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ストックオプションでかかる税金とは?確定申告は必要?

HUPRO 編集部
ストックオプションでかかる税金とは?確定申告は必要?

ストックオプションは、会社の役員や従業員などに対して、株式を取得する権利を付与する制度です。このストックオプションの権利行使や取得した株式の売却で所得があった場合、そのストックオプションのタイプに対応した税金がかかってきます。今回はストックオプションでかかる税金について解説していきます。

そもそもストックオプションについてよく分かっていないという方は下記のコラムでストックオプションについて詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。

税制適格と税制非適格について

ストックオプションの発行は、無償で行われることが大半です。
無償ストックオプションは、税制の観点から、税制適格のものと税制非適格のものの2つに分けられます。
法律で定められた要件にあてはまるもののみが税制適格となり、それ以外は税制非適格となります。後述するように、税金に関しては税制適格のほうが税制非適格よりも有利になっています。

ストックオプションが税制適格であるための主な要件は、以下の通りです。

・権利行使期間は、付与決議の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間
・新株予約権の1株当たりの権利行使価格は、付与契約締結時の株価以上
・付与対象は、発行会社またはその子会社の取締役・執行役・使用人・権利承継相続人に限定
・権利行使価額の年間合計額が、1,200万円を超えない

税制適格であるための要件の全容につきましては、「租税特別措置法第29条の2」および「租税特別措置法施行令第19条の3」をご覧ください。

1円でのストックオプション発行もある

ストックオプションは有償での発行もできます。無償ストックオプションでは役員や従業員に無償で権利を付与しますが、有償ストックオプションでは役員や従業員が一定の額を支払わないと権利を取得できません。
ただし、有償といっても、1円などの低い価格で発行されることもあります。有償にするのは、税制非適格ストックオプションよりも税制において有利な点があるためです。
有償ストックオプションにつきましては、以下の記事で詳しく説明されています。

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税金がかかるのは権利付与時と株式売却時

ストックオプションでは、権利付与時と権利行使時と株式売却時での株価によって利益が確定し、税金がかかってきます。税制適格と税制非適格では、税金のかかりかたが異なります。

権利付与時

ストックオプションに関するタイミングとしては、まず権利付与時が考えられますが、このときは税制適格でも税制非適格でも税金はかかりません。
また、以降の税金の計算においても、権利付与時の株価は関係なく、あくまでも権利行使価格が基準となります。

権利行使時

ストックオプション権利行使時は、税制適格では税金はかかりませんが、税制非適格では税金がかかります。税制非適格の場合、「(権利行使時の株価-権利行使価格)×権利行使株式数-手数料」が給与所得となり、総合課税での課税対象となるのです。

この場合、権利を行使して株式を取得したものの、まだ現金としては手元に受け取っていない状態になります。しかも総合課税ですので、通常の給与所得などと併せて超過累進課税方式による税率(所得税最高45%、住民税10%で合計最高55%)がかかってきます。
そのため、もし上記所得額が高額になったときは、所得税の支払いの際に現金不足になるおそれがあります。税制非適格での権利行使のタイミングは、慎重に考える必要があるでしょう。

株式売却時

ストックオプション権利行使時は、税制適格でも税制非適格でも税金がかかります。税制適格では「(株式売却時の株価-権利行使価格)×売却株式数-手数料」が譲渡所得となり、申告分離課税での課税対象となります。

税制非適格では「(株式売却時の株価-権利行使時の株価)×売却株式数-手数料」が譲渡所得となり、申告分離課税での課税対象となります。株式の譲渡所得の税率は、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)です。株式を売却して手元に現金がある状態ですので、税金の支払いの手当てに困ることにはなりにくいでしょう。

なお、税制適格ストックオプションは特定口座の対象外なので、自分で損益を計算して確定申告をする必要があります。税制非適格ストックオプションでは、株式の入庫先が一般口座か特定口座(源泉徴収なし)のときは確定申告が必要です。

ストックオプションは外資系やスタートアップで多い

ストックオプションを発行するのは、外資系やスタートアップ(ベンチャー)の企業で多い傾向があります。外資系企業では、会社の役員や従業員などの会社の業績や株価に対する意識を高めることが主な目的となっています。

スタートアップ(ベンチャー)の企業では、IPO(新規上場、株式公開)による自社株の値上がりをインセンティブとして、定着率やモチベーションや経営参加意識を高めることが主な目的となっています。自社株がいずれかの市場にIPOするまでに至れば、成長期待から株価が値上がりし、ストックオプション行使による利益を得られる可能性が高いです。上場によって得られた資金により、飛躍的に急成長していく可能性もあります。

しかし、IPOに至らないときは、ストックオプション行使による利益を得ることは残念ながら難しいでしょう。
いずれにしても、現金の支出を伴わない形での報酬支給の手段のひとつとして、ストックオプションはさまざまな企業で活用されています。

まとめ

ストックオプションでかかる税金について、解説してきました。

以下がこの記事のまとめです。

・ストックオプションは役員や従業員に株式取得件を付与するしくみ
・税制適格ストックオプションでは、売却時に税金がかかる
・税制非適格ストックオプションでは、権利行使時と売却時に税金がかかる

この記事が少しでもご参考になったなら幸いです。

ストックオプションは優秀な人材を確保する際に付与されるケースが多いです。また、ストックオプションは新株予約権の1種です。これらについて詳しく書かれた記事も公開しています。よろしければご覧ください。

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