配当性向とは、株主にどれだけ利益を還元しているかを示すものです。配当性向が高い会社の株主はそれだけ多くの配当をもらっているので、配当性向が高い会社が良いと思われがちです。しかし、実際のところはどうでしょうか。今回は、会社の配当性向の高さについて解説していきます。
配当性向とは、会社が得た利益をどの程度まで株主に還元をしているかがわかる指標です。当然、配当性向が高い会社の方が、多くの利益を株主に還元しています。まず、配当性向を求める計算式をご紹介しましょう。
・配当性向(%)=配当金支払総額÷当期純利益×100
・配当性向(%)=1株あたりの配当金÷1株あたりの利益(EPS)×100
具体的にお話しましょう。純利益が1,000万円の会社があったとして、その会社の配当金支払総額が200万円であったとします。そうすると配当性向は200万÷1,000万円×100で20%となります。また、配当金支払総額と当期純利益に当たる額を発行済株総数で割れば、1株あたりの配当金と1株あたりの利益がでるため、2つ目の計算式として考えることもでき、結果は同じことです。
配当性向から分かることは、配当性向が高い会社は、利益の多くを株主に還元しているということです。ただ、ここで気をつけておかなければいけないことは、配当性向というものは、あくまでも配当に対しての会社の姿勢だという点です。配当性向が高いか低いかは、実際の配当金の額に関係がありません。以下の例でみてみましょう。
・A会社 利益4,000万円×配当性向40%=配当金支払総額1,600万円
・B会社 利益2,000万円×配当金性向60%=配当金支払総額1,200万円
このように配当金が高いか低いかだけで見るとB会社の方が良さそうに見えるのですが、実際の配当金支払総額を見比べると、A会社の方が配当金支払総額は大きいことがわかります。
先ほどの事例で、配当性向が高ければいいというものではないということは、お分かりいただけたかと思います。ただ、会社の方針としてあえて配当性向を高くしないようにしている会社があることもお話しておきましょう。
配当性向が低い会社は、それだけ株主に対して還元できる利益が得られていない場合もあります。ただ、配当性向を低くして、その資金を事業拡大への投資に回しているかもしれません。これは、今後の大きな成長が見込めることですので、株主にとってもマイナスな状況とはなりません。また、まだ成長期であるベンチャー企業の場合は、株主への還元よりも、新しい事業を始めたり、設備や人材に投資をしたりすることを優先した方が、結果的に大きな利益が期待できる場合もあります。
では、反対の話もしましょう。配当性向が高いだけの会社は、株主に自社をアピールするためだけに配当性向を高くしている可能性もあります。このような場合、もちろん人材育成や研究開発などにコストをかけることができなくなるので、事業拡大のチャンスを逃してしまっている可能性があります。また同様に、成長期であるベンチャー企業でも配当性向が高いという場合は、適切な投資がされておらず、成長のチャンスを逃しており、将来性に不安があるとも判断できるのです。つまり、正当性向が高いから良い、というわけではないということがいえます。
配当性向が高くなれば、多くの配当金を受け取ることができるように思えますが、実はそうではないというケースの話をします。例えば、昨年度における当期純利益が1,000億円、そして配当性向が10%であった企業をみてみましょう。この場合の昨年度の配当金支払総額は、1,000億円×10%で100億円です。
そして今年度は、配当性向が20%にまで引き上げられました、2倍ですね。ところが、当期純利益が500億円にまで低下してしまったのです。そのため、配当金支払総額は500億円×20%で、昨年と同じ100億円となります。これは、配当金のもととなっている当期純利益が低くなってしまったために起こりました。ものすごく極端に言えば、配当性向がいくら高くとも、利益がゼロであれば、配当金もゼロになるのです。
近年の大塚家具の配当性向は100%を大きく上回る値となっています。もちろん業績が良ければ問題はないのですが、実際のところ大塚家具は赤字であるにも関わらず、高い配当性向を保っているのです。配当のもととなる利益がマイナスであったとしても、過去の利益で蓄えた資産を切り崩し、配当金に充てているような状態になっています。これは、株主からの信頼を得続けるため、安定した配当性向をしたいと考える経営方針の表れです。
配当性向は株主への利益還元の割合を表す数字ではありますが、配当性向が高い会社が健全というわけではありません。なかには、あえて配当性向を低くし、将来の発展のために資金を費やしている会社もあるのです。投資をする際は、このような複雑な面にまで考慮し、投資先を検討するようにしましょう。