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総資本増加率とは?どんな時に使えるの?

公認会計士 大国光大
総資本増加率とは?どんな時に使えるの?

会社を分析する指標には様々なものがあります。しかし、分析する指標が多すぎていったいどの指標を使えばよいかわからないこともあるでしょう。
今回紹介する総資本増加率はそのうちの一つです。それでは総資本増加率はどのような指標で、どのような時に使えるのかを現役公認会計士が解説します。

総資本増加率とは?

総資本増加率とは、総資本金額が前期と比べてどれだけ増加しているかを示す指標となります。計算式では、当期の総資本から前期の総資本を差し引いて、それを前期の総資本で割ったものが総資本増加率となります。単純に、前期の総資本から何パーセント資本が増加したかを示す指標と言えます。

総資本増加率からわかるのは、前期と比べて企業規模がどれだけ増加したかとなります。よって、総資本増加率が高ければ高いほど企業規模が拡大していると言えますし、総資本増加率が低い会社は企業規模が縮小している可能性があると言えるでしょう。

総資本増加率が上昇している会社の特徴

総資本増加率が上昇している会社の特徴は、前期よりも総資産が増加している企業と言えるため企業規模が拡大しているというお話をしました。

なぜそう言えるかというと、例えば売掛金や棚卸資産が増加している企業はそれだけ取引が増加している企業であるため拡大していると言えるでしょう。また、固定資産が増えて総資産が増加した場合は設備投資が盛んであるため企業規模が拡大していると言えるでしょう。

総資本増加率だけに注目するのは危険

総資本増加率は会社の規模が拡大している為一見すると良い会社のように見えるかもしれません。しかし、総資本増加率だけに着目すると思わぬ落とし穴にはまることがあります。

まず、総資本増加率が上昇している原因を見ることが大事です。それほど売上高が伸びていないのに売掛金や在庫ばかり増えている企業はその理由が大切となります。単純に顧客からの入金が遅くなっていることや、買掛金も含めて支払い遅延によって債権債務が同じように増えている場合もあります。また、在庫が増えている要因も販売がうまくいかないことが理由であれば、黒字倒産するリスクがあります。

反対に、新商品の開発により設備投資をして総資本増加率が上昇している場合は将来性があると考えられるため、事業拡大のための指標の上昇と言えるでしょう。

自己資本増加率を加味するとなおよい

総資本増加率は企業の規模が拡大している指標だということはお話しました。しかし、これだけでは企業の安全性を見ることが難しい為、自己資本増加率を用いることがあります。自己資本増加率は、当期自己資本から前期資本を差し引き、前期自己資本で割ることで求められます。

自己資本増加率が高い企業というのは自己資本を蓄えるペースが速い企業であると言えます。また、配当等外部流出をしてもなお企業に利益が蓄えられている企業であるため、安全性の高い企業であると言えるでしょう。一方で、配当などを全くせずに自己資本増加率が高い企業であると、株主へ還元する意思があまり見られない企業とみなされてしまう可能性があるので注意が必要です。
自己資本増加率と総資本増加率と組み合わせて規模の拡大と企業の安全性を見ることも大事だと言えるでしょう。

総資本増加率に代わる指標は?

総資本増加率は企業規模の拡大を見るのに有用であるとお伝えしましたが、それ以外にも企業規模の拡大率を見ることができる指標があります。
まず、売上高増加率が代表的な例でしょう。売上高増加率は当期の売上高から前期の売上高を差し引き、前期の売上高で割って求められます

売上高増加率はまさしく売上高がどれだけ前期と比べて増加しているかを見ることができるため、企業規模の拡大を見るのには適していると言えるでしょう。しかし、売上高が増加していても、例えば小売業であり既存店の売上高が減少しており新規店舗の売上高に頼っている場合は注意が必要です。

小売業が安全かどうかは既存店でどれだけ売上高を安定的に計上で来ているかどうかにかかっているため、その既存店の売上高が低下している状況では新規店舗も将来売上高が低下する恐れがあるでしょう。しかし、既存店売上高も増加傾向にありつつ売上高増加率が上昇している会社は将来性もあると言えます。

また、財務諸表の指標ではありませんが、有価証券報告書等で従業員の人員を前期と比べることも企業規模の拡大を見ることができます
従業員数が増えるということは企業規模が拡大していることは容易に想像できると思いますが、従業員の定着率が悪い企業では売上が拡大しているにも関わらず従業員数は増加しておらず、将来その売上高も減少する可能性があると言えます。また、従業員が確保できる企業というのは従業員が魅力を感じていることを意味しており、将来的にも従業員のみならず売上高が増加する前兆でもあると言えます。このように、財務指標のみならず別の指標も加味して企業分析をすることで見えていないものが見えるようになってくるでしょう。

この記事を書いたライター

公認会計士、税理士。監査法人東海会計社代表社員、税理士法人クレサス代表社員。大学時代に公認会計士旧二次試験に合格後大手監査法人に就職し、27歳で独立開業。国際会計と株式公開支援が専門。セミナーや大学で講師を務めたり書籍の出版も行っている。
カテゴリ:コラム・学び

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