士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

新リース会計基準とは?日本基準への適用も?

HUPRO 編集部
新リース会計基準とは?日本基準への適用も?

国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)にて、2019年1月1日以後に開始する事業年度からは、国際財務報告基準IFRS16号による新リース基準が強制適用となっています。本記事では現状のリース会計基準から新リース会計基準に伴い変更される可能性が高い会計処理と、その適用スケジュールの見通しなどについて解説します

新リース会計基準の対象

新リース会計基準適用の対象になるのは、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)を導入している企業です。

国際会計基準(IFRS)適用済み会社は204社、適用が決定している会社は11社(2019年9月現在)、米国会計基準(USGAAP)を採用している企業は12社(2019年11月現在)と、その数は多くはないのですが、いずれもいわゆる大企業や有名企業です。

出典:日本取引所グループ 上場会社情報
出典:米国基準の採用企業一覧

新リース会計基準で変わること

リースは基本的に、備品や車などを契約する「オペレーティング・リース」と、売買と同じような形で分割払いをしている「ファイナンス・リース」の2つに分類されます。

国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)では、厳密にいうと基準が少し違うのですが、共通して、前者のオペレーティング・リースの取扱いに大きな変更が加えられました。

今までのオペレーティング・リースでは、リースの借手は備品や車などを「オフバランス」(バランスシートから外す事)として処理しており、かかる費用を損金として計上し、固定資産として計上する必要はありませんでした。

このことから、リースを積極的に活用して固定資産を貸借対照表から外すことで、全額費用として計上して総資産利益(ROA)などの財務指標を向上させ、企業としての評価を高めることにもつながっていたのです。
しかし、新リース会計基準では、オペレーティング・リースについても、貸借対照表の資産と負債に「使用権資産」と「リース負債」として、それぞれをオンバランスしなければならなくなります

この会計処理は、全てのリースに適用されるため、備品や車だけでなく、これまでリース契約としてみなされてこなかったオフィスや店舗・倉庫といった不動産の賃貸契約についても、「使用権」があるという事で、新基準ではリース契約としてオンバランスしなければいけない点に注意が必要です。

今までオフバランスだったものをオンバランスすることで、結果的に総資産及び総負債が増加しますので、リースを積極的に活用していた企業ほど、様々な財務比率や業績評価指標に大きな影響を及ぼすことが懸念されています。

ただし、例外の対応として以下の2つは従来通りオフバランス処理が認められています。
・リース期間が12カ月以内の短期リース
・少額リース(およそ5000ドル以下)

新リース会計基準で行うべき業務

新リース会計基準においては、リースという概念自体が変わっていますので、まずはリース料として費用計上しているものの個別の判断を行うほか、今までリースとしてみなしていなかった賃貸借取引についても、リースに該当するのかどうかという確認が改めて必要です。

監査法人や会計事務所と連携したうえで、現在の賃貸借取引を洗い出して整理することが求められます。
まずは、リース・賃貸借取引をしている物件と管理部署を確認し、それぞれの物件の管理について対応部門と取扱範囲を新たに定めます。
つまり、リースに該当するようなものをいったん全て棚卸する必要があります

その中から、短期リースや少額リースなど新リース基準で資産計上に該当しないものを省き、残りを資産登録します。
これは、全部門で対応しなくてはならない大掛かりな作業です。

経理部門においても、従来のオペレーティング・リースにおける資産登録、リース物件の変更・追加に伴う仕訳数の増加や、契約条件の変更に伴う対応が求められ、業務の増加が想定されます。

今までのリース物件の処理についての業務プロセスの変更、およびその処理がシステム化されているところは新システムの構築も必要になるでしょう。
さらに、予算策定においても、固定資産が増えることになるので、そのことを加味した減価償却と使用権の資産の将来予測という新たな観点が求められます。

新リース会計基準は日本の会計基準に導入される?

現在、国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)のみの導入となっている新リース会計基準ですが、日本の会計基準についても導入を検討する動きが出てきています。

実際に、日本の会計基準を作成している公認会計士や銀行などで構成される「企業会計基準委員会(ASBJ)」という組織の事務局が「すべてのリースについて資産及び負債を認識する会計基準の開発に着手することが考えられる」と既にその方向性を示しているのです。

出典:企業会計基準委員会 第405回企業会計基準委員会の概要

日本は新リース会計基準の導入については、すぐに会計基準が変更されるような直近の段階ではありませんが、いずれは世界基準に合わせて強制適用されるでしょう。早ければ2023年にも適用されるのではないかという見方もあります。

「うちは国際会計基準(IFRS)、米国会計基準(USGAAP)を導入する予定はないから」と対岸の火事のように眺めていると、これからの会計基準変更が決定された時に対応が出来ない恐れがあります。

例えばコピー機などの什器や営業車のリースカーなど、従来のオペレーティング・リースを導入していないところも、新基準によってその適用範囲がオフィスなどの不動産賃貸まで広がるので、日本の会計基準に新リース会計基準が導入されると、その影響は規模の大小を問わず、ほとんどの企業に及ぶ事が考えられます。

こうした動きがあるということを念頭に置いて、新リース会計基準の変更については情報収集を行うとともに、制度対応にむけて作業をすすめておくことが求められています

まとめ

日本企業でも大手企業を中心にIFRSやUSGAAPの導入が進んでいます。そのため、新リース会計基準が適用される企業も少なくありません。導入に際して、まずリース・賃貸借契約をしている物件を明確にし、資産の分類を行う必要があります。日本の会計基準へのこの新リース会計基準の導入は検討段階で、すぐに実行されることはありませんが、近い将来確実に導入されるが考えられるため、今から知識を少しずつ整理していくのが良いでしょう。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び
    タグ:

おすすめの記事