経理に関わる人にとって重要な法律が電子帳簿等保存制度です。これが法律の改正によって見直されました。最新の法律を踏まえた手続きが求められるのですが、法律のどこが変わったのか把握していない人は多いでしょう。今回は電子帳簿等保存制度の見直しについて、概要やポイントについて解説していきます。
日本ではずっと経理のペーパーレス化が検討されていました。そこで、登場したのが電子帳簿等保存制度であり、こちらの法律が制定されたのは1998年のことです。当初はルールが厳しいため、企業が敬遠していたのですが、徐々に改正が行われて規制緩和が進みました。そのため、今では多くの企業が活用しています。
この制度では、決算書や会計帳簿といった国税関係の帳簿書類を電子データやマイクロフィルム、スキャナによって保存することを認めているのが特徴です。従来のように紙で帳簿を保存するとなると、大量の紙が必要となり、保存場所を確保する必要がありました。また、後でデータを参照するときに時間がかかるという問題もあったのです。電子帳簿を活用できるようになると、従来の問題点を解決することができ、企業にとってメリットが大きいです。
2019年7月に国税庁は従来の制度の見直しにより、どのように法改正されたのかを公表しました。2019年9月30日以後より変更点が実際の申請に適用されます。
見直しが行われた理由は規制緩和のためです。国税庁はもっと多くの企業に運用してもらいたいと考えて、従来よりもルールを緩和しました。個人事業主であっても、気軽に導入できるようなルールとなっています。
従来はスキャナ保存をするときには、受領してから1週間以内に入力するという厳格なルールでした。これが「おおむね7営業日以内」に変更されました。
さらに、業務の処理に係る通常期間を経過してから速やかに入力するというケースでは、「最長1ヶ月プラス1週間以内」というルールが、「最長2ヶ月プラスおおむね7営業日以内」に変更されました。
さらに、受領者が自ら読み取るケースにおいて、従来は受領してから3日以内にタイムスタンプを押すことを求められたのが、「おおむね3営業日以内」となりました。
スキャナ保存に求められるものが営業日の期間に変更されたことで、実質期間が延びたといえます。要件を満たすためのハードルが低くなったことによって、運用しやすい制度になりました。
また、従来は定期検査の要件が、全事業所を対象として最低年に1回以上というルールでした。これが「おおむね5年以内にすべての事業所」と緩和されました。たくさんの事業所を有する企業にとっては、ありがたい改正といえます。
この制度を利用するためには、事前に申請書を提出する必要がありました。さまざまな記載事項があり、添付書類も求められるため、負担が大きかったです。それが、制度の見直しによって、一部を省けるようになって負担が軽減されました。
JIIMAによって要件適合性の確認を受けている市販のソフトウェアについては、手続きの一部を省略できるようになったのです。どのソフトウェアがJIIMAによる確認を受けているのかは、国税庁のホームページで確認できます。
JIIMAとは、日本文書情報マネジメント協会です。公益社団法人であり、ペーパーレス化の普及に貢献してきた存在です。JIIMAに認められたソフトウェアであれば、安心して活用できます。
これから制度を利用したくても、要件に適合しているのか自分で判断できないというケースは多いでしょう。そこで、国税庁は事前相談窓口を設置しました。たとえば、電子帳簿を保存するために自社でシステムを開発している企業があります。それが要件を満たしているのか、相談窓口に相談すれば個別に対応してもらうことが可能です。これからシステム開発の受託を受けている企業が、ルールを確認するために相談するというケースもあるでしょう。
従来は、申請のまえに作成していた書類については、スキャナ保存を認められませんでした。しかし、これではせっかく制度を利用しても意味がないと考える事業者が多かったです。過去の書類は紙のまま保存しなければいけません。そこで、今回の見直しによって、今後は承認を受ける前の書類についても、書類を提出して一定の要件を満たすことでスキャナ保存が認められました。
対象となる書類は、領収書や請求書などで、大量に保存されていることが多いでしょう。これらの書類を過去分も含めて今後は電子保存できます。
これまでの制度では、帳簿の備付開始日から3ヶ月以内に承認申請書を提出しなければいけませんでした。そして、新しく設立した法人に関しては、承認申請書の提出期限の特例がありました。設立された日から3ヶ月以内に申請すればよかったのです。ただし、これは個人事業主が除外されていました。
そこで、法律が見直されて、今後は新しく事業を始めた個人事業主の場合には、業務を開始した日より2ヶ月以内であれば、申請書の提出ができるようになりました。