財務レバレッジは自己資本を1とした場合にその何倍の総資産を事業に投下しているかを示す指標です。企業の資本の効率的活用度合いを示すとともに、企業の安全性を示す指標となります。
では、財務レバレッジの目安はどのくらいになるでしょうか?製造業を中心に解説します。
財務レバレッジに関して基本的なことを知りたい方は下記の記事をご覧ください!
財務レバレッジについて簡単におさらいすると、冒頭でお話した通り自己資本を1とした場合にその何倍の総資産を事業に投下しているかを示す指標です。計算式としては以下の通りです。
(計算式)財務レバレッジ(倍)= 総資産÷自己資本
では、一般的には財務レバレッジはどれくらいが良いと言えるでしょうか。一概には言えないのですが、一般的には2倍を超えないことが優良企業の条件とされています。
財務レバレッジが2倍というのは、借入金や買掛金等の他人資本と、株主からの出資や今までの利益の積み上げである自己資本との比率がちょうど半々となります。他人資本に依存しすぎず、また自己資本をある程度活かせていると判断される為、この2倍というのが一つの目安となります。
今まで一般的な企業における財務レバレッジの目安をお話しました。それでは、製造業における財務レバレッジはどのくらいが一般的な数値となるでしょうか。
経済産業省の発表によると、製造業における財務レバレッジは中小企業で4倍、大企業で2.5倍程度となります。これは、卸売業の中小企業で5倍、大企業で4倍程度であることに比べて若干低いものと言えます。
これは、製造業では株主から出資された資本については固定資産などの大型設備に投下されるものの、そこからはその設備を活かして効率的に資金を回すためです。卸売業等では日々の取引量が重要となっている為、他人資本をどれくらい効率的に回すかが重要となってくるのです。
それでは、製造業における財務レバレッジの目安はいくらになるでしょうか。
先ほどお話した通り大企業で2.5倍、中小企業で4倍が平均的な数値と言えます。これらを下回れば平均以下とも言えますが、日本企業の7割程度が赤字と言われている中でこの数値を目安にしても若干ハードルが低いと考えてよいでしょう。
製造業であれば一度設備投資をすればその後は償却され簿価が減少していくと考えられるため、新たな設備投資をしなければ総資産は極端に増えることはありません。よって、一般的な優良企業である2倍を超えないというところより若干ハードルが上がり、1.5倍で超優良企業、2倍を超えなければ優良企業であると言えるでしょう。実際に、上場会社でも財務レバレッジが2倍を超えていない企業というのはあまりない理由は、積極的に事業展開している場合はどうしても財務レバレッジが高くなってしまうことによります。
では、製造業において財務レバレッジを1.5倍や2倍等にすることを目指して自己資本を増していくことが需要なのでしょうか。
実は、財務レバレッジが低ければ低いほど企業が安全ということで重要な指標なのですが、あまり財務レバレッジを気にしすぎるとかえって企業判断を鈍らせます。
財務レバレッジは冒頭にお話した通り、企業に投下された自己資本をどれだけ有効に活用して資産を増やしているかを示す指標です。確かに財務レバレッジが低ければ企業に蓄えがあり少しのことでは経営は傾かないと言えるでしょう。しかし、反対に守りに入って設備投資をあまり実行していない企業であるとも映ります。また、株主にとっては過剰な自己資本があるのであれば、配当等で還元してほしいと思い、経営者に不満を抱く可能性があります。
よって、財務レバレッジは一定の率を目安にしても良いですが、積極的な投資をする場合にはこだわりすぎると経営が委縮してしまうため注意が必要です。
財務レバレッジは総資産を自己資本で割って計算されるため、金額ではなく割合としての指標となります。よって、どんなに大きな企業でも町の商店であったとしても同じように扱われてしまいます。
しかし、大企業と町の商店では企業の安全度は同じであると言えるでしょうか。同じ財務レバレッジが2倍であったとしても、大企業の自己資本が1,000億円、町の商店の自己資本が1,000万円であれば、あきらかに大企業の方が安全であると言えます。
よって、大企業であればある程度の財務レバレッジを確保しているのであれば積極的に他人資本により資金調達をして事業展開をしていくことが考えられます。現に、ソフトバンクのようにM&A中心で大きくなっている企業であれば財務レバレッジをあまり気にせずに活動しても良いとされます。
製造業の財務レバレッジは他業種よりも若干低くなる傾向にあるため、あまり高くなりすぎないようにすることが大切です。とはいえ、ある程度の自己資本がある企業であれば財務レバレッジを気にせずに積極的に投資を行うことも有用と言えるでしょう。