税理士試験は簿記論と財務諸表論に加えて様々な法律科目が存在します。中でも国税徴収法については受験者も少なくどのような範囲や難易度であるかの等情報が少ないでしょう。そこで、今回は税理士試験における国税徴収法について現役公認会計士が解説します。
国税徴収法は、税理士試験における選択科目のうちの一つです。
税理士試験には、簿記論・財務諸表論・所得税法・法人税法・相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税の11科目があります。税理士になるためには、11科目のうち5科目の合格が必要です。
簿記論と財務諸表論の2科目が必須科目で、法人税法と所得税法が選択必須科目、残りの相続税法・消費税法・酒税法・国税徴収法・住民税・事業税・固定資産税の7科目が選択科目になります。
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国税徴収法は条文上以下のように説明されています。
他の科目はどのように計算するかがポイントとなっていましたが、国税徴収法は滞納や徴収方法等を定めた科目であり、異色な存在とも言えます。
他の科目では計算科目がいくつか出題されることに比べて、国税徴収法は理論一本であるところが特徴であると言えます。
国税徴収法の勉強時間は予備校やインターネットの情報によって様々ですが、
100時間から150時間くらいではないかと言われています。
法人税法が600時間程度と言われていることからも4分の1程度の勉強時間ということになります。
これは主に法律自体のボリュームによる差もありますが、計算問題がない分暗記中心の勉強となる傾向にあるためとも言われています。
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先ほどお話した通り、合格ラインに達する最低時間が150時間程度であるとすると、確実に合格するためには他の受験生よりも時間をかける必要があることに注意が必要です。
特に国税徴収法は、税理士試験の最後の科目に持ってくる受験生も多い為、他の科目に既に受かっている可能性が高く、思ったよりも難易度が高くなる可能性があるとも言えます。
過去の相続税法の合格率は以下の通りです。
2020年 | 12.2% |
2019年 | 12.7% |
2018年 | 10.7% |
2017年 | 11.6% |
2016年 | 11.6% |
2015年 | 14.2% |
2014年 | 13.1% |
ここ数年の合格率の推移からすると、10%~15%程度であると言えます。
また、2020年における税理士試験の科目別合格率では、相続税法10.6%、所得税法12.0%についで下から3番目の合格率となっています。
税理士試験は満点の60%以上の得点で合格とされていますが、出題内容が簡単な年ではよりボーダーラインが高いと考えられること及び合格者は実質受験者の10%~15%であると考えると決して広き門ではありません。
よって、勉強時間数が少ないという理由のみで国税徴収法を選択してしまうと思ったよりも難易度が高くてなかなか受からなかったということになるため注意が必要です。
国税徴収法は先にお話した通り完全に理論科目であるため計算が苦手な受験生でも選択しやすい科目であると言えます。
出題内容についても過去に出題されたものの類題が出ることも多く、応用力を試されるというよりも地道な暗記ができているかどうかがポイントとなります。
よって、法の趣旨をくみ取って反復継続して暗記作業をすることについて苦にはならない人が国税徴収法の試験に向いていると言えるでしょう。
また、国税徴収法の大原則として民法の考え方が必要となってきます。全く民法を勉強したことがない場合はそこからとなりますし、ある程度大学の授業などで民法を学習したことがある人は勉強しやすい受験科目と言えるでしょう。
では国税徴収法の勉強方法はどのようにすると良いでしょうか。実際に国税徴収法で受験して合格した人達に話を聞くと実はそれぞれが全く違った勉強方法をしていました。
繁忙期に入る前12月までにある程度勉強をしておいてその貯金で直前に何回転もするという人もいれば、本試験から逆算して一気に詰め込むという人もいれば、平均してコンスタントに勉強するという人もいます。
ただ、共通していることは
「何回転勉強できたかが勝負」
「自身の勉強方法を確立してそれを繰り返し行えることが一番」
ということでした。
国税徴収法は暗記することが必要な科目であるため、どのように記憶を定着させるかがポイントということになります。
記憶の定着は一つの単元をじっくりとすることよりも毎日のように反復して複数の単元をした方が良いと一般的に言われています。
しかし全く理解してもいないのに最初から反復しても意味がなく、1回転目は図などを自分なりに使って理解することを重視し、2回転目以降は理解不足のところはじっくりと、理解している部分については反復するというやり方で暗記していくことが重要であると考えられます。
国税徴収法は勉強時間が短いというメリットがありますが、それはどの受験生にも言えることであり、また最終科目に取っておく受験生も多いことから決して難易度が低い科目ではないことを念頭に置く必要があります。
ただし、計算が苦手であっても暗記が得意な人や、民法の素養があるという人は積極的に受験しても良いのではないでしょうか。