会計事務所に転職しようと求人票を見ると「経験者優遇」のほかに「税理士科目合格優遇」などといった文言を見かけることがあると思います。税理士科目合格で真っ先に思いつくのが必須科目である簿記論と財務諸表論の通称「簿財」合格でしょう。今回は、簿財合格後に会計事務所に転職したほうが有利なのかどうか、現役公認会計士が解説します。
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簿財が必要かどうかは置いておいて、まずは合格までに平均どのくらいかかるかからお話しします。
簿記論、財務諸表論はともに合格までの平均勉強時間は500時間前後とされています。ただ、これはあくまで目安ですのでもっとかかる人も多いですし、短期集中でそれよりも短い時間で合格する人もいるでしょう。
1日2~3時間程度勉強をしたとしても200日近くかかるため、早い人は1年で同時合格、平均でも1科目1年はかかる計算となります。ということは、何も資格を保有していない状態から簿財合格までストレートでも1年から2年は考えておく必要があります。合格率の低い試験ですので、あとはその人の頑張り次第と言えるでしょう。
では、会計事務所に転職する際に簿財合格は必須なのでしょうか。
結論から言うと必須ではありません。というのも、簿財合格ということはある程度税理士試験に向けてのペースがつかめてきている状態であり、税理士になる意思が強く出ているところでしょう。
しかし、最近の会計事務所は新卒採用もしているほどであり、大手の会計事務所であればその色は顕著に出ています。これは、最近はシステム化も進んでおり会計の素人でも実践をしていけばある程度の申告書までは作れるようになってきていることから、あえて簿財合格者を採用しなくとも問題がなくなってきているからです。また、このような流れから能力も大事ですがコミュニケーション能力で顧客をグリップしておけることが重要視されていることも大きな要因の一つとなります。
とはいえ、簿財合格していて会計事務所に転職するメリットは十分にあります。まず、簿財合格しているということは会計に関する知識は十分にあることが証明できます。簿記2級とは比べ物にならないほどの証明となりますので、戦力を期待している会計事務所からすれば間違いなく優先的に採用される人材となるでしょう。
また、会計事務所は比較的離職率の高い業界です。というのも、会計事務所にあこがれて就職してみたものの、思ったよりも地味であったり所長の色が強すぎたりして継続が困難になってしまう、といったことは往々にしてあります。しかし、簿財合格ということは税理士として生きていくという強い意志が感じられるため、少しくらいの苦労では辞めない人材であることがアピールできます。
さらに、もし実務経験が全くないとしても簿財合格していれば少し教えればかなりの戦力になることが期待できます。よく「未経験者優遇」と書いてありますが、この真意は他の事務所色に染まっている人材よりも一からその事務所のやり方を教えたいという気持ちがこもっていることが多いのです。
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簿財は転職前に合格するほうが良いのか、それとも会計事務所に就職してから合格したほうが良いのでしょうか。
結論から言うとその人のライフスタイルや合格後のビジョンによって異なります。
すでに家庭もあって勉強に専念することは経済的につらいのであれば就職、それも会計事務所にこだわる必要はありません。というのも、勉強に専念しても合格する保証はどこにもありませんし、合格後も大手の会計事務所に入らなければなかなか未経験で家族を養う給与が払える事務所も少ないでしょう。
しかし、配偶者がフルタイムで働いていたり養う家族がなかったりするのであれば勉強に専念して合格後に会計事務所に入りつつ残りの税法科目を受験するというのも手でしょう。
迷うようであれば会計事務所に入ってからとるということをお勧めします。というのも会計事務所に入ることで将来のキャリアが見えてくるでしょうし、万が一合格しなくても会計事務所で働いていた経験は次の職場でも存分に活かせます。長期的に見たら会計事務所で働いていたことというのはとても大きな財産になると言えるでしょう。
簿財を合格していて会計事務所に転職する場合はとても有利に働くことはお話しした通りです。では簿財を持たずに会計事務所に転職するにはどうしたらよいでしょうか。
まず、簿記2級は最低限持っておく必要があります。簿記2級がなければ会計に関しては全くの素人とみなされるため、かなり低い給与でのスタートとなりますし、仕事についていくのも大変でしょう。簿記2級を持っていれば、必要最低限の知識がある状態で働けて、働きながらでも頑張れば合格できるため、まずは簿記2級の合格を目指しましょう。
また、これから簿財を受験するのですから、残業がどれくらいあるか、試験休暇がどれくらい取れるかも会計事務所を選ぶ判断材料とするべきと考えます。
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