「裏金」という言葉はニュースでよく耳にしますが、実際はどのような手口で作られ、発覚するとどのような罰則を受けるのでしょうか。裏金のような不祥事への関与を防げるよう、今回は裏金という言葉が表す意味や、具体的な裏金の作り方、裏金作りで受ける罰則などについて解説していきます。
「裏金」とは、辞書では「取引などが上手くいくように支払う、表に出せないお金/帳簿に記載せず、不正に隠し持っている金銭」とされています。法律用語ではないため明確な定義はされていませんが、文脈に応じて次のような意味で使い分けられていることが多いです。
共通するのは、帳簿をごまかしてお金を違う目的に使ったり自分のものにするといった意味になります。
「裏金」は、残念ながらニュースなどで聞く機会が多い言葉の一つでしょう。これはそれだけ様々な企業で裏金が横行しているという、日本社会の実情の裏付けでもあります。
それではこのような裏金はどのように作られるのでしょうか?実際に明るみになり、話題となった裏金の作り方の仕組みを紹介します。
取引先と共謀して、相手先の口座に実際の取引より多めの金額を振り込み、差額を現金など足のつかない形で返してもらって自分のものにするやり方です。
たとえば、工事元請けのA社が下請けのB社と、下請け代金3,500万円で合意します。A社の担当者はB社に4,000万円振り込み、B社はA社の担当者に、裏金500万円を現金で手渡すといった手順です。
商品やサービスの料金を多めに計上して、顧客に料金を振り込ませます。顧客に対してはその料金が正規料金であるとだましたまま、社内の処理としては料金を間違って計上したとし、返金のために振込を行います。
ただし、振込先の口座は顧客ではなく、共謀した仲間が作った会社の口座です。仲間には手数料として何割かを支払い、残りの金額を自らが運営するダミーの団体の口座に振り込ませ、そこを経由して自らの個人的な口座に移すことで裏金とする方法がかつて使用されていました。
出張旅費は非課税であるのに加え、出張で発生する宿泊費や交通費、日当などは、社内の規定に即していれば実費精算でなくてもよいとされているため、経費の水増しが比較的容易です。そのため、架空の出張をでっち上げて費用を申請する「カラ出張」は裏金作りの手法として有名です。
印紙や切手、商品券などの金券を購入し、交際費などの費用として計上します。その後で、金券屋にて現金化するといった手口は、シンプルなためよく使われています。
業者から実際は買っていない商品に対して現金を支払い、業者に現金を一時的に預ける「預け」という手口や、請求書とは違う商品を納入させて差額を手に入れる「差し替え」という手口があります。
さらに、預けた現金を使って業者に買わせた商品券などの金券を受け取って現金化するケースもあります。
元請けなどからリベートなどの裏金を要求された場合、支払先を隠して支払う形になるため、経費としては認められない「使途秘匿金」として帳簿に計上されます。同じく経費として認められないものとして「使途不明金」がありますが、ふたつの違いは次の点です。
裏金が発覚すると使途秘匿金として計上せざるを得なくなり、40%の法人税と地方税などの大きな負担を負うはめになる点に注意しましょう。
裏金は、税務調査や内部告発、役所の場合は住民監査請求や情報公開請求などで発覚します。法人での裏金が発覚した場合、追徴課税として法人税などへの課税や、申告漏れに対する罰則として最も重く35〜40%を課税される重加算税などの支払が必要です。
また、法違反に該当して以下のような罪に問われるケースもあります。
社員が裏金を個人の使途に使った場合、業務上横領罪として立件される可能性があります。業務上横領罪は刑法にて「10年以下の懲役」の刑が適用されると定められています。
業務上横領罪に比べると一般的には知られていないかもしれませんが、特別背任罪も刑法で定められた刑罰の一つです。取締役などの社内である程度高い役職にある人物が、任務に背く行為によって会社に財産的な損害を与えた際に成立する犯罪であり、裏金に関わった社員にも適用されることがあります。罪が認められると、「5年以下もしくは5,000万円以下の罰金」が科されます。
脱税とは、払うべき税金を払わずに隠ぺいする行為を指します。
あるべきお金を無いものとして処理しているわけですので、裏金の中に課税対象のお金がある可能性は高いでしょう。むしろ、脱税を目的として裏金を作るケースも珍しくありません。脱税は「10年以下の懲役と1,000万円以下の罰金のいずれか、もしくは併科」という刑が定められています。
上記のような罪に問われた場合、その当人だけでなく所属している企業にも大きなダメージを与えます。これは、企業側が裏金を認識していたとしてもそうでなくても同じです。また、その企業だけでなく取引先も関係しているのではないかと疑われて捜査され、その企業も関係のあるなしに関わらず信頼性が大きく毀損されてしまいます。
ではそうならないために、企業はどのような仕組みを作ればよいのでしょうか?
裏金を防ぐために一番のカギとなるのは、管理部門(バックオフィス)、特に経理部門です。経理はその会社のお金を管理する部門なので、不正なお金の流れが無いかを知れる可能性が最も高い部門です。そんな経理部門が確認態勢を強化することが必要です。
大手企業はこのような確認態勢が強固で、なかなか裏金を作る隙が無いため、滅多に裏金が発覚することはありません(それだけに発覚した際には大々的に報道されます)。
注意すべきは日本企業の99%を占める中小企業です。中小企業はバックオフィスの強化に力を入れることができず、経理部門ひいては管理部門全体の役割を一人の担当者が担っていることもあります。そのような企業では、裏金を作れる抜け穴が存在している可能性は高いでしょう。つまり、直接部門への投資を注力したい気持ちを抑え、管理部門にある程度の投資をしていくことが、結果的に大きな損失や信頼性の喪失を防ぐことに繋がるのです。
「裏金」という言葉には、帳簿をごまかして脱税や違う目的に使うなどの意味があり、裏金作りの方法は多種多様です。しかし、裏金作りの大半は税務調査で発覚し、高額な追徴課税で苦しむ結末を迎えています。
不正な裏金作りには関わらないように、知ってしまった場合も内部告発などの手段で通報するように心がけましょう。