小さな会社であれば、取締役というと社長くらいしか思いつきませんが、取締役の人数が増えてくると、取締役の前に様々な肩書がついてきます。例えば、専務や常務という肩書は聞いたことがあることでしょう。しかし、専務、常務というのはどんな違いがあるのでしょうか。
今回は、専務、常務等の会社での肩書の違いを現役公認会計士が解説します。
専務や常務という肩書は、特段法律上定められているものではなく、会社が任意で使う肩書となります。よって、専務や常務を必ず設置しなければならないわけでもないですし、3人しか人員がいない会社で専務や常務という肩書を使うことも自由となっています。
しかし、基本的にはある程度規模の大きい会社が専務や常務を置くことが多いでしょう。その場合は取締役専務、取締役常務というように、取締役であることを明確にすることが多いです。
しかし、取締役ではなく従業員に専務や常務という肩書を付けることもあります。専務執行役や常務執行役というように、取締役とは区別する場合です。これは、取締役とは別に執行役員というものを置いていて、執行役員の中でも優劣をつけたい場合につける名称となります。
専務の平均年齢は60.4歳、常務は59.2歳(いずれも2015年時点)であり、やはり業務経験豊富かつ業界の知識を十分に備えた人が専務を務めている場合が多いといえます。
また、若くして起業に携わった人がより若い年齢でこれらの役職に就いている場合も近年では増えています
一般に専務や常務にはそれぞれの役割が明確化されています。
ちなみに、専務と常務どちらが上の役職かは会社によって決めればよいのですが、専務が社長の下のポジションで、常務がその下のポジションとなることが多いです。
まず、専務というのは社長が行うことを代わりに行うように、ナンバー2として色々な契約に立ち会ったりスポットの案件に対処したりすることが多いです。
一方で常務というのは会社の管理面を常に把握しており、どちらかというと組織の業務に対しておかれるポジションであることが多いです。
しかしどちらにしても会社の任意で決めることですので、従業員が混乱しないように専務の役割、常務の役割を規程などで明確にしておくと良いでしょう。
専務取締役や常務取締役となると、他の従業員とは立場が異なることとなります。
というのも、専務や常務は会社の役員であり、従業員ではありません。会社とは雇用契約ではなく、経営の委託契約となります。よって、給与をもらうのではなく年間の報酬として金銭を交付されることになります。給与であれば一定の時期に昇給であったり残業代の支給があったりしますが、役員の場合は年の初めの株主総会で報酬額が決まる以外は期の途中で報酬額が上がることも基本的には無いですし、残業をどれだけしても残業代が発生することは基本的にありません。ただし、実質的に従業員とみなされた場合はその限りではないため、誰でも常務や専務にしておけばよいというわけではないことは注意しておきましょう。
上記より専務、常務は会社にとって労働者ではなく、労働者を雇用している「使用者」という扱いになります。労災保険は労働者にのみ適用されるので、使用者である専務はじめ役員には基本的に労災は適用されません。
それでは、専務や常務以外に取締役に役職がつくことはあるのでしょうか。
代表的な役職で言うと社長が当てはまります。社長は基本的には会社のトップが名乗ることがほとんどです。ただ、社長以外にも会長という肩書の付く人がいる場合があります。会長は元社長であることが多く、創業者で長年社長をしていたが、そのまま退任させるのは取引先との関係上好ましくない場合や、内部の従業員との関係が良好である場合は取締役会長として残ることがあります。会社によっては社長が副会長になり、副会長が会長になるなど、引退後のポジションがあらかじめ決められている場合もあります。
これ以外にも、最近は海外の流れを踏んで英語表記されるポジションを作る場合があります。例えば、社長の代わりにCEOや経理部長の代わりにCFOといった名称を付けることがあります。IT責任者であればCIO等、会社の特色に合わせて自由につけることができます。これらの優劣についても会社が決めればよく、また一つのポジションを2名が共有することなども認められています。
ここまで専務や常務を中心にお話しましたが、番外編として、「顧問」と呼ばれる人がいたらどのような立ち位置となるでしょうか。
まず、その顧問が取締役かどうかで立場が異なります。「取締役顧問」といった場合はその会社の前社長であることが多くなります。先ほどお話をした会長と同じような立場で、名称だけ異なることが考えられます。しかし、単純に社外取締役として顧問という肩書になっていることがあるため注意が必要です。
取締役ではない人が顧問と呼ばれている場合は、顧問税理士や顧問弁護士の可能性があります。このような人の場合は完全に外部の人間ですが、税理士や弁護士は経営者にアドバイスをすることがあるためこう呼ばれることが多いです。また、技術的な指導をする人を顧問と呼ぶことがあります。このような人の場合は週1回や2回ほど出勤して会社にアドバイスを提供することになります。
いずれにしても、どのようなポジションかわからなければより詳しい人に聞いてみるのも良いでしょう。