毎年5月頃になると、従業員の住民税に関する通知が各自治体から送られてきます。事業主には、従業員の毎月の給与から住民税分を特別徴収して納税する義務があります。この特別徴収を行ったとき、どの勘定科目でどのように仕訳を行ったらよいのでしょうか。
今回は従業員から特別徴収した住民税の勘定科目について解説していきます。
住民税は日本の税金です。国税ではなく、都道府県や市町村によって課される地方税です。「都道府県民税」と「市町村民税」があり、個人にも法人にも課されます。
地方税法に基づいて個人に対する住民税(都道府県民税と市町村民税)を賦課・徴収しているのは、市区町村です。
1月1日現在での居住地(原則として住民票に記載されている住所)の自治体により課税されます。
納付する住民税の税額は、以下のように「所得割」と「均等割」の2つを合計した金額になります。
日本全国どこの市町村に住んでいても、住民税額は同じ方法で算出されます。日本全国どの市町村に住んでいても、所得額が同じであれば住民税額も同じ金額というのが原則です。
しかし、均等割額や所得割額の算出において、標準税率と異なる税率を設定している市町村があるため、所得額が同じであったとしても地域によって多少の差が出てくることがあります。
住民税の計算の仕方についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
<関連記事>
住民税の徴収方法には「普通徴収」と「特別徴収」の2つの方法があります。
普通徴収は自治体から納税義務者の自宅宛に毎年6月頃に税額通知書(納付書)が送付されてくるので、それを使って自分で支払う方法です。従業員以外(個人事業主など)が自ら住民税を支払う方法になります。
市区町村役場や、各金融機関や郵便局などの窓口で支払えますが、自動口座振替で支払うこともできます。納期は通常、6月・8月・10月・1月の4期に分かれています(全4回で分納)。
特別徴収は、事業主が従業員の給与から住民税相当額を天引きし、従業員本人に代わって事業主が支払う方法です。各年の税額は、自治体から毎年5月末までに通知される特別徴収税額の通知書に記載されています。
天引きした住民税は、給与を支給した翌月の10日までに市区町村に納付しなければなりません。この天引きと納付を、基本的には毎月の給料支払ごとに行います(全12回で分納)。
給与から天引きなので支払い忘れがないことや、1回当たりの支払金額が少ないので負担感が軽いなどが特別徴収のメリットとされています。
従業員が少ない場合(常時10人未満)や、従業員が辞める確率が低い場合、税額が少ない場合、毎月納付するのが面倒な場合などでは、特別徴収税額の納期の特例に関する申請書を提出すれば、納付回数を減らすことができます。
原則として、給与を支払っている場合、事業主はすべての従業員の住民税について特別徴収する義務があります。
参考:個人住民税は特別徴収で納めましょう | 地方税共同機構
従業員に対して給与を支払うとき、住民税の特別徴収税額を給与支払額から差し引いた額の給与を従業員に支給します。
ここで給与から差し引いた住民税は、事業主側がいったんこれを預かるので、「預り金」という勘定項目を使って仕訳するのが一般的です。この「預り金」勘定項目は、住民税の特別徴収に限らず、一時的に預かった金銭を仕訳するときに使用される一般的な勘定科目でもあります。
住民税のほかにも、源泉所得税や社会保険険料なども差し引かれることになります。これらを区別するために、勘定項目を「住民税預り金」としたり、「預り金」勘定に補助科目を設けたりして、預り金の種類ごとに管理することが実務では行われています。
住民税に関する仕訳の例を示します。
従業員に対する給与200,000円から住民税の特別徴収税額10,000円を差し引き、残りの190,000円を現金で支給したときの仕訳は、以下のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
給与 | 200,000 | 現金 | 190.000 |
預り金 | 10,000 |
従業員から預かった住民税10,000円を翌月10日までに現金で納付したときの仕訳は、以下のようになります。
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
預り金 | 10,000 | 現金 | 10.000 |
従業員の給与から住民税を特別徴収したときの勘定科目について、解説してきました。
以下がこの記事のまとめです。
この記事が従業員の住民税の勘定科目について少しでもお役に立てたなら幸いです。