所得控除としてよく聞くことのある青色申告特別控除ですが、実際にはどういった制度なのでしょうか。また所得から65万円を控除するには、複式簿記を利用している必要がありますが、青色申告特別控除の金額はどのように仕訳すればよいのでしょうか。今回は、青色申告特別控除およびその勘定科目について解説していきます。
青色申告特別控除とは、条件を満たした青色申告者に対して、所得金額から最高65万円又は10万円を控除する制度です。白色申告と比べて、面倒で難しいというイメージがあります。しかし条件を満たせば、最大65万円という大きな控除の効果があるため利用できるなら是非利用したい控除制度です。
この青色申告者になるためには、所轄税務署長に青色申告申請書を提出せねばなりません。
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青色申告特別控除が65万円になるケースとして以下の4つがあります。
最初の条件として、事業所得もしくは不動産所得が発生する事業を営んでいる必要があります。仮に、他の条件を満たし、事業所得または不動産所得が発生する事業を営んでいても、この2つの事業から得る合計収入が65万円に満たない場合は控除金額もその合計収入の金額になります。
次に、帳簿には単一簿記ではなく複式簿記で取引を記帳していなければなりません。単一簿記に比べて、複式簿記の方がミスが少なく取引を理解しやすいと考えられているからです。また、帳簿は7年間に渡り保管しておく必要があります。
帳簿を利用して貸借対照表及び損益計算書を作成の上、添付しましょう。
2020年(2019年度)の確定申告期は、2月17日(月)から3月16日(月) 2021年(2020年度)の確定申告期は、2月16日(火)から3月15日(月)です。このように、毎年、確定申告期は決まっています。この期間内に確定申告を行わないと、控除が受けられないだけでなく、場合によっては追徴課税や重加算税の納付命令を受ける可能性があります。注意しましょう。
上記の①~④の条件をすべて満たした場合に65万円の控除が受けられます。
所得金額を減らすことができれば、具体的には以下のメリットがあります
所得税は所得金額に合わせた税率を掛けて金額が算定されます。そのため、所得金額が減れば、所得税の金額も減ります。
住民税は、所得割と均等割という2つの計算方法で算出します。このうち、所得金額に応じて金額が変動するのは所得割で、所得の10%が住民税として徴収されます。そのため、所得金額が減れば所得割の部分の金額が減り、住民税が節税できます。
国民健康保険料も、住民税と同じく、所得割と均等割という2つの計算方法によって算出されます。所得割の金額は、所得金額が減れば、減額することが出来るため、国民健康保険料も減ります。
そもそも、国民健康保険料に対する控除制度はあまりありません。そのため、青色申告特別控除は国民健康保険料を控除するための貴重な手段の一つだといえます。
ここまで青色申告特別控除には10万円と65万円の2種類があると記載してきました。
しかし、2020年(令和2年)分の確定申告以降、特別控除額65万円が55万円へと減額されます。この代わりに、基礎控除の金額が38万円から48万円に増額されます。
そして、2020年(令和2年)分の確定申告以降、e-Taxで青色申告の手続きを行えば、特別控除額がこの55万円から65万円へと10万円分増えます。すなわち、e-Taxの利用で10万円分の控除額増加につながるように改正があります。
結論から言えば、青色申告特別控除は仕訳しません。なので、勘定科目の利用はありません。
青色決算書の損益計算書では「青色申告特別控除額」として10万円もしくは65万円の金額を記入し、その下で所得金額を計算します。しかし、これは仕訳を切り帳簿に記帳して対応するわけではなく、損益計算書に直に控除の金額を記載するという対応を取ります。また、青色決算書の貸借対照表に記入する金額は「青色申告特別控除前の所得金額」です。そのため、やはり仕訳を利用していないことが分かります。
以上ここまで、青色申告特別控除の制度について解説しました。
青色申告特別控除のメリットをおさらいし、平成30年度のe-taxに関する税制改正を把握し、青色申告特別控除は帳簿に仕訳せず勘定科目の利用がないことについて説明して来ました。
65万円の所得控除は大変メリットが大きいので、是非この制度を利用しましょう。