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海外進出する際の経理業務について

公認会計士 大国光大
海外進出する際の経理業務について

企業のグローバル化が進んできており、今までは大企業にしか考えられなかった海外進出が、中小企業にも広がってきています。よって、今まではあまり海外進出について深く考えていなくとも、急に会社の方針で海外進出に伴う経理業務を行わなければならなくなる可能性も出てきます。そこで、今回は海外進出する際の経理業務で気を付けるべき点について現役公認会計士が解説します。

企業が海外進出する理由

国内企業が海外進出する理由として、マーケットが広がって海外への売上が増えると、日本から海外へ輸出するよりも現地で生産したほうが効率的かつコスト面で有利となる可能性が高いことが挙げられます。
また、円高となってくると輸出競争に負けることや利益を圧迫する可能性があるため、なおさら海外進出の動きが強くなります。

日本の資産を海外に移転する場合の注意

海外進出には様々な方法がありますが、今回は日本に工場があったものの、現地での生産に切り替える場合の経理業務の注意点をお話しします。

元々日本に工場があった場合、海外に生産を移管することによってその工場を閉鎖することが考えられます。工場の閉鎖が取締役会で決定されると、減損会計基準では工場の売却価額まで減損を計上することが求められます。

特に建物は価値がゼロとなりやすいため、帳簿価額がそれなりに残っている場合は多額の損失が発生するので、注意が必要です。

また、工場の人員を解雇する場合は解雇するための費用、つまりリストラ損失を見越す必要があります。この場合、先ほどの工場の除却費用と併せて工場閉鎖損失引当金として計上するか、別々に計上してリストラの引当金を計上するかを考える必要があります。

ただし、引っ越し費用に関しては実際に引っ越しを行った際に計上すべきという研究報告も出ているので、それぞれの損失を計上するタイミングは慎重に判断する必要があります。

海外進出する際の法人の形態

海外進出する際に考えられるのは、現地で法人を設立する場合と直接投資をして現地の支社を作る場合の二通りが考えられます。

現地で法人を設立するメリットは、現地での工場を建設しやすくなることや、従業員の確保をしやすくなることが挙げられます。また、会計組織についても現地で完結するため、会計処理としても適時にできることもメリットとなります。

一方で法人格はそのままに海外拠点を作る場合は、機動性がある場合があります。というのも、現地法人を設立するには株主の要件や申請までの時間などの問題が出てきますが、日本法人が海外拠点を作る場合、規模が小さければ早く開業できるのと、撤退もしやすいと考えられるからです。

ただし一般的には、ある程度の規模をもって行動しようと考えている場合は現地法人を作った方が制約の少ない分有利であると言えるでしょう。

現地法人設立の際の注意点

海外進出をする際、現地法人を設立すると、工場建設などの場合はそれなりの資金が必要となります。よって、多額の資金を出資して法人を設立することになり、この株式の評価がポイントとなります。

例えば工場であれば量産体制になるまでにかなりの時間を要します。そこまでは設備投資の減価償却負担があるだけでなく、売上がなかなか計上できないため損失を垂れ流す可能性が高くなります。

ここで問題となるのが子会社株式の評価です。子会社株式の取得原価と子会社の純資産との比率が50%以上になると子会社株式を減損処理しなければならなくなります。ただでさえ工場の損失が計上されている中で、親会社の保有する子会社株式を減損処理しなければならないのは負担が大きくなります。

ただし、当初から赤字計画を作っていて、黒字となるまで長期化することが明らかとなっており、その計画に概ね沿って損失が計上されている場合は減損処理が不要となることがあります。よって、現地法人を作る場合はその損益計画をシビアに作って着実に黒字になる計画を用意しておく必要があります。

現地法人の経理はどうすればよい?

現地法人は連結子会社としなければならないため、現地の経理要員は「どのような人を入れるか」が問題となります。

まず考えられるのが現地採用です。現地採用ということはそれなりにその国の言語を話せることが前提ですので、他部署とのコミュニケーションを図りやすいと言えるでしょう。海外ではその国の言語を話せない人を少々疎んじる場面もありますので、現地採用ではそのデメリットを払しょくできます。

ただし、日本の法人のことや連結パッケージを理解していない人が経理についてしまう可能性があるので、ある程度日本法人でのトレーニングも必要と言えるでしょう。

これ以外に、親会社から経理を派遣する方法があります。親会社の経理や連結パッケージも理解しているため経理がスムーズに進行すると言えるでしょう。しかし、親会社の経理が一人減ってしまうデメリットや言語があまり得意でない人員を派遣してしまうデメリットも考えて総合的に判断する必要があります。

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この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
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