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創業支援こそ未経験者向き!スタートアップ税理士法人ならではの「若手が自然と成長するしくみ」とは

税理士・税務ライター 鈴木まゆ子
創業支援こそ未経験者向き!スタートアップ税理士法人ならではの「若手が自然と成長するしくみ」とは

「Start Up Everywhere」__全国の起業家を支援できる体制を築き、世の中にもっと起業家を増やすことをビジョンに掲げ、創業支援のワンストップサービスを行うスタートアップ税理士法人。現在、全国展開とワンストップサービスの幅を広げようとしています。順調に成長して来たように見えますが、苦労した時期もあったとか。また、20~30代中心のメンバーたちが自然と成長するしくみもあるようです。創業者であり代表税理士でもある大堀優氏にお話を伺いました。

方向性の問題で仲間と分裂、大勢の前で泣いたことも

ー30歳で創業したきっかけ教えてください。

「サラリーマンになりたくない」。大学3年のとき、ぼんやりと思っていました。スーツでビシッと決めないといけない感じが苦手だったんです。それで「将来は独立して仕事をしよう」と決めました。資格という強みで独立することを考え、税理士を目指すことにしました。同時に「30歳で独立する」とも決意。税理士受験を開始し、会計事務所で5年間働いて独立しました。

ー創業した後は順調でしたか。
かなり大変でした。方向性を決めていなかった頃は、特に苦労しましたね。
多くの起業事例を見て自分でも経験した今だから言えるのですが、事業の方向性は経営をしていく中で徐々に定まっていき、世の中の課題に触れることでより明確になっていくものだと思います。当時は方向性が定まっていなかったので人のマネジメントで苦労しました。

特にきつかったのは、他の創業メンバーが退職したときです。3人の仲間と共に創業し、最初は仕事をこなすのに夢中でした。

しかし、組織が大きくなるにつれ、事業の方向性が私の中で明確になってくる。明確になるからこそ、そのビジョンに合うメンバーと合わないメンバーも明確になってくる。その結果、創業メンバーが退職することとなりました。彼らが辞めるとき、20~30人の全体会議の席で、大泣きしましたよ。これから成し遂げていくことを考えると必要な決断だったと今でも思いますが、それでも当時はつらかったです。長年共にがんばってきた仲間が去って、本当にさびしかったんですよね。

ー大変でしたね。

もう一つ、弊社の方向性を考えるきっかけになった出来事がありました。メンバー5人くらいのときに、男性スタッフを採用しました。ほとんど経験がなかったのですが、ていねいに教えたらどんどん成長していきました。給料も上がりました。

ただ、ある日突然「退職します」と言ってきたのです。びっくりしました。「残業だってほとんどないし、スキルアップもしている。何が不満なんだろう」と。聞いてみると、「この事務所には、担ぎ上げたい人がいない」と。このとき、ハッとさせられました。

「能力をつけて稼げるようにしただけではダメだ。『スタートアップ税理士法人はどこに向かうのか』『どう社会貢献をするのか』が理念として明確に見えていないと、人はついてこない」と痛感しました。つらかったけど、いい気づきをもらいました。
当時は人数が少ない中での退職だったのでリカバリーにかなり苦労しましたが、今なら当時退職したスタッフに、「あの時、気づかせてくれてありがとう。」と笑って言えますね。(笑)

ー現在、「Start Up Everywhere」をビジョンに、「話しやすさで、変えていく。新しさで、超えていく。」というミッション、「成長のための7UP」をバリューに掲げています。これを決めた後はどうでしたか。

予想していた通りでしたが、一定の新陳代謝はありました。成長企業ではよくある現象ですが、これまで方向性がはっきりしていない組織に所属していたメンバーは、方向性が定まることによって合うメンバーと合わないメンバーが明確になります。言い悪いの話ではなく、合うか合わないかの話なので悪い事ではありません。この組織の成長痛を乗り越えたことによって、ミッション、ビジョンやバリューに共感する仲間が集まりました。

スタートアップ税理士法人流「若手が自然と成長するしくみ」

ー御社は、20~30代の若いスタッフが中心です。若さにはどんな強みがありますか。

まず、ITリテラシーの高さです。税務業界は最近、テクノロジーの変化の対応に迫られることが多いのですが、みんなうまくキャッチアップしています。弊社ミッションの「新しさで、超えていく」にあるように、弊社スタッフは新しいものを取り入れることに積極的で、実際、お客様からは「アナログな会計事務所と違って、コミュニケーションを取りやすい」と言われます。
また、弊社は「クラウド会計で創業支援と言えばスタートアップ税理士法人」と呼ばれることを目指しており、実際、2021年にはfreeeを利用している会計事務所が全国で約3,000社ある中で、1位の実績を獲得しました。今後はマネーフォワードの導入実績もあげていき、クラウド会計全体で1位を狙いますが、これができるのは若さゆえです。

