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経理担当者必見!インサイダー取引に巻き込まれないための注意点

小林雄一
経理担当者必見!インサイダー取引に巻き込まれないための注意点

経理担当者は、財務上の重要情報を知りうる立場にあります。その情報を基にして自社の株式売買を行えば、インサイダー取引になりかねません。しかし、どのような情報を知って株の売買を行ったら、インサイダー取引になるのでしょうか?そこで、今回は事例を交えながらインサイダー取引にあたるケースについて解説したいと思います。

インサイダー取引とは

インサイダーとは、内部者のことを指します。つまり会社の内部関係者が自社の株式売買を行うことをインサイダー取引といいます。
もう少し具体的にいいますと、上場会社の会社関係者が、会社の重要な内部情報を知って、その情報の公表前に会社の株式の売買を行うことをいいます。

このような売買が行われると不正な利益を得ることが可能になり、一般投資家との間に不公平が生じるので禁止されています。
また、会社関係者から未公表の重要な情報を知らされた者も規制対象者になるので注意が必要です。

インサイダー取引の要件

具体的には、次の4つにあてはまる場合にインサイダー取引になります。
インサイダー取引とは、
会社関係者が、②重要事実を知って、③その事実の公表前に、④株式の売買を行うことをいいます。

①会社関係者
会社の中でその立場上、内部情報を知り得る立場にある者
取締役等の上層部に限らず、一般社員も含まれます。また、内部情報の伝達を受けた者も含まれます。

②重要事実
その会社の株価に影響を与える重要事実をいいます。

③公表前
2社以上の報道機関(新聞社、通信社、放送事業者など)に対して情報を公開してから12時間を経過していない時点

④株式の売買
株券、社債券、優先出資証券、新株予約権証券、カバードワラント、他社株転換条項付社債券などの売買をいいます。

インサイダー取引の防止

日本取引所自主規制法人では、株式市場で株式取引に影響を与える重要事実が公表された場合、それに関連する銘柄を対象にしてインサイダー取引が行われていないか取引状況を分析しています。そしてインサイダー取引が疑われる取引について証券等監視委員会に報告をします。

インサイダー取引は全て記録される

少額だから大丈夫だろう、1回くらいならバレないだろうという考えは禁物です。証券等監視委員会が忙しくてたまたま手が回らず発覚しなかったとしても、取引は全て記録されています。

そして1回インサイダー取引に手を出し甘い汁を吸うとそれに味を占め、何回も繰り返し常習的になります。そうして記録が積み重なっていき、やがて摘発されることになるのです。インサイダー取引を軽く考えてはいけません。証券等監視委員会は忘れたころにやってくるのです。

インサイダー取引の罰則

インサイダー取引には罰則が設けられていて、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、または併科となります。また、財産は没収となります。

この場合の財産とは、得た利益ではなく売買金額を指します。法人がインサイダー取引を行った場合には、法人に対して5億円以下の罰金が課されます。

インサイダー取引が発覚したらどうなるか

インサイダー取引が発覚したら会社には大きな迷惑をかけることになります。会社には証券等監視委員会の調査が入ります。業務上知った情報を基にして、インサイダー取引をしているのですから本人だけでなく、関係する部署や関係者が調べられるのは当然のことです。

自分がインサイダー取引をしたために、会社の社長室や取引先にまで調査が入る可能性もあるのです。そうなったら、間違いなく就業規則違反で懲戒解雇になるでしょう。

経理担当者がインサイダー取引に巻き込まれないために

インサイダー取引というと、会社の役員などがその地位を利用して知った情報を使って、自分の持っている株を高値で売って多くの利益を得ているイメージが強いかもしれません。しかし、インサイダー取引の規制の対象になるのは何も会社の役員などに限られず、一般社員でも規制の対象になります。また正社員に限らず、パート、アルバイト、派遣社員なども含まれます。

経理の担当者は会社の中でも営業担当者など他の部署に比べると、比較的重要事実について容易に知りうる立場にあります。
経理担当者にとって、「数字」は仕事上のツールのようなものです。そして「数字」には、新製品に関するものなど、会社の経営に大きく関わるものが含まれることがあります。

社員には、些細な情報でも第三者には重要な情報にあたる場合があることを忘れてはいけません。重要情報をうっかり外部に漏らすことによって、悪意が無くてもインサイダー取引に巻き込まれる可能があるのです。

そのため、経理担当者は、自分が扱っている全ての「数字」がインサイダー情報になり得ると心得ましょう。
最近はSNSの利用が盛んです。そこで何気なく「今期の業績は絶好調です」などとつぶやいただけで、インサイダー情報を外部に漏らしたことになります。

まとめ

インサイダー取引は、会社の役員等の一部の立場の人だけに問題になるわけではありません。所属する従業は誰しも規制の対象になるのです。とりわけ経理担当者は「数字」を通して会社のさまざまな重要情報を知りうることになります。

その情報を何気なく口外することが、後で大きな問題に発展することになるのです。そうならないために、重要情報の扱いに細心の注意を払ってください。

この記事を書いたライター

大学卒業後、専門商社(食品専門商社、電子機器専門商社)に19年間勤務。行政書士試験に合格し、現在は開業準備中の士業ライター。分野は受験・勉強法、法律関係を得意とする。
カテゴリ:コラム・学び

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