PERは、株価の割安感を示している指標のひとつです。そのため、株の銘柄を選ぶ際に参考にしている人も多いのではないでしょうか。ところがPERが表示されていないという場合があります。これは赤字企業であることを意味しています。今回は、赤字企業とPERの関係について解説していきます。
PERは「株価収益数」と呼ばれており、株価の割安感を判断するために使われている指標の1つです。計算式としては「PER=株価÷1株利益」となります。PERの単位は「倍」であり、PER15倍、またはPER60倍といったように表現されます。また、PERは、株に投資をした元をとるために必要とされる年数の目安としても使用されるのです。たとえばPERが10倍であれば10年で元がとれる、といったように判断します。
PERの計算に使われるものとしては「株価」「発行株数」「純利益」があり、このうち「株価」と「発行株数」については、なにがあったとしてもマイナスになることはありません。しかし、「純利益」は、赤字企業であれば、もちろんマイナスとして表示されます。そして、純利益がマイナスであれば、計算の結果、求められたPERの値もマイナスになるのです。
PERは株価の割安感を判断するための指標のひとつです。PERが大きければ割高であると判断され、PERが小さければ割安と判断されます。ただ、どのくらいの数字が割高であって、どのくらいの数字が割安なのかということは一概には言えません。あくまでもひとつの目安として、同業他社のPERと比較をしたり、同社の過去のPERと比較をします。
PERが小さいほど割安ということは、PERがマイナスであれば、とても割安だと捉えていいのでしょうか。答えは、そうではありません。先ほどもお伝えしたように、PERには「元をとるために必要な年数」という意味があります。けれど、年数にマイナスはありません。では、PERがマイナスであるとは、どういったことを意味しているのかというと、その答えとしては「意味がない」となります。赤字会社のPERは、計算をしても何の意味もないのです。
PERは、あくまでも株価の割安感を判断するための指標のひとつであるとお伝えしました。ということは、他にも株価の割安感や赤字会社を判断する指標があるのです。
PER以外にも株価の割安感を判断できる指標があります。それが、PBRです。PERは利益より株の割安感を判断するものですが、PERは資産の面より株の割安感を判断します。PBRの計算式は「PBR=株価÷1株あたり純資産」で割り出すことが可能です。PBRは1に近いほど割安であり、1に近づけば底値に近づいているとされています。PBRを用いれば、会社の利益とは別に株価が割高か割安かを判断することができるのです。
赤字だからと言って、その会社が良くない会社なのかといえば、そういうわけではありません。例えば、東日本大震災のような大きな災害により、ある期間のみ操業することができなかったり、出費が続いたりして赤字になっているものの、その後は回復すると予想される会社もあります。また、実力があるからV字回復すると予想できる場合もあります。そのため、赤字会社については、一時的なものであるのかどうか、不可抗力で赤字会社になっているだけはないかどうかを分析する必要があるでしょう。
そして、本来の収益力を見積もって判断するという方法もあります。赤字決算を出したものの、その後の業績の回復が見込まれるような場合、どの程度まで回復するのかを考えてPERを計算し直すのです。この方法は、収益を見積もらなければならないため、難しいもので、初心者には向いていないかもしれません。ただ、上場している会社は業績の予想も公表しているので、決算が赤字であったとしても、次の期の予想において回復の兆しがみられるのであれば、予想PERで株価の割安感を見極めることも可能です。
赤字会社の株価は、多くの場合下がります。けれど、将来の利益回復が見込めると判断できるのであれば、株価が安いうちに購入しておくという方法もあります。PERがマイナスであれば割安だというのではなく、赤字でPERが安くなっている場合です。また、数年後に回復が見込める赤字会社の株も同様に、株価が安いうちに購入しておく方法もあります。ただ、この数年の間に、会社にとって悪い材料が公表され、最悪の場合、破産というケースも考えられることも理解しておきましょう。
ここまでお話してきたPERですが、1つ問題点があります。それは、PERは株式を利用した指標であるということです。つまり、市場の評価が正しいということを前提に割り出された値であるため、市場の評価が間違ってしまっている場合には、PERそのものは、ほぼ役立ちません。また、PERは当期純利益を利用している指標なので、特別利益や特別損失も計上しています。そのため、当期にのみ関して、当期純利益が大きくなっている、小さくなっているというような場合は、大きくPERが変動をする可能性があり、正しい値を示すことができていない場合があるので、注意が必要です。
赤字企業のPERはマイナスになっており、詳しく求める意味がありません。ただ、赤字会社だから今後期待がもてないかと言えば、決してそんなことはないのです。赤字会社であっても、一時的なものが原因で、次の期には黒字に転じる可能性もあります。赤字会社を判断する時はPERやその他の指標も参考にして多方向から判断するようにしましょう。