他、若さの強みは「話しやすさ」「フットワークの軽さ」。起業家も20~30代が多いので、話が合うだけでなく、相談もしやすいようです。平均年齢が高い会計業界ならではの「ITの話が通じない」「お堅い雰囲気で相談しづらい」といったことがありません。

ー逆に、若さゆえの課題は何ですか。

当然のことなんですが、経験が浅いことです。
顧問先のニーズが何なのか?どうすれば社長に喜んでもらえるか?という視点が抜けがちです。知識をつけて会計の数字を報告することで顧問先が満足してもらえると思っている若手が多いですが、そうではありません。
社長はお金を払ってプロに依頼している、会計税務のスキルが高いことは大前提です。
そのうえで、顧問先の期待値を超えるサービスを提供することが重要です。
それが何かというと、「気づかい」や「寄り添った対応」です。
例えば以下のような対応です。

・目を見て話をし、専門用語を使わず、顧問先の理解度を図りながら説明する。
・顧問先のビジネスの成功を自分のことのように喜べる。
・顧問先の不安を自分のことのように一緒に考えられる。
・仕事面だけでなく、プライベートの相談にも乗る。

こういった顧問先への気づかいや寄り添いは、ベテランスタッフにとっては当然のことであっても、若手スタッフからすると自分がすべきことと思っていないことがあります。
だからこそ、何をすれば顧問先は喜ぶのかをベテランから若手スタッフにしっかりと伝えていくことが重要だと思っています。

ー御社の動画で「スタートアップ税理士法人はどんどんチャレンジさせてもらえる」とスタッフの方がおっしゃっていました。

スタッフの自主性をうながすようにしています。たとえば「オークション」。弊社は月30件程の新規案件の依頼があるのですが、この案件を一覧できるように壁に貼り、担当したい人が手を挙げてチャレンジするしくみです。

この他、新たにオフィスを出すときは、そこで働くメンバーに物件選びからやってもらっています。任せることにより、当事者意識や責任感が生まれてくるのです。視座も高くなる。そうすると、メンバーたちも「この案件は私に任せてください」「このスタッフは私が育てます」と言ってくるようになります。「自分は次、このポジションに行きたい。そのためには後継者を育てておかないといけない」と、自分で考えられるようになるのでしょうね。結果、若手が自然と成長していきます。

ー挑戦できる環境はありがたいですが、相談できる環境がないと不安なものです。そのサポートはどうしていますか。

気軽に相談できる環境があります。弊社の執務室を見ると分かりますが、会計事務所によくあるシーンとした雰囲気とは真逆で、スタッフ同士いつも相談しながら仕事しています。この他、スタッフ向けに学ぶ環境を2つ、作っています。

1つは「ワーキンググループ」。クラウド上に設定したFAQなのですが、ありがちな悩みやお客様からの質問への回答を掲載しています。「専門用語を使わず、どう分かりやすく説明したらいいか」も含めて、です。もう1つは、スタッフ同士の勉強会。「検討すべき事案が生じたら、みんなで集まって勉強する」という形です。

また、マネージャークラスになったら、外部の管理職育成の研修に行ってもらいます。組織をまとめて事業を進めるには、管理職の意識を変えることが大事だからです。

ー税理士受験生のスタッフには、どう対応していますか。

11月下旬から5月までの繁忙期だと残業は増えますが、それ以外だと少なくなります。閑散期の残業時間は、1日1時間程度です。また、6月から9月まで「有給奨励日」を設けています。これを利用すれば、勉強に集中する環境を作れます。

この他、勤務時間は基本9時から18時なのですが、月8回まで「8時から17時」「10時から19時」を選ぶこともできます。ただ、受験生のスタッフを見ていると、仕事をうまく時間内に終わらせて、学校に行ったり勉強したりしているようです。

事業拡大に伴い40~50代のマネージャー候補も募集

ー御社は現在、事業拡大中だと聞きました。

「Start Up Everywhere」というビジョンの下、全国の起業家をサポートすべく、全国展開を計画しています。2023年4月には銀座に進出しますし、ゆくゆくは大阪・名古屋・福岡・仙台にも出店する予定です。また、ワンストップサービスの幅を広げるべく、2022年10月に司法書士法人を設立しました。また、ニーズに応じて行政書士法人、弁護士法人も作る計画です。

事業拡大すると、各支店、各法人で業務を行うメンバーが多数必要になります。1支店あたり最大50人規模で支店展開する予定です。当然、支店の数だけ管理職のポジションも増えます。支店長、マネージャー、育成スタッフもいないとまとまりません。
 今後、上のポジションを任せられるメンバーがどんどん必要になるので、成長を求める人にはいくらでもチャレンジできる環境があります。

