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連結子会社の経理の業務とは?公認会計士が解説します!

公認会計士 大国光大
連結子会社の経理に求められるもの

今まで非上場の会社でのんびりしていたら、突如「明日から上場会社の子会社となります」と言われたら、経理はどのように変わるのでしょうか。

そこで、今回は連結子会社の経理に求められるものについて、現役公認会計士が詳しく解説します。

連結子会社になると上場会社並みの経理が必要に

今まで非上場の会社であったのに、企業買収等により、上場会社の連結子会社となったら何が変わるでしょうか。

もっとも大きな点としては、上場会社と同じような経理が必要となることが挙げられます。親会社は今まで通り上場会社の経理をしているのですが、連結子会社となるとその親会社の連結財務諸表の一部としての決算が求められます

連結グループ内では基本的に会計処理を統一しなければならないため、連結子会社においても上場会社レベルの経理が求められるのです。

変更しなければならない点はたくさんありますが、大きく変わるのは税務会計から企業会計への変更でしょう。通常非上場の会社は税務署に提出するように決算書を作成している為、税法に準拠した決算書を作っていることがほとんどです。

よって、費用にすべきかどうかは損金に算入できるかどうかで判断しますし、売上についても税法に抵触しない程度に最も簡便な方法もしくは税務上有利な方法を選択します。

連結子会社でよく変更される会計処理

では税務会計と企業会計の違いは具体的にどのようなものがあるでしょうか。
具体的には、金融商品会計、減損会計、資産除去債務、各種引当金、税効果会計についての変更があることが多いです。

金融商品会計では、貸借対照表に計上される資産負債が時価評価されます。上場会社の株式を持っている場合は決算ごとに株価を調べて貸借対照表価額を時価に引き直す作業が必要となります。

また、減損会計といって、有給固定資産や時価が大きく下落した固定資産、キャッシュフローをあまり生み出さない資産については減損処理を行わなければなりません。

さらに、土地を賃貸していてその上に建物を建てている場合などは退去時に固定資産を除却する費用について予め引当金処理をすることが必要となってきます。

これ以外にも、税務会計と企業会計のギャップを埋めるために繰延税金資産を計上する税効果会計や、従業員の退職金をあらかじめ見積もって計上する退職給付会計などが必要となります。

連結子会社となると決算の回数も増える

上場会社であれば、年度末の決算以外にも3か月ごとの四半期決算を行う必要があります。この四半期決算や年度決算の発表には期限があり、決算日後45日以内に連結ベースでの報告が必要となります。

連結ベースでの報告となるため、子会社の決算がその日までにできていることは当然のこと、そこから連結会計をするとなると決算日から20日後くらいでは決算ができている必要があります。
このように連結子会社では決算の早期化が求められることになります。

連結子会社となると決算の回数も増える

連結子会社では連結パッケージの報告が必要に

先ほどお話した通り連結子会社は連結財務諸表の一部を構成するため、親会社に連結パッケージを報告する義務があります

この連結パッケージでは通常の子会社の財務諸表に加えて、親会社や兄弟会社などの関係会社との取引を集計したものや、キャッシュフロー計算書を作るために固定資産をどれだけ取得したかなどを報告する必要があります。

連結パッケージは、連結会計ソフトを使っている場合はソフトに直接入力することもありますし、エクセルなど簡易なものを利用している場合は親会社から配られたエクセルに入力して提出する必要があります。

J-SOX対応が必要なことも

J-SOXというのは日本版内部統制評価制度を言います。

J-SOXでは、企業が自ら不正を侵さないように内部統制を構築、運用し、それが適切に行われているかどうかを自らが証明する制度となります。この評価自体は親会社もしくは子会社の内部監査人が行うことが多いです。

J-SOXについてはこちらの記事を参考にしてください。

グループ全体の規模からして売上高1%程度の僅少な会社であれば対象外となることが多いですが、5%やそれ以上の売上高を占める場合はJ-SOXの対応をしなければならないことが多くなります。

J-SOX対応として、取締役会が適切に運用されているかどうか、会社の規程が整備され適切に運用されているかどうか、コンプライアンスは適切に遵守されているかどうかなどをチェックされます。

経理としても適切に経理規定がありチェックポイントは適切に守られているかどうかを見られることとなります。

まとめ

比較的規模の大きい会社であれば、毎年もしくは四半期ごとに監査法人の監査を受けることになるでしょう。それほど大きくない会社であってもローテーションにより外部監査を受けることが多いです。

その際、監査法人から必要な資料を求められるため、その対応が必要となってきますし、何か間違いが見つかった場合は決算終了に間に合うように修正を求められることもあります。

ただし、重要な間違いでなければ訂正は求められませんし、判断に迷うような会計処理は親会社を通じて監査法人に事前に了解を得ておくことが大切となります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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