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示談交渉着手金の仕訳や勘定科目は?経理のお悩み解決します!

公認会計士 大国光大
示談交渉着手金の仕訳や勘定科目は?経理のお悩み解決します!

経理をしていると様々な勘定科目が出てきて、仕訳をするたびに調べることがあると思います。例えば「示談交渉着手金の仕訳をしておいて」と言われた場合、どのような勘定科目でどんな流れで仕訳をするべきでしょうか。
今回は、そんな示談交渉に係る仕訳を着手金段階から順番に現役公認会計士が解説します。

1.示談交渉とは?

示談交渉(じだんこうしょう)とは、示談つまり簡単に言えば和解について交渉することを言います。わかりやすい例で言いますと、交通事故が発生した場合には両者に過失割合と言って互いに互いを保証する義務が出てきます。
互いに主張を譲り合わないとすると最悪裁判まで発展して法廷で主張をしあうこととなります。しかし、お互いに忙しかったり過失割合も複雑では無さそうという判断をしたりすると示談をして本人同士で解決することとなります。
その際に例えばAさんの過失による損害がBさんに100万円、Bさんの過失による損害がAさんに40万円だったとすると、最終的にAさんがBさんに60万円の示談金を支払うこととなります。

示談金とは

ここで、示談金というものが出てきますが、示談金にはどんな内容が含まれるのでしょうか。
またわかりやすいように交通事故としますと、事故による車の損害、治療費や通院費、会社を休むことによる給与の減額負担、五体満足であればこれから得られるはずであった利益の補償、精神的ダメージに対する慰謝料等様々なものが示談金には含まれます。

《交通事故例》
事故による車の損害
治療費
通院費
会社を休んでいる給与の減額負担
精神的ダメージよる慰謝料

これらの計算は様々な要素を掛け合わせて足し算をすることによって決まってくるため、基本的には弁護士を通して決定することが多くなります。ただし、どう見ても軽微な場合は当事者同士で解決することもありますし、保険会社に一任することも良くあります。

示談交渉の流れ

示談交渉としては、まず交通事故が発生した際に警察や自身の保険会社に連絡するところから始まります。
その後、けがをしている場合は完治するまで通院もしくは入院をしてその明細書を保管することとなります。この際車が運転できなかったことによりタクシーや公共交通機関を利用した場合もその領収書や利用区間(料金)のメモを残しておくことが必要となります。
完治して社会復帰ができて支払総額が固まったら示談交渉がスタートします。示談交渉は弁護士に依頼することが多いのですが、弁護士も無報酬で引き受けるわけにはいきませんので、頭金としての示談交渉着手金を請求し、依頼者が支払うこととなります。

4.示談交渉着手金の仕訳と勘定科目

では示談交渉を始めてもらうにあたって支払った着手金はどのような勘定科目となるのでしょうか。
ここで、示談交渉の着手金というのは弁護士に事件を依頼した時に支払うものであり、事件の結果に関係なく返還されません。つまり、着手金は報酬の内金でも手付金でもなく、事件が成功しなくても返ってこないお金であるとされています。
つまり、支払った際に費用とできるため、仕訳や勘定科目は以下のようになります。

※なお、源泉徴収の必要性の有無や金額については弁護士の請求書の記載に従って処理してください

ちなみに、反対に弁護士側では示談交渉着手金の入金があった際に売上計上されることとなります。
ただし、これは費用処理ができるというだけで、会社によっては支払報酬の代わりに仮払金で処理する場合があります。これは、会社にとっては示談交渉着手金も後の示談金や弁護士費用も一連の支出であると考えられるため、費用が確定していないとみている為と言えます。ただし、仮払金処理することは税務上メリットがない上に、会計監査を受けている会社ではその仮払金に資産性が無い為金額的に重要であれば費用処理を公認会計士から指摘される可能性があるため注意が必要です。

5.示談終了後の勘定科目と仕訳

示談が終了すると、弁護士に成功報酬を支払うことと、相手方に示談金の支払をすることとなります。示談金自身は、会社によって勘定科目が異なりますが、損害賠償費用等の科目を用いることとなります。営業外費用とするか販売費及び一般管理費とするかも会社の今までの会計処理によることとなり、初めて記帳する場合はどちらかで今後も記帳することとなります。ただし、多額に発生してしまった場合は特別損失に計上されることから、その整合性を採って軽微な場合は営業外費用の雑損失等で計上することが考えられるでしょう。

6.示談金が費用処理できないことがある!?

今までは示談金が費用処理できる前提でお話しました。しかし、費用処理できないことがあるため注意が必要です。
交通事故を例に挙げると、会社の業務をしていた際の事故であり、故意または重過失ではない場合に限られます。これが会社の業務ではなくプライベートでの事故に関するものを会社が支払った場合は事故を起こした従業員や役員への貸付金となるため注意が必要です。また、よくある間違いとして駐車禁止やスピード違反などの反則金については業務の一環であっても過失があると判断されるため会社の経費にはなりません。

まとめ

示談交渉着手金の勘定科目や仕訳を理解するには、まず示談交渉の流れを押さえる必要があります。その上で弁護士への着手金の科目や損金参入時期を決定するとともに、継続してその勘定科目を使用することが必要となります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び
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