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連結配当規制とは?どんなメリットがある?

公認会計士 大国光大
連結配当規制とは?どんなメリットがある?

会社には分配可能額というものがあり、潤沢な剰余金がある場合は配当や自己株式の取得ができますが、親会社の剰余金はあるものの子会社の剰余金があまりなく、連結全体としては配当原資に乏しい場合があります。そんな時に利用できるのが連結配当規制というものがあります。そこで今回は、連結配当規制について現役公認会計士が解説します。

連結配当規制とは?

会社法では分配可能額というものがあり、会社の剰余金を超えて配当や自己株式を取得することができません。これに違反をすると配当をもらった株主は違法配当部分の返還義務があり、配当を提案した取締役等は責任を取らされることとなります。よって、単体決算では違法配当をしないように留意していることでしょう。

連結配当規制では、単体決算では十分な配当原資があったとしても子会社で剰余金がマイナスの場合は、そのマイナス分を配当原資から引くことができます。
ただし、連結配当規制は会社に強制されるものではなく、任意で採用できるものです。よって、連結配当規制の適用を受けようとする場合は、個別注記表にその旨を注記する必要があり、計算書類についても連結計算書類を作成する義務があります。

連結配当規制のメリットは?

連結配当規制を適用すると、親会社では配当可能額が減りますが、子会社においては柔軟な活動ができるようになります。

例えば、子会社間において親会社株式の取得制限がなくなることがメリットの一つです。親会社の株式を何らかの理由で保有している場合に剰余金があまりない会社では、その移動ができずに資産が寝てしまう可能性があります。しかし、連結配当規制を適用している場合はそのような規制が撤廃されるため、機動的な株式の移動を行うことができます

また、債務超過の子会社を吸収合併する際には原則株主総会での説明義務が生じますが、連結配当規制を適用している場合はそのような説明が不要となります。グループ全体としては吸収合併をしても変わらないという見方もありますが、やはり債務超過の会社を吸収合併することに対しては批判的な株主もいるため、有用な規制であると言えます。

連結配当規制額はどうやって計算する?

連結配当規制を適用している会社は、単体決算で求められた分配可能利益から連結配当規制控除額を差し引いて計算されます。

連結配当規制における控除額は、最終事業年度の末日における貸借対照表の株主資本等の額から末日後に子会社から取得した親会社株式の取得直前の帳簿価額のうち子会社持分相当額を差し引き、そこから最終事業年度の末日における連結貸借対照表の株主資本の額を差し引いて計算されます。
よって、親会社株式に大した動きが無い場合は、連結貸借対照表の株主資本金額が最終的な分配可能額になります。

連結配当規制のデメリットは?

連結配当規制については、デメリットもいくつか存在します。

まず、連結配当規制適用会社では、連結計算書類の作成が義務付けられます。連結計算書類は通常の計算書類と違い、グループの財務諸表を合算して内部取引を消去したり、未実現利益を消去したりする必要があります。単体決算では親会社の決算のみ作れば良かったものの、連結計算書類ではグループの財務諸表のみならずグループ間取引を漏れなく収集する必要があり、手間がかかります。

また、連結決算の知識が必要であるため、誰でも作れるというものではありません。さらに、連結計算書類では、通常の計算書類とは違う表示方法や注記内容が求められており、スキルと情報収集能力が求められます。

また、連結配当規制が適用となると、今までは親会社で配当が十分にできたにも関わらず、子会社の業績が悪い為に配当が十分にできない可能性があります。よって、連結配当規制を適用してしまうと配当金額が減少して、結果として株価が低下してしまう可能性があります。

連結配当規制適用の事例

連結配当規制は、実はそれほど広範囲で適用されているわけではありません。実際に上場会社で適用している会社は40社程度であり、ほんの一部であることが分かります。

連結配当規制を適用している理由は明確にはされてはいませんが、巨大企業から新興企業まで様々となっています。
上場会社では連結計算書類の作成は必須となっている為、財務諸表作成の面ではデメリットはありませんので、万が一のことを想定しての連結配当規制適用としていると言えるでしょう。

連結配当規制について気を付けたいこと

連結配当規制は、「規制」ということもあり、分配可能限度額を増やす制度ではありません。例えば、親会社は赤字であっても子会社が黒字であれば配当ができる、というものではないのです。つまり、連結全体で配当可能限度額を算定するのではなく、あくまで親会社の配当可能額をベースに、子会社の赤字分を差し引いて考えるということとなります。

例えばホールディングス会社のように利益の源泉が子会社からの配当や業務委託料のみである場合は配当原資が確保しづらくなるため、上手に子会社から利益を吸い上げる仕組みを確立する必要があります。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び
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