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固定資産管理とは?目的・実際の手法・台帳作成方法を総合的に解説

HUPRO 編集部
固定資産管理とは?目的・実際の手法・台帳作成方法を総合的に解説

固定資産管理とは、企業の業務遂行にとって必須の課題です。なぜなら、企業は経済活動をする中で長期間の使用を前提とする数々の固定資産を所有する必要に迫られますが、これらの固定資産は使用期間が伸びるにつれて経年劣化するという特徴を抱えているために、特別な会計処理をしなければ適切な管理ができないからです。

そこで、この記事では、固定資産管理とはどのような実務上の処理を要するのか、どのような目的で固定資産管理をするのかについて、総合的に解説します。企業経営の健全化に直結する問題なので、企業経営者や経理担当者の方は、ぜひご参考ください。

固定資産管理とは?管理対象の固定資産を整理

固定資産管理とは、企業が保有する資産のうち、固定資産に分類されるものを管理することです。そこで、まずは企業が所有する固定資産とはどのようなものか整理しましょう。

固定資産とは?

固定資産とは、原則として企業が1年以上使用する目的で所有する資産のことです。現金などの流動性がある金融資産ではなく、かつ消耗品でもない資産を意味します。流通を目的とせず、使い捨ての消耗品でもないことから、固定資産はある程度の長期間に使用することが想定されているものです。

固定資産には、有形固定資産無形固定資産、投資などその他の資産**が含まれます。

固定資産に含まれる具体例とは?

有形固定資産には、土地や家屋、機械設備、オフィスに設置するデスク等の備品、パソコン、自動車などが含まれます。また、無形固定資産は、企業が所有する資産価値が認められる諸権利(営業権、特許権、のれんなど)のことです。さらに、投資などその他の資産には、有価証券、長期貸付金、企業名義の株式、長期前払費用などが含まれます。

これらの固定資産は、時間の経過によって資産価値が減少するなど資産価値に変動が生じるので、減価償却などの経理処理を施す必要があります。固定資産管理によって、固定資産の価値変動が客観的に整理できるでしょう。

固定資産管理とはどのような目的で行われるべきか

固定資産は企業が長期的に所有する財産でありながら、所有する期間において資産価値に変動が減少等の変動を生ずるものです。したがって、固定資産管理は固定資産価値の把握に資するものですが、より踏み込んでどのような目的で実施されるものでしょうか?

以下で述べるように、固定資産管理には4つの目的があるので、それぞれの目的について説明を加えます。

【固定資産管理の目的1】適正な会計処理

第1に、固定資産管理とは、適正な会計処理を目的としてなされるものです。

企業が適正な会計処理を行うためには、決算書などの会計経理上必要な書類を作成しなければいけません。固定資産の多くは耐用年数に応じた減価償却処理の中で、法定償却率による償却額を費用として計上し、決算書に反映する必要があります。

固定資産管理で適正な会計処理を行えば、所得税・法人税の算出時にも苦労がなく、減価償却処理の正しさも担保されるでしょう。

【固定資産管理の目的2】適正な固定資産税の算出

第2に、固定資産管理とは、適正な固定資産税算出を目的としてなされるものです。

固定資産税が課されるのは土地や家屋だけではなく、上述のような各種償却資産に対しても償却資産税が賦課されます。償却資産税を納めなければいけない償却資産の範囲は企業ごとに異なるので、都度適切に管理をしていなければ、納税申告の際に煩雑な作業を強いられかねません。

固定資産管理を適正に行えば、固定資産税や償却資産税算出も容易に行えますし、必要なタイミングで固定資産を処分して節税効果を高めることもできます。企業における税金対策はコスト削減に重要な課題なので、日常的に適切な管理を心がけましょう。

【固定資産管理の目的3】経費運用の適正担保

第3に、固定資産管理とは、経費の運用が適正に運用されていることを担保する役割を担います。

例えば、あるタイミングで購入した固定資産について、一定期間の経過とともに使用頻度が少なくなるというケースは少なくありません。無駄なPCや什器、不必要なまでに何度も新規購入されている物品のような経営コストを高めるだけの不要な経費は、残念ながらどの企業でも発生しうるものです。

固定資産管理を適切に行えば、企業における無駄な支出を減らすことができます。実務上必要なもの、不必要なものを棲み分け、経費管理の透明化を図れるというメリットも得られるでしょう。

【固定資産管理の目的4】セキュリティ対策に資する

第4に、固定資産管理とは、固定資産のセキュリティ対策に役立つものです。

固定資産管理を適切に行えば、資産価値の高い固定資産の毀損や盗難、過失による価額減少というリスクを減らせるというメリットが得られます。日常的な管理体制が整っているからこそ固定資産の扱いが丁寧になり、記録・追跡作業も容易となるでしょう。

