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経理書類の保存期間はどのように考えればよい?

HUPRO 編集部
経理書類の保存期間はどのように考えればよい?

ペーパーレスが進んでいるとはいえ、経理業務を行う上では様々な書類を受け取り、作成し、また保存することが避けられないのが現実です。

例えば、契約書や請求書は経理担当者のいらっしゃる会社では電子契約の形で普段締結や発行をしていても、相手先によっては紙ベースでのやり取りを求められることも多いです。不動産取引のように業法上の関係で書類での作成が義務付けられていたり、税法上の関係で書類での保管が不可欠だったりすることがその背景の例として挙げられます。

「知らずに捨ててしまった。」では後々問題が発生する一方で、慎重になりすぎてずっと書類を保管し続けてしまうとダンボール何箱分もの書類が残ることになり、社内の場所を取りますし、外部倉庫に保管するにしても利用料がかかってしまいます。

今回は経理で係わってくる会社法や法人税法で定められている各書類の保存期間を中心に紹介します。

保存期間の起算日の考え方

保存期間を考える上でまず重要となるのは起算日の考え方です。起算日をどこに置くのかで、同じ10年間の保存期間と定められていたとしても、具体的にいつまで保存する義務があるのかの期間が異なってくるからです。

以下では、保存期間と決算日について解説していきます。

保存期間が10年のもの

保存期間が10年と定められているのは、基本的に会社法に基づいて保存が義務付けられている書類となります。その中でも、特に決算や会計帳簿などの経理業務に係わってくる書類は以下になります。

①決算書類・貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書

会社法第435条に定められる「計算書類」に関する書類となります。起算日は、作成された時からとなります。法人税法では7年保存となっていますが、貸借対照表や損益計算書、キャッシュフロー計算書は会社法で定める「決算書」に該当するため、10年間、これらの書類を保存する必要があります。
  

②総勘定元帳、仕訳帳、各種補助簿

会社法第432条で定められる「会計帳簿」となります。起算日は決算を締めた日からです。法人税法では帳簿の保存期間は7年ですが、会社法では「会計帳簿」の保存期間は10年と定められており、10年間保存する必要があります。

③株式に関する書類

株式に関する書類は会社法帖、「事業に関する重要資料」として重要性が非常に高く、作成日か、又は書類を受領した日を起算日として10年間の保存が義務付けられています。

保存期間が7年のもの

保存期間が7年のものは、主に法人税法上定められるものとなります。特に経理に深く関わってくる書類は下記になります。

①決算に関する書類

棚卸表などの、会社法上では「計算書類」や「会計帳簿」に分類されないが決算に係わってくる書類が該当します。起算日は作成日で、以降7年間の保存義務があります。

②取引証憑書類

現金や現預金の入出金の証憑や、有価証券の取扱に関する証憑書類、その他見積書や発注書といった取引関係の書類は書類を作成した日又は受領した日を起算日として法人税法上、7年間の保存が義務付けられています。

③電子取引の取引情報に係る電磁的記録

ペーパーレス化が進む中で、電子上で契約を締結したり請求書を発行するシステムを用いている会社も数多くあると思います。電子上で作成された注文書や契約書、領収書といった書類については書類の作成日又は受領日から7年間の保存が義務付けられています。こちらについてはその他の会社法や法人税法とは異なり、電子帳簿保存法に基づいて保存する形となります。

保存期間が5年のもの

保存期間が5年となっているのは、主に監査に関する報告書となります。監査報告書まで取る会社は主として上場会社や一部の大企業に限られますが、保存が会社法上義務付けられているので、忘れずに対応しましょう。

具体的に会社法上、5年間の保存が義務付けられているのは監査報告書と会計監査報告書です。定時株主総会の1週間前か、取締役会設置会社の場合は、定時株主総会の2週間前の日からが保存期間の起算日となります。

帳簿書類の保存方法

帳簿書類の保存方法は、原則的には紙によるものとなります。そのため、パソコンの会計ソフト等で作成した帳簿書類についても、プリンターで印刷し紙媒体で保存することが求められます。

ただし、サーバーやDVD、CDなどの電子データにより電子計算機(パソコンの会計ソフト等)を使用して作成する帳簿書類について、備え付け開始の3か月前までに所轄税務署長に対し申請書を提出した上で承認を受ければ、電子データのまま保存することが可能です。保存期間は、紙による帳簿書類等の保存期間に準じ、7年(繰越欠損金の年度は9年)となります(電子帳簿保存法施行規則8)。

また、一定の書類については、スキャナーによる保存を行うことができます。ただし、スキャナー記録による保存を行う予定日の3か月前までに所轄税務署長に対して申請書を提出した上で承認を受ける必要があります。

なお、帳簿書類に関しては、紙で作成したものをスキャナーで保存することができないので、DVD等に記録して保存したい場合は電子データのまま保存する必要があります。

さらに、マイクロフィルムによる保存が可能な場合もあります。保存期間の最後の2年間の6年目及び7年目(繰越欠損金の年度の場合は8年目及び9年目)の帳簿書類については、マイクロフィルムにより保存することができます(保存開始の3か月前までに所轄税務署長のへの申請・承認が必要。一定の要件を満たすものに限る)。

保存せずに破棄してしまった場合はどうなる?

これまでは会社にまつわる書類についてや保存期間についてお伝えしてきましたが、これらの書類を、保存期間を経ずに破棄してしまった場合はどうなるのでしょう?
税法における罰則と会社法における罰則についてご紹介します。

税法上の罰則

青色申告が取り消される

なんと、保存期間を経ずに書類を破棄してしまうと、青色申告が取り消されてしまう恐れがあります。それは、青色申告の要件に「帳簿書類の保管」という項目があるから。税務調査の際に、帳簿書類の提示要求に応じることができてこそ青色申告ができるのです。青色申告が取り消されると、様々な特典を受けられなくなり、会社にとって大きなダメージとなります。

税務署からの課税を受ける

帳簿書類の保存がなされず青色申告が取り消されると、白色申告となります。
その場合、税務署側は「推計課税」を行うことができるようになります。つまり、税務署長側が推計して法人税や所得税の課税を行うことができるようになるのです。

これが起こると、税務署側に有利な計算によって税金額が決定されることになり、自社で申告した金額に追徴される可能性がぐんと高まります。これは会社経営においてかなり大きなダメージとなります。

会社法上の罰則

会社法976条では「過料にすべき行為」の要件に帳簿書類の記録や保存についての規定があります。そこでは、保存義務を守ることができなかったり、虚偽の記帳を行った場合、100万円以下の過料が科せられます。

参考資料:会社法976条|総務省

まとめ

いかがでしたでしょうか。経理では多くの書類を受け取ることも多く、また社員数が多い会社ですと、各社員が受け取ってきている領収書などの数も多くなり、どうしても決算シーズンなどにファイリングなどの作業を行えていないとどんどん整理されずに溜まっていってしまうといったような自体が起こってしまいます。

文書の管理ルールについては早めに理解して、社内の保存のルールや運用を固めてしまうと、後々、書類が溜まってしまった際に適切に保存期間毎にファイリングし、また然るべきタイミングで破棄していくことが出来るので、会社としても税務調査などにも対応出来ますし、いざという時に顧客や株主から過去の証憑を求められた際にも問題なく対応出来ます。是非この機会に理解を深めていきましょう。

この記事を書いたライター

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