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株主総会資料を電子化して提供する新たな試みについて

HUPRO 編集部
株主総会資料を電子化して提供する新たな試みについて

株主総会資料を電子化で提供するとの検討結果が、公益社団法人 商事法務研究会のウェブサイトより公表されました。この株主総会資料が電化されるとは、具体的にこれまでとどのようなことが変わるのでしょうか。今回は、株式総会資料を電子化することについて解説していきます。

経団連が求める株主総会資料の電子化とは?

政府が会社法改正を検討しているなか、経団連が上場企業に対して株主総会資料の電子化を義務化するという意見を盛り込むことを求めました。経済界においては、今まで書面にて資料提供がなされてきていた株主総会資料を電子化すると義務付けることは、時期尚早だという見方が強い傾向です。しかし、一方の経団連ではITやAI(人工知能)で電子化することによって効率的な社会が目指せるという見解から、電子化を加速すべきという判断がなされています。

現在の株主総会資料の電子化制度について

現在、原則として株主総会資料は書面によって提供をすることになっています。しかし、一定の条件を満たしている場合には、「電磁的方法での提供制度(会社法299条3項)」や「ウェブ開示のみなし提供制度(会社法施行規則94条1項目など)」によって、インターネットなどを使って株主総会情報を提供することが可能とされています。

ただ、実際のところ「電磁的方法での提供制度」は、株主の承諾が必要となるためほぼ利用されていない状態であり、「ウェブ開示のみなし提供制度」は利用会社が増加してはいるものの、対象の範囲が株主総会情報の一部と限定されているため、なかなかインターネットによる株主総会情報提供は促進されていません。

新たな株主総会資料の電子化制度について

新たに掲げられた株主総会情報の概要としては、以下の3つです。

1.株主総会の招集の際、株主に提供をしなければならない情報(株主総会情報)はすべてインターネットによりウェブ上に公開する
2.株主に対しては、株主総会情報を公開したウェブサイトのURLを書面によって通史をする(この通知は、アクセス通知と呼ぶ)
3.1や2の措置を取った場合は、株主に対して1による株主総会情報を適切に提供したこととする

この新たな電子化制度導入に関しては、以下のような問題を解決する必要があります。

1.一定の範囲の株式会社にのみ強制をするのか
2.電子化を利用する際に定款の定めを条件とするかどうか
3.株主に書面請求権の保障をするかどうか
4.もし書面請求権の保障をする場合は、その請求対象書類はどこまでとするか
5.アクセス通知に同封をすることが可能な書類に制限をかけるかどうか
6.会社が株主に株主総会情報を記載した書面を送付することをできることにするかどうか
7.ウェブサイトに掲載している内容の中断に関する規定を作るかどうか

これらの議論は今後、検討されていくことになります。

上場企業に株主総会資料の電子化を促進する4つの理由

上場企業を対象に株主総会資料の電子化が進められていますが、これについては次のような4つの理由が掲げられています。

電子化プロセスを確かに浸透させるため

株主総会資料の電子化を任意とした場合、上場企業としては中には電子化に反対の株主の反発を怖れ、電子化の利用に躊躇してしまう可能性が高いと考えられます。そのため、電子化を義務化した方が、株主総会資料の電子化の促進になるという考え方がなされています。

上場企業に大きな負担が生じるような改正でないため

現在であっても、上場企業は電磁的記録(PDFファイル)を用いて証券取引所に招集通知の内容を提出し、証券取引所がウェブサイトで公表しています。つまり、株主総会資料がウェブサイトに掲載されることが上場企業に義務付けられたとしても、今と負担は大きく増えるわけではないということ挙げられているのです。

株主などの混乱を防ぐことができるため

これまでのように株主総会資料を書面で受け取りたいとする株主に対して書面請求権が与られれば、株主側としては、書面請求が必要かどうかを個別に判断しなければいけない状況が生まれてしまいます。けれど、上場企業は株主総会資料などを電子化すると一律に定めてしまえば、このような株主の混乱も避けることが可能だからです。

ウェブサイトへ掲載するリスクはそれほど大きくはない

たとえばシステム障害などが生じ、株主総会資料がウェブサイト上に掲載されない状況が起きたとしましょう。しかし、複数のウェブサイトに記載しておけば、リスクは軽減することができます。

まとめ

株主総会資料に限らず、さまざまな資料がどんどん電子化されており、ペーパーレスが常識化してきています。そういった観点から考えれば、株主総会資料が電子化されることも自然な流れといえるでしょう。ただ、企業や株主など多くのことが複雑に絡み合っているため、議論しなければならない点が多々あります。株主総会資料の電子化を開始してから問題が起きることのないよう、しっかりと議論を進めていってもらいたいです。

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