固定資産管理の方法とは?固定資産管理の具体的手法の流れ

では、ここからは、固定資産管理の実務上の流れを紹介します。特に、固定資産管理では、固定資産台帳の作成がポイントになるので、丁寧に情報を整理してください。

【固定資産管理の手順1】固定資産に対する適切な会計管理

まずは、請求書に基づく支払い手続きが終了した固定資産に関して、減価償却という形で経費を計上することになります。減価償却とは、資産を購入した年に費用の全てを計上するのではなく、耐用年数に応じて年ごとに分割して費用を計上する手法です。固定資産・償却資産ごとに、償却率・耐用年数、償却方法が個別に定められているので、税法諸規定を参照のうえ、適切な会計処理を行いましょう。

固定資産は、いったん取得したら長期間継続して使用収益できるものですが、他方で、経年劣化を避けられないために、取得(購入)した時の価値が最も高くなり、時間が経過するに伴って価値が下がっていくという特徴があります。建物は古くなれば傷んできますし、自動車も部品などが劣化してきます。

例えば、耐用年数3年の工場用機械を300万円で購入した場合、購入した年に300万円の費用を計上するのではありません。減価償却処理では、耐用年数の3年間の間に、300万円を分割して計上していきます。

【固定資産管理の手順2】固定資産台帳の作成・記載

以上のように、固定資産の減価償却管理は中長期的なスパンで行わなければいけないので、適正かつ客観的に現状等を把握しやすくするために、固定資産台帳が作成され、適宜必要な情報が記載されるという運用がなされます。

固定資産台帳とは、企業が保有する固定資産の情報を様々な項目によってまとめた書類のことで、これによって、企業が保有する各固定資産の取得から処分までの履歴が一目瞭然になるというメリットが得られます。固定資産を保有する企業は、固定資産台帳を作成することが義務付けられているので、適正に作成しましょう。

固定資産台帳の記載内容・項目

固定資産台帳に記載する項目を簡単に紹介します。固定資産台帳は税務申告に必要な書類ですが、作成のための細かい様式までは要求されていないため、基本的には台帳を記載する企業が記載項目を決定します。

固定資産台帳の記載項目として一般に採用される項目には、以下のようなものがあります。

資産の名称(特定に足りるだけの具体的な名称。)
資産区分(「建物」「機械」「車両」のように端的に資産内容を示すもの。)
履歴内容(取得年月日や除去年月日など。)
管理方法(管理責任者や管理場所など。)
取得価額
減価償却に関する情報(償却方法、耐用年数、当期償却限度額、減価滅却累計額など。)

このような形で項目を分けて固定資産台帳を作成しておけば、減価償却処理がはかどりますし、資産のメンテナンス、買い替えの時期を計る目安としても機能します。

なお、企業によっては、固定資産台帳、償却資産台帳、リース資産台帳などの棲み分けを明確にできていないケースもあります。適正な資産管理のためにも、各台帳を適切に区別するか、まとめて作成してしまうのがおすすめです。

固定資産台帳を作成するツール

固定資産台帳には決まった書式は存在しません。したがって、その企業にとって必要な記載事項を、ひと目見るだけで把握しやすい形で盛り込むことが重要です。

例えば、固定資産台帳を作成するオーソドックスな方法は、エクセルなどの表計算ソフトを使うことです。セルの中に記載事項を入力して項目を埋めていくだけでもそれなりの形に仕上げることができます。また、固定資産台帳を最初から作成するのが難しい場合は、インターネットにある固定資産台帳用のテンプレートを流用する方法もあります。

もっとも、管理すべき固定資産が多い場合は、各項目を手動で入力していくのは手間がかかり、作業の過程でミスが生じる可能性もあります。

したがって、表計算ソフトでは台帳を作るのに手間がかかりすぎるという場合は、会計ソフトを導入するのも有効です。多くの会計ソフトには固定資産管理台帳のシステムがデフォルトで盛り込まれているからです。

会計ソフトで台帳を作る場合、基本的には必要な項目を登録するだけです。入力などに要する時間を短縮できますし、減価償却費も自動で算出できるものもあります。

今後、資産管理運用をスムーズに行うためには、ある程度のシステム化も視野に入れるべきです。管理体制はできるだけスリム化した方が企業利益に資するので、どうぞご一考ください。

【固定資産管理の手順3】管理体制のルール化と棚卸し作業

固定資産台帳は、作成時に正確性が求められるだけでなく、管理運用時における社内ルール化も必須です。例えば、固定資産ごとにラベル付けをしておけば、棚卸し作業もスムーズに行えるでしょう。

固定資産管理では、年に1~2回の頻度で、現物実査を行う必要があります。ある程度のタイミングで現物を確認しておかなければ、せっかく作成した台帳の内容との齟齬が生じたり、現物が毀損されるリスクが生じるからです。

したがって、固定資産台帳の作成から台帳を利用した棚卸し作業が円滑に行えるように、社内でガイドラインを作成しておきましょう。

まとめ

固定資産管理体制を整えることができれば、企業における中長期的なコスト削減を実現できます。その結果、収支バランスが向上するので、企業の収益部門に資金を投ずる余力も生まれるでしょう。

社内ガイドラインを確定したうえで日常的管理を徹底、可能であればシステム化すれば、固定資産管理は手間のかからない作業になります。固定資産の費用面について問題意識を抱えているのなら、ぜひこの機に体制改善をご検討ください。

この記事を書いたライター

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