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繰越欠損金の繰越期間は法改正により延長へ!実際は何年間に?

HUPRO 編集部
繰越欠損金の繰越期間は法改正により延長へ!実際は何年間に?

平成28年度税制改正により、繰越欠損金の期間に関する制度が見直されました。これにより、繰越欠損金の期間が延長になりました。この繰越欠損金の制度が適用されれば、節税面でメリットが得られます。今回は、繰越欠損金とは何か、どのような企業が対象になるのか、期間はどのくらい延長されたのかなどについて解説していきます。

繰越欠損金とは?その期間とは?

まずは、「欠損金」とは何なのかということからお話していきましょう。欠損金とは、益金を超えてしまった超過分の損金のことを指します。簡単に言えば財政会計上における赤字額のことです。そして、翌事業年度以降に繰り越される欠損金のことは、繰越欠損金と呼ばれます。たとえ欠損金が発生しても、この繰越欠損金が適用されれば、その欠損金を翌事業年度へ繰り越すことができます。

つまり、欠損金が発生した年度があっても、黒字となった事業年度の所得金額に繰越欠損金を損金算入することで、所得金額より控除することが可能になるのです。もっと分かりやすく言えば、赤字がでても、将来の黒字によって相殺することができるという制度です。
ただし、この繰越欠損金には期間が設定されており、いつまでも繰り越し続けることはできません。期間については以下の通りです。

・平成13年4月1日から事業開始【 5年 】
・平成13年4月1日以後に事業開始、平成20年4月1日より前に事業終了【 7年 】
・平成20年4月1日以後に事業開始、平成30年4月1日より前に事業終了【 9年 】
・平成30年4月1日以降に事業開始【 10年 】

ちなみに過去、2つ以上の年度において繰越欠損金があるような場合は、1番古い年度の繰越欠損金より損金として算入されることになります。よって、過去において大きな損失を1度計上したことがある場合は、その繰越欠損金を期間内にすべて繰り越す事ができない可能性もあるため、気を付ける必要があります。

繰越欠損金の延長された期間が適用されるための要件は?

繰越欠損金はどの企業でも認められるものではありません。適用されるためには、次の4つの要件を満たしておく必要があります。
(1) 繰越欠損金が生じた年度の確定申告で青色申請書を提出していること
(2) その後も続けて確定申告書の提出をしていること
(3) 欠損金が生じた年度の帳簿書類などをきちんと保管していること
(4) 9年以内に開始された事業年度の欠損金であること
  (平成30年4月1日以降に開始された事業より、繰越欠損金の期間は10年)

繰越欠損金の期間が延長となるための特例対象はどのような企業?

通常であれば、繰越欠損金には期間が定められているうえに限度額も定められていますが、以下の対象企業については、制限はなく、所得金額の100%に相当する額まで繰越欠損金を算入することができます。
(1) 普通法人のなかでも、資本金または出資金の額が1億円以下であること
  (100%子法人等は除く)
(2) 協同組合などであること
(3) 公益法人などであること
(4) 人格のない社団法人などであること

つまり、中小企業は控除限度を設ける対象から外されています。ただ、以下のような大企業であれば、一定期間は中小企業のように所得金額全額までの損金算入をすることができます。

(1) 設立をした日から7年間の期間中である新設法人であること
(2) 更生手続開始を決定した日から更生計画認可の決定の日以降、7年間の期間中であること
(3) 再生手続きを開始した日から再生計画認可の決定の日以降、7年間の期間中であること
(4) 再生計計画認可をはじめとする法人税法第59上第2項に規定された一定の事実が生じた日より7年間の期間中であること
(5) これまでの4つの事実が生じた日より7年間の期間中であること

このように、新設されたばかりであること、または再建中であることに当てはまる企業については、財務基盤への影響などが考慮され、中小企業のように所得金額の全額までの損金算入が可能となります。

繰越欠損金の期間延長が適用された場合に得られるメリットとは?

では、この繰越欠損金の控除を受けることや、期間が延長されるメリットとしては何があるのでしょうか。まず、繰越欠損金の適用を受けることができれば、欠損金を翌年以降に繰り越して黒字の事業年度の課税所得が軽減され、法人税などの節税効果が得られます。

具体的に解説しましょう。ある企業の2016年度の決算が100万円の赤字、2017年度の決算が200万円の黒字だったとします。この場合、2016年度は赤字なので、課税所得は0円となり、赤字分の100万円については繰越欠損金が適用され、2017年度に繰り越されます。そして2017年度の200万円の黒字は2016年度の決算金繰越分の100万円が控除されて、課税所得が100万円となります。

もし、この繰越欠損金の控除がなければ、2017年度分の法人税はどうなるのでしょう。実効税率を20%と考えて、実際に計算し比較してみます。2016年度分の控除がない場合、2017年の課税所得は200万円です。よって、納税額は200万円×20%=40万円となります。一方、繰越欠損金の控除が適用された場合は、課税所得は100万円で、納税額は100万円×20%=20万円となるため、両者には20万円もの差が生まれることになります。このようなメリットがより長い期間受けられることは、企業にとって大きなプラスとなるといえるでしょう。

まとめ

繰越欠損金を翌年以降に繰り越すことができれば、現在の赤字を将来の黒字によって相殺することができ、そのぶん企業の財政状況が安定します。対象となる企業や限度額に制限があるケースもみられますが、この繰越欠損金の期間をうまく利用すれば、節税面での大きなメリットが得られます。積極的に活用していくようにしましょう。

この記事を書いたライター

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