いくつかの製品や部門にまたがる共通経費などを処理するために、それぞれの事業や店舗ごとに割り当てることを配賦といいます。規模がある程度大きくなった企業では、直接収益が出ない費用を配賦することで、企業の全体の利益をそれぞれの部門の責任者に意識させられます。今回は、配賦の意味と目的そして配賦の際に用いられる原価計算について解説していきます。
企業がある程度大きくなれば、組織を横断するようなそれぞれの部門のみで完結しない費用が多くなってきます。また、チェーン店舗を展開したり、店舗を多く展開したりしている企業では、それぞれの店舗を取りまとめる本社の管理部門の費用、本社のビルのメンテナンス費などのように、使った部門がはっきりしない費用も必要になります。
このようなときに、それぞれの店舗やそれぞれの部門に費用をある一定の基準によって振り分けることを配賦といいます。
それぞれの店舗やそれぞれの部門の責任者に、自分が取りまとめをしている店舗や部門の利益のみでなく、全体の企業の利益を意識させることが、配賦する目的です。
配賦する費用は、利益を直接出すことはありませんが、企業を経営するために必要なものです。配賦する根拠は、全体の企業で費用を平等に分担して、配賦を考慮して利益を出すのが正しいということです。
例えば、配賦する前は利益が出ていた店舗が、共通経費などを配賦されたために利益が出なくなることはよくあります。それぞれの店舗は、企業の全体の収益について考える必要があります。上手く配賦を利用すると、それぞれの店舗や部門に企業が生き残るためにクリアすべき最低限のハードルを提示し、利益をより高い観点で出そうという意識を育てることができます。
このようなメリットが配賦にはありますが、どうしても配賦する基準が意図的になりがちで、振り分けを全ての店舗や部門が納得できるようにするのが困難であるということもあります。また、配賦する基準によっては、現場の意欲が下がるというリスクもあります。
配賦する基準を人数にしたときは、配賦を少なくするために人員を削減することもあり、作業効率が最終的に悪くなったり、負担が別の店舗や部門に行ったりするときもあります。
配賦する公平な基準がないときは、配賦をあえてしないということも方法の一つです。
原価計算の精度をアップするためには、間接費を配賦する方法が大切です。
企業によって間接費を配賦する方法はいろいろですが、自社の配賦する基準を決めることが大切です。配賦する基準は、費目ごとに設けるか、部門ごとに設けるかなども、一緒に決めておく必要があります。
配賦する基準を決めるときは、どの程度まで詳しくすると良いかわからないため、悩むときが多くあるでしょう。原価計算の精度をアップするためには、配賦する基準を正確に決めることが必要になります。しかし、基本的に配賦は合理的に費用を配分するものです。
細か過ぎる基準を設けると、複雑な計算になり過ぎて効率が悪くなる恐れがあります。配賦する基準として一般的に多く採用されているのは、製品別配賦や部門別配賦です。自社に適した配賦する基準をまず決めて、トラブルにならないようにしっかりと基準を徹底することが大切です。部門別配賦は、間接部門と直接部門に費用を分けて、直接部門に間接部門の費用を配賦するものです。製品別に、部門別配賦で計算した費用を配賦するようになります。
部門別配賦としては、直接配賦法、相互配賦法、階梯式配賦法があります。
直接配賦法というのは、直接部門のみに間接部門の費用を配賦するもので、配賦する基準を直接部門のみに決めるものです。
相互配賦法というのは、間接部門の費用を一次配賦した後に二次配賦を製造部門のみに行うものです。
階梯式配賦法というのは、優先する順位を間接部門や直接部門に設けて、配賦を高い順位のものから計算するものです。
製品別配賦というのは、製品別に製品に直接負荷できない費用を配賦するものです。配賦する基準としては、人数、直接工数、直接費用などです。このような基準を決めて、費用を製品ごとに基準に基づいて配分します。
この方法では、部門別に計算しないで製品別に個別の基準で配賦するので、計算する時間が短くなります。配賦する基準が決めていると、原価計算システムにこの基準を適用することによって簡単に高い精度の計算ができます。
最近の原価計算システムは、配賦する基準をいろいろ設けることができるので、配賦がいろいろでき、シミュレーションも手軽にできます。配賦する基準は、自社の経営方式に適した、可能な限りシンプルなものにすることが大切です。そのうえで原価計算システムを使いこなせば、高い精度の原価計算ができます。
いかかでしたでしょうか。配賦基準の設定は会社の特徴に合わせたものを選択する必要があります。なぜか配賦はうまくいかない、逆にコストがかかる、など配賦で結果が出ない場合は、配賦基準を変更してみるといい方向へ変わっていくかもしれません。また、必ずしも配賦を行った方がよいということはありませんので、やめる判断をするのも大切でしょう。
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