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意外と奥が深い、売掛金の仕訳の注意ポイント

公認会計士 大国光大
意外と奥が深い、売掛金の仕訳の注意ポイント

経理では色々な勘定科目が出てきますが、その中でもかなりの頻度で出てくるのが売掛金です。売掛金と一口に言っても実は様々な仕訳が関係してきます。
今回は、意外と奥が深い売掛金の仕訳について現役公認会計士が解説します。

そもそも売掛金とは何かよくわからないという方は下記のコラムで詳しく解説しています。
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売掛金と前受金の関係

売掛金と対応する勘定科目として前受金が存在します。売掛金は「ツケ」であるのに対して、前受金は商品を販売する前に金銭をもらうこととなります
前受金をもらうというのは、大型の受注であった場合に会社が資金繰りの関係で得意先に依頼したり、車のディーラーのように相手から確実に入金があるかわからない時にあらかじめ入金を依頼するなどをして発生します。

では同じ相手先で売掛金と前受金が発生してしまった場合、期末の貸借対照表はどのようになるでしょうか。相手からの入金が売掛金と以前入金された前受金と相殺して支払われてくるような場合は、ネット金額を売掛金とすることが多いです。一方で前受金は前受金、売掛金は売掛金として金銭のやり取りをして相殺を行わない場合は両建てにする必要があります。

これは、そもそも債権を相殺できるかどうかでの判断となりますので、他の勘定である未収入金と未払金でも同様のことが言えます。

期日現金やファクタリングの処理

売掛金に関連して、期日現金というものが存在します。
通常、売掛金は締め日後1か月や2か月程度で振込が行われます。しかし建設業等では資金繰りの関係から手形を発行して、そこから半年後の入金などが多々あります。

しかし、手形は発行にも費用がかかりますし、領収証発行の際に収入印紙を貼る必要がある場合など何かと面倒と言われます。そこで、「あなたには120日後に振り込みますよ」とあらかじめ約束をして売掛金を現金預金で支払うことがあります。期日を決めて現金を振り込むという意味から、期日現金と呼ばれ、売掛金のまま貸借対照表に計上されることとなります

期日現金が横行すると、販売側の会社としては資金繰りに影響が出るため、「ファクタリング」というものを利用することがあります。ファクタリングとは、売掛金(期日現金)をファクタリング会社に売却して実際の入金日よりも前に資金化することを言います。ファクタリングをすると手数料(金利)としていくらか差し引かれて売掛金が入金されることになります。この時の仕訳は以下の通りです。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額
現金預金 99,500 売掛金 100,000
売上債権売却損 500

売上債権売却損に関しては債権売却損や雑損失等明確な科目は存在しませんが、統一してわかるようにしておきましょう。なお、売上債権売却損は金利としての意味合いが強いので消費税は非課税となりますので注意が必要です。

売掛金に貸倒引当金を設定する際の注意点

売掛金に欠かせない決算作業としては、貸倒引当金の設定があります。中小企業であれば、期末に存在する売掛金、受取手形、未収入金などの金銭債権に対して業種ごとの法定繰入率を乗じて貸倒引当金を計上します。大企業や中小企業でも有利な場合は過去の貸倒実績率を用いて期末債権残高に対して貸倒引当金を計上することとなります。

しかし、破産申請をした相手の売掛金や清算が完了した売掛金の場合は破産更生債権等に振り替えるとともに、貸倒引当金を債権額の半分もしくは100%に対して貸倒引当金を計上することができます。

また、先ほど前受金と売掛金の関係をお伝えしましたが、どの会計処理を行っているとしても同一相手の売掛金と前受金は差し引いたうえでの貸倒引当金の設定となります。というのも、貸倒引当金は今後どれだけ債権が貸し倒れるかを予想して計上するものなので、前受金をあらかじめもらっている相手が倒産しても貸倒はその分減少するとみられるためです。

売掛金は年齢管理がポイント

売掛金の管理で最も大事なことは、年齢管理です。売掛金の年齢管理というのは、入金予定日より何か月経過したかを管理するものとなります。
滞留している債権があれば督促をすることは当然ですが、その対応が遅くなると大きな事故につながります。

まず、滞留しているということは先方が請求書を受け取っていない、納品が行われていない等の単純な理由から、納品はされていたとしても製品に満足していない等様々な理由が考えられます。これを放置しておくと今回の入金がないだけでなく、今後の取引を中止することも考えられます。

また、1か月だけ入金がなかったから良いと思っていたらその翌月倒産してしまうこともあります。よって、売掛金が未入金であった場合は期日の次の日に得意先又は担当営業に確認を取る作業が必須と言えます。

まとめ

売掛金そのものの勘定科目や仕訳は複雑ではないと思いますが、ファクタリングや貸倒引当金等になってくると奥が深いものとなります。
売掛金は仕訳のみならず、債権の流れや実務の仕組みを理解することが大事です。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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