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時価ヘッジとは?デリバティブの処理方法を解説

公認会計士 大国光大
時価ヘッジとは?デリバティブの処理方法を解説

企業の資金調達や投資方法は多種多様となってきて、デリバティブ取引を行う企業も多くなっていると言えます。デリバティブ取引が発生すると、会計処理として時価ヘッジという言葉が出てくることがあります。
時価ヘッジは頻繁に出てくることがない為苦手意識を持つ方もいらっしゃると思います。そこで今回は、時価ヘッジについて現役公認会計士が解説します。

ヘッジ会計とは?

時価ヘッジについて解説する前に、ヘッジ会計について解説します。
ヘッジ会計とは、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益計上のタイミングをあわせ、ヘッジの効果を会計処理として反映させることを言います。

わかりやすい例を挙げると、企業が変動金利で借り入れを行うとします。しかし今後金利が上昇すると判断すると、変動金利では損をする可能性があると考えられます。

そこで、銀行には別契約として変動金利を受け取り、固定金利を支払うこととなります。そうすることによって、あたかも借入金を固定金利で借りているのと同様の効果を得られるようになります。

ただし、会計上は支払利息が変動分と固定分の二重計上となり、受取利息が変動金利分計上されます。
本来の支払利息は固定金利と同様の結果をもたらすため、これらの効果を表すためにヘッジ会計というものが採用される場合があります。

時価ヘッジとは?

それでは時価ヘッジについて解説していきます。時価ヘッジというのはヘッジ会計の手法のうち繰延ヘッジ以外の方法のことです。

時価ヘッジでは、ヘッジ対象である資産や負債に係る相場を損益に反映させることにより、ヘッジ手段に係る損益と同一の会計期間に認識するという方法を用います。例えば、有価証券を時価評価して、そのヘッジ手段についても時価評価をしたとします。時価ヘッジでは、両者を損益計算書上損益として認識することによって、結果効果が相殺されます。

また、有価証券の時価が上昇している場合は評価益が発生し、ヘッジ手段の評価が下落している場合は評価損が発生します。
貸借対照表上ではそれぞれが時価評価されて計上されることとなります。

繰延ヘッジとは?

時価ヘッジとは別に、繰延ヘッジという方法があります。本来、ヘッジ会計ではこの繰延ヘッジが原則的方法であるとされています。

繰延ヘッジでは、先ほどの例のような借入金の利息について、別途契約した側の損益を、借入の返済まで損益計上を繰り延べる方法を用います。これは、毎期損益を認識することでまだ実現していない損益を認識することとなり、企業の状況に対する判断を誤らせることになってしまうためです。

例えば、企業が相場の変動が激しい商品を保有していたとします。この相場の変動を損益計算書に反映させたくないため、全く逆の動きをする先物商品を買ったとします。すると、企業の持つ商品が値下がった時に先物は値上がりし、逆に商品が値上がりした際に先物は値下がりし、結果として損益は相殺されることとなります。

このように損益が相殺される効果を商品が消滅するまで繰り延べることによって企業の損益が毎期ぶれないようになります。

ヘッジ対象となるもの

ヘッジ対象、つまり相場の変動などのリスクにさらされている対象物にはどのようなものがあるでしょうか。

基本的に、既に貸借対照表に計上されているものが対象となります。例えば商品、借入金等が挙げられます。具体的には、相場変動による損失の可能性がある資産や負債のうち、相場の変動が評価に反映されない、つまり簿価で評価されるものを言います。

また、その他有価証券のように、相場が評価に反映されていても、当期の損益として処理されないものも対象となります。さらに、借入金の変動利息、固定利息のように、資産又は負債のキャッシュフローが変動するものが対象となります。

ヘッジ会計を適用するために必要な要件

ヘッジ会計を適用するためには、事前テスト事後テストとの両方を兼ね備える必要があります。

事前テストは、ヘッジ対象のリスクとヘッジ手段を明確化することから始まります。また、ヘッジの有効性の評価方法を社内規程のように正式に文書化する必要があります。さらに、ヘッジ手段が有効であるかどうかを事前に予測する必要があります。このように、事前テストではヘッジが有効であるだろうという計画と、手順を明確化するというステップが必要となります

また、*事後テストとして、ヘッジ取引をした後も継続して有効性が確認できるかどうかをチェックします*。この有効性の評価方法としては、ヘッジの開始時点からどれだけ時価やキャッシュフローの変動が起こっているかを確認し、変動幅が80%から125%の間に収まっているかどうかを確認します。

これらの作業については決算日には必ず行わなければなりませんが、少なくとも半期に一度は評価する必要があります。評価の結果、クリアできないとされた場合にはヘッジ会計を中止しなければなりません。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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