個人事業主は事業を運営するうえで、取引先などと食事をしたり、つきあいでお中元などを送ったりします。そうした費用は「接待交際費」として経費で落とすことが可能です。この記事では、接待交際費とは何か、個人事業主と法人とではどのような点が異なるのかなどを解説していきます。
「接待交際費」という言葉はビジネスではよく耳にしますが、正式な会計用語ではなく、法人税法のうえでは「交際費等」にあたります。
交際費等には、次のような特徴があります。
・接待費・交際費・機密費などの費用
・法人や個人事業主などが、取引先などの事業に関係する相手に対して、接待・贈答などを目的として払う費用
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個人事業主は、事業所得や不動産所得、雑所得などを申告します。この3つの所得に関して、収入の総額から「必要経費」を引いた金額を申告するため、可能な限り多くの費用を必要経費として計上したほうが、節税面で有利です。
必要経費とは所得税法に登場する用語で、収入を上げるために使った費用全般を指します。個人事業主は、接待交際費を必要経費として計上可能です。ただし、そのためには次の条件を満たす必要があります。
・事業に直接的な関係がある
・事業に必要な費用である
時々、個人事業主は何でも経費で落とせると勘違いする方がいますが、事業に関係のない費用は必要経費にできません。
また、事業に必要な費用という点も、本人がそのように思っていればよいのではなく、だれからも事業に必要だとみなされる水準の客観性が求められます。
具体的には、取引先など仕事で関係がある相手との飲食費、中元や歳暮などの贈答品の費用、冠婚葬祭費などが挙げられます。
例として、知人との食事代を必要経費として落とすには、何が必要となるでしょうか。
まず、知人と食事をした事実が存在するという基本的な点を、領収書などで証明することが求められます。それから、知人との食事が事業に直接的な関係があり事業に必要であったのかを、税務署などから質問を受けたときなどに説明できるだけの客観性が必要となります。
この場合、知人が取引先や顧客、同業者や情報提供者などであり、仕事の話をするために食事の場をもったのであれば、必要経費にあたるとみなされます。仕事の関係者がたまたま知人であったという形です。
また、個人事業主が従業員と食事をした場合は、社内費用のため交際費等には含まれない点に注意しましょう。
なお、必要経費の上限については、個人事業主では特に設定されていません。しかし、収入額に対して不自然な金額の経費などは、本当に事業と関係があるかという観点から却下されるケースもあります。
個人事業主に対して法人の場合は、交際費等の制度も違ってきます。従来、資本金が1億円を超える大企業では、交際費等を損金として計上できない、つまり経費として認められませんでした。(損金不算入)
ですが、企業が交際費等を使うことで景気が上向くように、平成26年(2014年)の税制改正で、上記の大企業でも交際費等のうち50%までは損金として計上可能な(損金参入)特例が設けられました。この特例は、適用期限が延長されて平成32年(2020年)3月末日まで有効です。
一方、資本金が1億円を下回る中小企業では、1事業年度あたり最大800万円までの交際費等を損金として計上が可能です。もしくは、上記の特例のほうを選ぶこともできます。
なお、1人につき5,000円以下の飲食費は、交際費等には含まれません。しかし、大企業・中小企業ともに、年月日など決められた事項を記載した書類の保存により、会議費などの名目で損金として計上できます。
個人事業主では、所得税法に従って接待交際費を必要経費として計上するには、事業との関連性や必要性を証明する必要がありました。しかし、法人税法にはこのような制限の記載はありません。
理由として、法人はもともと利益を追求するために作られており、事業と関係のない行為は行わないという前提があるからです。
このため、取引先など事業に関係がある相手であれば、その行為が利益に直接的な関連がなくとも交際費として計上できるため、事実として個人事業主よりも制限が少ないといえます。
「接待交際費」は正式な用語ではなく、意味としては法人税法の「交際費等」にあたります。個人事業主は、接待交際費を必要経費として計上できますが、そのためには事業との関連性や必要性の証明が求められます。
個人事業主では必要経費に上限は存在しませんが、法人では大企業は損金不算入、中小企業は1事業年度あたり交際費は最大800万円までなどの制限があります。ただし、2020年3月末までは大企業でも交際費等のうち50%までは損金参入できる特例がある点に注意しましょう。