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企業合併のメリットと事例

公認会計士 大国光大
企業合併のメリットと事例

企業の規模を大きくしようとした場合、地道に売上を上げる方法以外に、他の企業と合併する方法があります。現に、大企業同士の合併が報道されることも多くなっています。
そこで、今回は企業合併のメリットと事例について現役公認会計士が解説します。

企業合併とは

企業合併というのは、2つ以上の企業が一つの企業となることを言います。一方の企業に一方の企業が吸収される合併を吸収合併と言い、合併企業が新しい会社に吸収されることを新設合併と言います。
吸収合併は存続企業のほうが大きい場合に行われる合併で、新設合併はどちらかというと対等の合併をする際に行われます。
企業合併は法人格そのものが一緒となるため、連結子会社にすることよりも企業同士の結合が強くなる傾向にあります。

企業合併のメリット

企業合併とよく比較されるのが事業譲渡となります。企業合併は2つ以上の企業が法律的に一つになるため、今まで存続していた会社の権利義務一切を一方の会社に引き継ぐことになります。
一方で事業譲渡では企業の権利義務の一部又は全部を指定して、他の企業に引き継ぐこととなります。事業譲渡では個々の財産と負債を指定して引き継ぐのに対して企業合併では当然のように全ての財産と負債を引き継ぐことになります。よって、事業譲渡では簿外負債があったとしても引継ぎが行われていなければ既存の会社に残るのに対し、企業合併では簿外負債の存在を後から気づいたとしても支払う義務が生じるため、合併の方が法務デューデリや財務デューデリを入念に行う必要があります。

企業合併の事例

①ユニー・ファミリーマートホールディングス

2019年9月1日付でユニー・ファミリーマートホールディングス株式会社と100%子会社の株式会社ファミリーマートが合併しています。
この事例では、ホールディングス会社と事業会社の合併ということで、管理機能の重複を防いだ合併であると言えます。通常ホールディングスカンパニーでは連結決算や全体の管理を行うことに注力していますが、結局のところ最も大きな会社の管理に人的資源を咲かれることが多く、管理部門が重複してしまって非効率であった可能性があります。
本事例では100%子会社との合併ということで取締役会決議において決定でき、全くの他社との合併とは迅速性の観点で異なると言えます。

②第三銀行と三重銀行の合併

2021年5月に第三銀行と三重銀行が合併することが決まりました。大型の銀行同士の合併ということで規制当局の許可に時間がかかったり、システムの統合等も関係していたりする為、既に2年後の合併が公表されていることとなります。
銀行同士の合併のメリットは、重複している店舗を統廃合したり、複数置かれているATMを撤去したりして管理コストを減らすことにあります。また、単純に規模が大きくなるため万が一貸倒が起きた時でもその損失を吸収できる体力をつけることができます。
最近は低金利の時代であり銀行も収益源が減ってきていると言えます。また、インターネットバンキングの普及により窓口で手続をする人も減ってきている為、単純に人員が過剰になってきているのが現状です。よって、窓口を複数持つことのメリットも減ってきており、店舗の統廃合や人員を減らすインセンティブが働いてきていると言えます。
今回はこの2行の合併でしたが、今後ますます大型の銀行同士の合併が進んでいくことが考えられるでしょう。

③アイシン精機とアイシン・エイ・ダブリュの合併

2019年10月31日の発表によると、2020年4月1日をめどにアイシン精機とアイシン・エイ・ダブリュが合併することとなりました。
アイシン精機はトヨタ系のメーカーとしてグループ売上高3兆円を超える巨大企業です。一方でアイシン・エイ・ダブリュはその子会社といいつつもオートマチックトランスミッションの世界シェアの大半を占める大型企業です。
本来アイシン・エイ・ダブリュ単体でも十分トップクラスの上場企業になり得るほどでしたが、アイシン精機の子会社ということもありその規模にもかかわらず影をひそめる存在でした。
今回の合併では自動車メーカーが電気自動車にシフトが進んでいることに起因する企業再編の一環とも言えます。アイシン・エイ・ダブリュにとってはこれまでかなり幅広い地域での取引を行っていたにも関わらず、最後は親会社であるアイシン精機の顔色を窺わねばならないこともありましたが、今後はより自由に事業展開ができることになると考えられます。
よって、通常親子間の合併というのは合併後も親子の立場が事業部単位で続くことも多いのですが、今回の報道からするに、対等合併ということで事業部間においても対等の関係が構築されることが考えられます。
ただし、大企業同士の合併というのはその事業部間のセクショナリズムが起きやすいことから、今後組織間の人材交流、技術の交流をどのように進めていくかが重要なポイントとなると言えるでしょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び
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