経理として働いていると従業員への給与や個人事業主等への報酬の支払いの際に出てくる源泉徴収ですが、なぜこのような制度があるのでしょうか?
そもそも源泉徴収とは、給与や報酬などの支払いを行う者が、個人の代わりに関係する税金を差し引いて納税する制度のことをいい、制度上の支払義務者を源泉徴収義務者といいます。
源泉徴収制度が導入された理由は、この制度を作った時代に税務員の職員が足りず、税務署のみで税金の管理をするのが難しかったためです。源泉徴収の制度により、①企業が税務署の代わりに税金額を計算してくれる、②企業が税金を徴収するため、税金の徴収漏れを防げるといった税務署にとってのメリットが大きく、現在でも続いているものです。
住民税や社会保険料が差し引かれる特別徴収も、基本的な考え方は同じで、源泉徴収に類似する制度です。
さて、前の項目で源泉徴収制度そのものについて理解を深めたかと思いますが、その上で、企業の源泉徴収担当者がどのような業務をやっていくのかを本項では紹介していきます。
源泉徴収にまつわる業務としては一般的に以下の手順で進めていくことになります。
① 対象取引の判別
② 金額の計算
③ 税金の納付
それでは、上記の手順に沿ってひとつずつ紹介していきます。
一つめの対象の判別では、そもそもどのような取引が源泉徴収の対象になるのかという判断していきます。以下の取引が主に源泉徴収の対象となる個人との取引の具体例です。
・給与や賞与
・原稿料や講演料等
・弁護士、公認会計士、税理士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
・プロ野球選手やプロサッカー選手に支払う報酬・代金
・芸能人への報酬
なお、法人との取引の場合にも一部源泉徴収の対象となる可能性もありますので注意が必要です。
詳細については下記国税庁のHPをご参照ください。
国税庁HP
対象となる取引が確定したら、次に源泉徴収金額の計算をしていきます。
源泉徴収金額の計算は支払内容によって変わりますが、一般的である給与と報酬の計算方法について紹介していきます。
給与については、支給金額から社会保険料等の控除を行い、従業員より「扶養控除等(異動)申告書」の提出を受け、申告された扶養家族の人数を源泉徴収税額表にあてはめて計算をしていきます・
報酬については、100万円以上か以下によって計算方法が異なります。
それぞれの場合の計算方法は以下の通りとなります。
【100万円以下の場合】
計算式:
源泉徴収額 = 支払金額 × 10.21%
計算例(支払金額が10万円の場合):
10万円 × 10.21% = 10,210円
【100万円以上の場合】
計算式:
源泉徴収税額 = (支払金額 – 100万円)× 20.42% + 102,100円
計算例(支払金額が200万円の場合):
(200万円 – 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 306,300円
今まで源泉徴収について見てきましたが、税額が計算によって算定されたら最後に実際に納付を行います。
源泉徴収した者は、原則として実際に支払いを行った月の翌月10日までに税務署に納めることとなります。但し、従業員が常時10人未満の場合は、税務署や市区町村で手続きをすることによって、納期の特例として年2回納付とすることもできます。
なお源泉所得税の納付の際は「所得税徴収高計算書」という納付書に源泉徴収額を記載し、税務署もしくは銀行で納付します。
万一、納付期限を過ぎて納めたときは加算税などが課される場合もありますので、あらかじめカレンダーで納付期限を確認し、必ず期限内に納付できるように注意しておきましょう。