個人事業主や一人法人の場合、在宅ワークをされている方も多いかと思います。そうすると、自宅は住まいというだけでなく仕事場としても使用することになるので、その場合、家賃を経費にすることが可能なのでしょうか?また、持ち家の場合はどうなのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
「自宅を事務所にすれば、家賃を経費で落とせる」というのはある意味正しく、ある意味間違っています。
というのも、自宅を事務所にしていたとしても、家賃の金額を全額経費にできるわけではないからです。プライベートで使う自宅と、仕事場として使う自宅が一緒の場合は、まず「事業使用割合」を決め、その割合分だけを経費として計上することになります。
事業使用割合の求め方については、具体的にこうすべきという決まりがあるわけではありませんが、自分で勝手に決めるわけではなく、税務署から見てもある程度納得できる根拠を持って算出する必要があります。
具体的な例を次で見てみましょう。
例えば、2LDK(50㎡)のマンションの1室を事務所として使用する場合で、家賃を経費にする具体的な流れと、その割合について確認してみましょう。
【事務所部分】
事務所: 10㎡
【プライベート部分】
寝室: 10㎡
浴室: 3㎡
【共用部分】
LDK: 20㎡
トイレ: 1.5㎡
洗面所・脱衣所: 3㎡
廊下: 2.5㎡
部屋の間取りや、実際に仕事状況によっても事務所・プライベート・共用部分の区分けは変わってきます。ここでは、LDK(リビング・ダイニング・キッチン)についても、業務中に食事を取ったり、お茶を飲んだり、リビングでもノートPCを持って行って仕事をしてみたりするような状況として考えてみました。
まとめると、以下の通りになります。
・事務所部分:10㎡
・プライべート部分:13㎡
・共用部分:27㎡
共用部分については、事務所とプライベート部分の面積比率をそのまま適用するのが無難です。
27㎡/23㎡×10㎡=約12㎡が共有部分の事務所使用面積。
これを事務所利用分と足します。
10㎡+12㎡=22㎡
つまり全体の内事務所利用分は
22㎡(事務所利用)/50㎡(全体面積)×100(%)=44% となります。
これに家賃をかけることで、経費計上できる金額が決まります。仮に10万円の家賃だとすると、4.4万円が経費計上額となります。
自宅の家賃を経費計上するにあたって、今までは賃貸の例でみてきましたが、持ち家の場合はどうなのでしょうか?
結論から言うと、住宅ローン控除を受けている場合について、事業使用割合を経費計上することはできません。
仮に、前項の例だと44%ですが、これを経費計上しようとすると、住宅ローン控除は逆に44%が控除されないことになります。また、住宅ローン控除はあくまで居住用物件のための控除なので、事業使用割合が50%を超える物件については、控除自体がそもそも受けられませんのでご注意ください。
このように、持ち家の場合は経費計上と住宅ローン控除とどちらの方がお得かを考えた上で、経費処理する必要があります。
しかし、もし事業使用割合が10%以下であれば、住宅ローン控除の計算上は居住用と同じ扱いになるので、住宅ローン控除を優先しようとするのであれば、10%以下の事業使用割合分節税することが可能です。
持ち家の場合は、自宅の減価償却費用や固定資産税、住宅ローン金利など、住宅を購入・保有することにまつわる費用があるため、計算がやや複雑です。専門家への相談をおすすめします。
自宅を事務所として使っている場合、例えば部屋の照明やエアコン、PCの電気代、トイレや飲料水などの水道代などについても、事業使用割合による経費計上が可能です。電話代については、事業用に通話した分のみを経費計上しましょう。
また、自宅を事務所にしようとした場合、今までの住居では手狭になり引っ越しをすることもあるでしょう。事務所にも使うという前提で転居する場合は、転居にかかる費用についても事業使用割合分の控除を受けられるものがあります。
例えば以下のものです。
・礼金
・仲介手数料
・引っ越し業者への支払い
・火災保険などの保険料
※敷金については、退去時に戻ってくることが前提のお金のため、経費にすることはできません。もし退去時に敷金で原状回復が必要な場合は、あらためて修繕費などで経費計上を行います。
求め方としては、家賃と同様の割合にするか、あるいは自宅で仕事をするために電気代を使う割合が多いというのであれば、それなりの割合にすること可能です。
家賃を経費にするというのは、自宅で仕事をする人にとって大きな利点です。いずれにおいても「何割までなら良いか」という決まりはありません。
しかし、算出根拠については、他の経費と同様に賃貸借契約書や間取り図など、根拠となる書類はそろえておかなければいけません。仮に税務調査が入ったとした場合に、きちんと説明できるようにしておくのが賢明です。