士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所|HUPRO MAGAZINE
士業・管理部門のキャリアコラムが集う場所

カテゴリ

棚卸資産回転率とは?高い方がいい?低い方がいい?

HUPRO 編集部
棚卸資産回転率とは?高い方がいい?低い方がいい?

棚卸資産回転率とは、企業の製品がどの程度、効率的に回転して販売されているのかを表す指標です。この棚卸資産回転率は、どのくらいが望ましいのでしょうか。また、どのようにすれば回転率を求めることができるのでしょうか。今回は、棚卸資産回転率の意味や求め方などについて解説していきます。

棚卸資産回転率とは何を意味している?

「棚卸資産」とは、つまり在庫のことを意味しています。在庫とは「販売する商品」「完成している商品」「未完成の商品」「製品の材料や部品」「建築資材」などのことを指します。そして棚卸資産回転率とは、棚卸資産がどの程度効率よく販売されているのかを表している数字です。これにより、棚卸資産の残高が適当かどうかを判断することができます。

棚卸資産回転率とその求め方とは?

棚卸回転率とは、「売上原価÷当期や前期末の棚卸資産」で計算します。例えば、売上が5,000万円あり、棚卸資産平均が500万円である会社の場合は、5,000万円÷500万円で、10回転と割り出すことができます。回転率は高いほど良いとされていますが、高すぎると棚卸資産が少ないということになり、取引先から注文が来てもきちんとした対応をとることが難しく、販売のチャンスを逃してしまう恐れがあります。とはいえ、低ければ、それは棚卸資産である在庫が多すぎて、資金が圧迫される恐れがあるほか、商品の劣化などの危険性も生じてきます。

ただ、この棚卸資産回転率は一概に「この値が良い」とはいえません。なぜなら、業界や業種、企業によって異なってくるためです。最も理想的であるのは、自社のこれまでの実績や、同業種のデータなどを参考にすることでしょう。

棚卸資産回転率から経営分析をすることができる

同じ企業の棚卸資産回転率を時期によって見比べてみると、経営状況が把握しやすいです。棚卸資産とは在庫、つまりお金であり、お金の増殖に貢献することができていない状態といえます。しかも、在庫に変えてしまっているお金は、もう他の使い道がありません。過去と比べて棚卸資産回転率が低くなってきたと感じるなら、なんらかの対策が必要となるでしょう。

例えば、棚卸資産回転率が低ければ、売れ筋や死に筋商品を区別して在庫の処分を行うことや、不良在庫や陳腐化している在庫がないかなどの調査をした方がいいかもしれません。反対に棚卸資産回転率が高ければ、棚卸資産が少なくないか、在庫ロスの可能性はないかを検討し、必要に応じて発注量を調整しなくてはいけないかもしれないでしょう。

棚卸資産回転期間とは?

棚卸期間回転期間という指標もあります。こちらは、商品を仕入れ、その程度の期間で販売することができているのかを判断するための指標です。棚卸資産回転率が1年の間に棚卸資産が何回転しているか示しているのに対し棚卸資産回転期間は棚卸資産が1回転するまでに何日または何ヶ月かかるのかをみています。

棚卸期間回転期間は、在庫回転期間とも呼ばれています。棚卸期間回転期間は、その期間が短いほど、商品が在庫として扱われている期間が短く、効率よく販売されていることがわかります。反対に、棚卸期間回転期間が長いほど、過剰在庫を抱えていたり、滞留在庫が多い状態と判断できます。棚卸期間回転期間を求めるには「棚卸資産÷売上原価÷12」で在庫回転月数を割り出すことが可能です。また、「棚卸資産÷売上原価÷365」であれば、在庫回転日数を割り出すことが判明します。
ちなみに財務省の法人企業統計調査によると、棚卸資産回転期間の平均は、月単位で0.89ヶ月分。製造業では1.26ヶ月分で、非製造業は0.75ヶ月分となっています。

棚卸資産回転率が低い、棚卸期間回転期間が短いことが良いとは限らない

棚卸資産回転率が低い、棚卸期間回転期間が短いことが良いとは限らない

棚卸資産回転率が低く、棚卸期間回転期間が短いということは、つまり少ない在庫で経営ができているということです。とても良い状態のように思えますが、この状態にもリスクはあります。突発的な災害や事故によって、生産や販売がうまくできなくなってしまうリスクです。

少し前の話にはなりますが、2001年、ニューヨークにある世界貿易センターに航空機が突っ込んだというテロ事件が起きました。この事件により、航空機に積まれていた部品や資材などの輸送に混乱が起き、その結果、すぐに多くの工場の操業が停止に追い込まれてしまったのです。工場に届くはずだった部品や資材などの在庫がなくなってしまったことが、原因だと考えられています。

在庫管理の技術が発展し、コンピューターなどを使って少ない在庫で経営をすることが可能になりました。しかし、このような突発的なトラブルに対して対応できないという弱さも浮き彫りとなったわけです。今後は、突発的な事態にも臨機応変に対応できる経営方法が求められるでしょう。

まとめ

棚卸資産回転率は、在庫であるお金をいかに効率よく回して経営ができているかどうかのバロメーターです。低ければ効率よく経営できていると判断されますし、高ければ効率が悪いとみられます。棚卸期間回転期間も同様で、経営の効率化を判断する際に用います。ただし、あまりにも効率化にばかり目を向けていると、突発的な災害や事故に対して対応ができず、倒産に追い込まれてしまうリスクもあることを忘れないようにしましょう。

この記事を書いたライター

HUPRO MAGAZINEを運営している株式会社ヒュープロ編集部です!士業や管理部門に携わる方向けの仕事やキャリアに関するコラムや、日常業務で使える知識から、士業事務所・管理部門で働く方へのインタビューまで、ここでしか読めない記事を配信。
カテゴリ:コラム・学び

おすすめの記事