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学校法人の基本金とは?概念や種類、資本金との違いを解説

HUPRO 編集部
学校法人の基本金とは?概念や種類、資本金との違いを解説

会社の経理職から学校法人の経理職に転職した場合、学校法人特有の経理に戸惑うことも多いでしょう。なかでも、株式会社と学校法人とで最も異なる点のひとつに「基本金」という考え方があります。この記事では、営利法人と非営利法人の会計基準における違い、基本金の概念と種類、基本金と資本金の違いなどについて解説していきます。

営利法人と非営利法人の会計基準

まず、株式会社と学校法人には、営利法人と非営利法人という違いがあります。

株式会社:株主への利益配分を目的とする営利法人
学校法人:利益を出すことを目的としない非営利法人
営利法人である株式会社は、企業会計に基づいて会計を行います。一方、非営利法人はそれぞれの会計基準をもっています。学校法人は、私立学校を設立・運営する非営利法人であり、「学校法人会計基準」に基づいて会計を行うのです。「基本金」は、企業会計にはなく、学校法人会計基準や社会福祉法人会計基準などに登場する概念です。

学校法人会計基準の「基本金」とは

学校法人会計基準における「基本金」は、学校法人会計基準の第29条にて、次のように定められています。

第二十九条
学校法人が、その諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その事業活動収入のうちから組み入れた金額を基本金とする。

私立学校を設立・運営するには、校舎や遊具などの固定資産や研究費などに充てる資金が必要であり、それらを総称して「基本金」と呼びます。

基本金における4つの種類

基本金は4種類に分けられます。ここではわかりやすく説明しています。

第1号基本金
校舎や土地、遊具などの設備、備品、図書など、学校法人の基本的な活動に必要な固定資産の取得価額総額

第2号基本金
将来的に固定資産を取得するため積み立てている金銭などの価額

第3号基本金
研究費や奨学金の原資などとして設定された基金における積立額

第4号基本金
常にプールしておくべき資金として文部科学大臣が定めた金額(1か月分の運転資金程度)

「基本金」と「資本金」の違い

株式会社と学校法人は会計基準が異なるため、設立方法にも違いがあります。

株式会社:株主から出資金を集めて設立される
学校法人:企業や個人などから寄付を集めて設立される

出資金や寄付金は、次の勘定科目で計上されます。

《株式会社における出資金》
「資本金」で計上

《学校法人における寄付金》
基本は「寄付金」で計上するが、学校活動に必要な一部の資金は「基本金」として計上

※学校法人会計基準では「寄付金」、法人税法や私立学校法では「寄附金」が使われる傾向がありますが、ここでは「寄付金」としています。

つまり、学校法人は寄付によって設立され、その一部を基本金としてプールしているのです。基本金は、学校法人が運営継続のために保持する自己財源という位置づけになります。なお、学校法人には企業会計の概念である「資本金」はありません。

基本金組入前当年度収支差額とは

株式会社は、利益をどれだけ挙げたかを把握するために企業会計を行います。これに対して学校法人では、教育活動が円滑に行われたかどうか、事業活動における収入と支出の均衡状態を測定するために収支計算を行います。

「基本金組入前当年度収支差額」とは、事業活動収入から事業活動支出を引いたものです。この数字をもとに、毎年度の収支バランスを分析します。

さらに、基本金は計画的に積み立てる必要があるため、授業料などの負債ではない収入の一部を「基本金組入額」として基本金に組み入れていきます。

「基本金組入前当年度収支差額」から「基本金組入額」を引いた数字が、当年度終始差額となります。

基本金は取り崩しできるか

基本金は、学校法人が運営継続のために保持し続ける自己財源のため、取り崩しは基本的には認められていません。しかし、次のような所定の条件を満たせば、定められた金額の範囲内で取り崩しができます。

1.ある活動の一部あるいは全てを廃止した場合に、その活動に関する組入額
例:学部や学科の廃止など

2.経営合理化のため固定資産が不要になった場合に、固定資産の価額や将来的な取得費
例:研修施設などを売却して今後は取得予定がない場合や、コピー機などの備品を購入からリースに切り替えた場合など

3.その他のやむを得ない事情

まとめ

学校法人は非営利法人であり、学校法人会計基準に基づいて会計を行っています。「基本金」は学校法人会計基準の概念であり、企業会計における「資本金」とは全く異なるため、比較しないほうが理解しやすいでしょう。

基本金とは、学校法人の運営に必要な固定資産や研究費などに充てるための資金であり、基本的には取り崩さず、計画的に積み立てていく必要があります。ただし、所定の条件下では取り崩しが可能なため、条件を押さえておくとよいでしょう。

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