細かな対応を求められる経理事務。人のやることなので、すべてをノーミスで済ませることはなかなか困難です。そんな中でも良くあるミスが「二重計上」。本記事では、二重計上しがちな項目と、ミスを防ぐポイントについて解説します。
経理業務で起こりがちなミス「二重計上」。多くは経費や売上を重複して誤入力してしまうことから起こります。
計算自体はシステムがしてくれるとしても、入力を間違ってしまっては元も子もありません。入力ミスというミスの内容自体は小さなケアレスミスかもしれませんが、経費を二重計上していまったら脱税、売上を二重計上してしまったら、それだけ儲けの金額が多くなるため納税額が増えるなど、その影響は甚大です。
経済的な負担だけでなく、不適切会計を行ったという事で企業の信頼を大きく損ねることにつながります。
経理業務はミスが許されないとよく言われますが、日常的な伝票入力作業から発生しやすいのが二重計上ミスです。どのようなケースがあるのかを見てみましょう。
クレジットカードで支払った場合に、購入時に発行された領収証で経費精算を行った後、クレジットカード明細の送付により入力してしまうケースです。
仮の請求書の後、正式な請求書が発行されるなどした場合や、最初に発行していたものが間違いで、改めて発行されたものがあったりした場合などに、両方とも登録してしまうケースです。
契約時に全額を経費処理したローンや分割払いの経費を、その後の支払い時にも経費計上してしまうケースです。本来であれば、契約時に経費処理したものは、支払氏は借入金などで処理をするのが正しい計上方法になります。
会社が所有する固定資産や商品の在庫について、棚卸の際にカウントを間違ってしまうケースです。単純な数え間違いの場合もありますが、自社倉庫以外に保管していた商品や、未着・返品の品などの見逃しなどもあります。
二重計上がされていないかどうかを確認するためには、経費入力や棚卸作業が一通り終了した段階で、記録を確認する必要があります。
例えば、経費入力であれば金額順に入力内容を並べてみてチェックすることで、重複した内容の入力がないかどうかを確認できます。
企業の規模が大きいと膨大な数になりますので、それぞれの部署ごとに週次・月次チェックを行うなどをルーティン化すると良いでしょう。
また、損益計算書の月次推移を確認し、大きな増減がないかをチェックするのも有効です。会計ソフトにはこうした機能が付いていますし、場合によっては同じ金額を入力したのものを抜き出して二重計上でないかどうかチェックするための機能がある場合もあります。
また、棚卸による在庫の二重計上についても、もともとの在庫管理の帳簿と付け合わせし、棚卸結果をデータ化して一覧にして確認してみることで、それまでの帳簿管理から大幅に在庫が増えていたり、また同じ固定資産が2つ計上されていたりなどのチェックが可能です。
いずれにしても、数字に関わることは必ずダブルチェックを行うことが必須です。
人のすることだからミスは仕方ないのかもしれませんが、そもそもミスの起こる可能性を極限まで減らすためにはどのようなことに注意したらよいのでしょう。
以下を参考にして対応策を練ってみましょう。
領収証・請求書にて経費精算を行う場合は、必要書類と共に精算のための証憑を作成する必要があります。
経理システムへの入力時に、これらの証憑の番号や請求内容も入力するようにしたり、領収証には付番を行って発行し、誤記入などした場合は×印を付けて適正にVOID処理を行うなど、重複しないような業務フローを習慣づけましょう。
未収金や未払金については、月に1度以上その進捗をまとめて確認するようにしましょう。
担当者に確認し、その履歴を残しておくことで、特別なケースなどの情報共有もできますし、二重計上だけでなく売り上げの未回収や支払い漏れを防ぐことにもつながります。
在庫管理については、少なくとも月に1度は定期的なチェックとその内容についての確認を行うようにしましょう。
また、実地棚卸についても年に1度といわず、四半期に一度などの確認を行う方が、在庫の二重計上だけでなく、不正な持ち出しや横領を防ぐといったことにもつながります。
具体的にどのような内容をチェックするか、また、倉庫の管理方法などもマニュアル化して定め、その通りに管理できるように体制を整えましょう。
二重計上は軽微なミスから発生しますが、気が付かないままで決算してしまうと虚偽の申告となり、最終的には「不適切会計」になってしまいます。二重計上してしまう原因やそれによって起こるリスクを知ることで、ミスを未然に防ぐように対策しましょう。