毎年確定申告の時期がやってくると、憂鬱な気分になる人は多いでしょう。何度やってもよくわからない、かといって放置するわけにもいきません。しかし、大まかな流れを抑えること、時間に余裕を持って行うことの2点を心がければ確定申告を恐れる必要はありません。今回は確定申告の概要から申告方法までを解説します。
確定申告とは、個人の所得の計算期間である1月1日から12月31日までに生じた全ての所得と、それに課税される所得税を自分で計算の上申告して納税する手続きのことです。例年2月半ばごろから1ヶ月ほどの期間中に確定申告書や決算書などの書類を提出して行います。
確定申告が必要になる人は次のような場合です。
タレントなどが広報となって実際に確定申告をしている場面をテレビのニュースなどで見ることがあります。そうすると、確定申告はもっぱら個人事業主がやるものであって、会社員などの給与所得者には無関係と思われがちです。しかし、年間の給与収入が2,000万円を超える場合や2か所以上の会社から給与を得ている場合には確定申告が必要になります。給与所得者であっても確定申告が必要になるのは次の場合です。
本来所得税の申告と納税は確定申告によって行うものです。しかし給与等を1か所から受け取っている場合には確定申告を行わなくてもよいのが原則です。多くの会社員はこれに該当します。これは、会社が代わりに年末調整を行っているため、納税の精算が済んでいるからです。
個人事業主が確定申告をする際には、「青色申告」と「白色申告」がありますが、何が違うのでしょうか。
青色申告とは、所得税を安く抑えることができるさまざまな優遇措置のついた申告方法です。主な優遇措置は、65万円または10万円の特別控除、専従者給与の必要費算入、純損失の繰越しが認められていることです。
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このように優遇措置の認められる青色申告ですが、一方で年間の取引を複式簿記で記録した帳簿を作成しなければならず事務処理が面倒になります。また、「青色申告承認申請書」を一定の期間内に納税地の所轄税務署長に提出し承認を得なければなりません。
白色申告は、収入欄の合計から支出欄の合計を引いた残高を記載する単式簿記といわれる帳簿で行うことが認められています。貸借対照表の提出も不要で簿記の知識も不要なため、青色申告と比べると手軽に行なうことができます。ただし白色申告には、特別控除など青色申告にあるような優遇特典はありません。
青色申告と白色申告には一長一短があります。以前は、白色申告は帳簿作成義務がなく青色申告と比べて負担が非常に軽く済みました。しかし、2014年から白色申告であっても記帳と帳簿保存が義務化されました。単式簿記とはいえ帳簿を作成しなければならないことを考えると青色申告にしたほうがいいという意見が増えています。
では確定申告はどのように行えばいいのでしょうか。
令和元年度の確定申告の期間は「2020年2月17日から3月16日」です。
令和2年度の確定申告の期間は「2020年2月16日(火)から3月15日(月)」です。(追記)
確定申告書には会社員やアルバイト・パートの人など、給与所得、雑所得、配当所得、一時所得だけの人が使う「確定申告書A」、所得の種類に関わらず誰でも利用できる「確定申告書B」があります。自分がどちらに当てはまるかわからない場合は、「確定申告書B」を使います。それ以外に白色申告する場合には「収支内訳書」が、青色申告をする場合には「青色申告決算書」必要になります。
これらの書類は、税務署や市区町村役場の税務課、確定申告相談会場で受け取ることができるほか、国税庁のホームページからダウンロードすることもできます。さらに給与所得者や年金受給者の場合は「源泉徴収票」が必要になりますが、それぞれのケースで必要になる書類は異なるので注意が必要です。
自分に必要な書類がわからない場合には、税務署に問合せをして確認しましょう。
確定申告書は、申告期間内に地域を管轄する税務署に提出しなければなりません。
提出方法には以下のものがあります。
まず、郵送の場合には消印の日付に注意が必要です。消印の日付が提出日とみなされ、投函する時間帯によっては翌日の消印になる可能性があります。税務署に直接提出する他確定申告会場に持参することも可能です。
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また、インターネットで確定申告書を提出する「e-Tax」という申告方法もあります。
e-Taxはオンライン上で完結するのでとても便利です。手続には、マイナンバー方式とID・パスワード方式の2種類があります。マイナンバー方式でe-Taxをするなら、納税地を所轄する税務署に「電子申告・納税等開始届出書」の提出は不要です。原則として税務署に行く必要がりません。マイナンバーを取得していない場合は、税務署で面談による本人確認を行った上「電子申告・納税等開始届出書」を提出しなければなりません。
2019年より確定申告書の作成がスマホでできるようになりました。しかし、こちらは医療費控除やふるさと納税の還付などのケースしか対応しておらず原限定的です。今後対象範囲が順次拡大していくことが期待されますが、まだまだ過渡期といえるでしょう。
確定申告が必要であるにもかかわらず、それを行わない場合の罰則規定が設けられています。税務署から指摘を受けた場合、期限後申告を行います。そして納税額のうち50万円までは15パーセント、50万円を超える部分は20パーセントの無申告加算税が課せられます。
また、延滞税も課されます。
この2つはどちらかではなく、両方が課されます。また、医療控除なども受けられません。
会社員などに適用されている源泉徴収は、概算の所得金額に基づくもので必要経費や医療費控除などの所得控除などが考慮されていません。そのため、確定申告によって過払い分の税金を払い戻してもらうことができます。
確定申告は、作業が煩雑で面倒であることは確かです。年末から憂鬱になる人も少なくありません。しかし、確定申告を行うことで事業の収支を把握することができます。それは、経費の見直しや事業の効率化を考えるいい機会になります。確定申告は自分の事業の1年の反省会ととらえれば、苦痛も軽くなるでしょう。