従業員を雇う際には、人件費についてよく計算しておく必要があります。なかでも社会保険料にいくらかかるのかということを把握しておかなければ、思わぬ大きな額を負担することに悩まされてしまうかもしれません。今回は、社会保険料は会社にとって大きな負担となっていることについて解説していきます。
社会保険とは、年金保険、雇用保険、医療保険、介護保険、労災保険の5つの保険のことを指しています。これらは社会保障のひとつであり、国や地方公共団体などが管理や運営をしています。なお、健康保険料と厚生年金保険料は会社と従業員で折半となり、介護保険料についても同じ割合を負担するかたちです。会社は、従業員の給与より従業員負担分を控除して、会社負担分の額を加え、社会保険料として納付しています。
例えば、東京の会社に勤めている30歳で月収が30万円の人の場合、本人も会社も月40,635円負担し、会社は年に493,020円も負担することになります。同じく東京の会社に勤めている50歳で月収が50万円の人の場合は、本人は月72,075円支払い、会社は月72,775円支払います。会社は年に873,300円も負担しているのです。
労災保険料に関しては、会社が全額負担をしなければいけません。ちなみに労災保険料とは、従業員が業務中または通勤中に病気や怪我、障害を負ったり、死亡したりした場合に保障を行う制度のことをいいます。一部の業種を覗いて、基本的には従業員を1名でも雇用している会社は必ず加入する必要があり、正社員でもパートタイマーでも雇用形態に関係なく、労災保険は適用されることになっているのです。
すべての会社が社会保険料を支払っているかというと、実は違います。健康保険と厚生年金保険に関しては、加入が義務付けられている「強制適用事業所」と、任意加入である「任意適用事業所」の2つがあります。そして、任意適用事業所に該当をする事業所には、健康保険と厚生年金の加入義務がりません。
では、どのような事業所が強制適用事業所で、どのような事業所が任意適用事業所なのかを解説します。任意適用事業所は、従業員が5名未満である個人事業所(ただし任意的用事業所になるためには、従業員の半数以上の同意が必要となります)、または個人事業主が運営している従業員が5名以上の事業所で農林水産業、社会保険労務士、税理士、公認会計士などの特定の業種に該当する事業所となります。一方、強制適用事業所は、株式会社などの法人事業所であること、個人事業主で5名以上の従業員がいて任意適用事業所に指定されていない業種の事業所となります。
法人であれば社会保険に加入する義務があり、社会保険料を負担しなくてはいけません。個人経営の事務所であったとしても、条件を満たしていれば社会保険の加入の義務が発生し、同じく社会保険料の負担が強いられます。ところが、社会保険に加入し、保険料を負担する義務があるにもかかわらず、社会保険に加入をしないでいることは、会社にとって大きなリスクとなるケースがあるのです。
社会保険の加入義務があるのにも関わらず、社会保険に未加入ということは、納めるべき社会保険料も納めていないということです。このような会社にはペナルティが課せられる場合があります。このような事業所には、年金事務所より通知が届くはずですが、再三の通知にも応じないような場合には「6ヶ月以下の懲役、または50万円以下の罰金」が課せられることがありますので、気をつけてください。
先ほどお伝えしたように、いきなりペナルティが課せられるわけではなく、年金事務所より通知が何度か届きます。少子高齢化の影響で社会保険の必要性が高まっているため、社会保険料の納付に関する通知や指導は年を追うごとに厳しいものになっています。後々、大きなペナルティを負うことになり、事業の継続が難しくなる場合もありますので、通知にはきちんと対応するようにしましょう。
社会保険料を負担せずに放置しておくと、2年までさかのぼって保険料を追徴されることになります。また、延滞金も併せて支払う必要がありますので、会社としては大きな負担を抱えることになるでしょう。なお、会社が倒産した場合であっても、社長個人に対して債務は残るので、倒産したから負担がなくなるというようなことはありません。
従業員を雇用するために必要な社会保険料ですが、金額が大きく、中小企業には負担となってしまっています。従業員を雇う歳には、給与と併せて社会保険料も考慮して検討する必要があるでしょう。また、強制適用事業所でありながら社会保険料を負担しないでいると、ペナルティを課されることもあるので、気をつけてください。