慮や丁寧な仕事ぶりを高く評価する向きもあります。年収などの待遇も男性税理士と同等か上回っているケースも珍しくありません。
しかし、さらなるキャリアアップを目指して収入を上げることを考えているのであれば、転職も一つの方法です。今の職場以外にもあなたの能力を高く評価してくれる会計事務所が見つかるかもしれません。
税理士の年収事情についてはこちらのコラムでも詳しく紹介していますので、ぜひご覧ください。
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