ーどれくらいでステップアップできるのですか。

現在弊社の中心である20~30代のメンバーだと、管理職になれそうな人物には、入社して2~3年で抜擢することが多いです。実際、横浜オフィスの代表は30歳前後で打診しました。ただし、もちろん選抜するにも基準があります。「顧客満足度が高い」「業務管理ができる」はもちろんですが、「周囲に好かれているか」「この人みたいになりたい!と思われる要素があるか」が大事です。

ー先ほど「40~50代もマネージャー候補として募集している」とおっしゃっていました。

これまで通り、20~30代の若手は必要です。ただ、40~50代で組織をまとめられる人材も募集しています。現場を引っ張る若手メンバーを増やすことは組織を活性化させるので重要です。ただし、マネジメント経験の浅いメンバーのみでの運営では、組織運営を最適化することは難しく、全体を俯瞰して見られるベテランを要所要所に配置する必要があります。若手とベテランが協力して機能すると組織全体がまとまります。

現在、会計業界の経験者だけでなく、異業種からの転職者も採用しています。成熟しきった会社だと出世するのは難しい。一方、弊社はこれから全国展開をしていく段階です。いくらでも上のポジションを目指せます。「今からでも挑戦したい」人には向いています。

ー40~50代の方なら管理職候補となれるわけですか。

誰でもいいわけではありません。弊社のビジョンやバリューに共感できる人に来てほしい。特に、協力し合う姿勢は必要です。会計事務所経験者も異業種からの転職者も、それぞれ強みと弱みがあります。会計事務所経験者は税務の知識は豊富だけど会計業界における個人のスキルで活躍してきた成果、個人プレーに走りやすい。逆に、異業種からの転職者は「みんなで協力して解決」というスタンスで協調性はあるが、税務の知識は最初は弱い。張り合いつつも、お互いに歩み寄り、「足りない部分は補い合う」「若手の言葉にも素直に耳を傾ける」という姿勢であってほしいです。

共に成長、みんな前向き。だから創業支援はおもしろい

ースタートアップ税理士法人さんは、社名のとおり、創業支援に特化しています。いつ頃、そう決めたのですか。

独立後、しばらくしてからです。当初は特に創業支援に特化しているというわけではなく、中小企業のお客様全般を顧問先としてサポートしていました。

明確にしたのは、先ほどお伝えした退職の問題が生じてからです。ミッション・ビジョン・バリューを決めるにあたり、自分たちの業務を洗い直しました。幹部だけでなく、担当者やアシスタント、役員だけでなく、社員やパートなどの各レイヤーのメンバーを集めてワークショップを行い、自分たちが目指す先を真剣に考えました。すると「創業支援だ」という答えが出てきた。そこで、創業支援に特化しました。

ー税務だけでなく労務も含めたワンストップサービスを提供しています。なぜですか。

創業初期は会計や税務が主要テーマですが、徐々に労務の問題が浮上します。実際、「社会保険の業務をやってほしい」という要望が多かったんです。最初は外部の社会保険労務士に依頼していました。でも「弊社で全部サポートしますよ」と言えた方が、お客様は安心します。情報共有の手間もかかりません。そこで社労士法人を立ち上げました。

労務サポートをスタートしてからは、税務と労務のメンバーがそれぞれの強みを活かし、協力してお客様の課題解決に取り組むようになり、お客様の満足度も上がりました。また、労務と税務が相互にお客様を紹介し合うこともあります。ワンストップサービスならではのメリットです。

ー創業支援はどんなところがおもしろいのですか。

「一緒に取り組む、一緒に成長する」点ですね。会社設立時点からサポート、お客様と深い関係を築くことができますし、会社の成長をそばで見られます。サポートする自分自身も成長できる。これがとても楽しいです。

実は私、学生時代に会計事務所のアルバイトで既存の中小企業の会計を手伝ったことがあります。
既にある程度形になった会社の会計作業のため、前月の処理をコピーして進めることが多く、自分で考え理解してお客様の会計を組み立てていくことがありませんでした。そのような環境だと、自分自身の成長がなかなか感じられませんでした。一方、創業支援は、会計の処理の流れをお客様と一緒に作っていく。試行錯誤しているうちに、深い知識が身につくのです。

この他、起業家のお客様は20~30代が中心です。「起業=これからスタート」という要素のせいか、ポジティブな方が多い。私たちも前向きになれます。

ースタートアップ税理士法人が気になる方に一言お願いします。
会計業界の未経験者は、創業支援から始めた方がいいです。私はそう思います。
なぜなら、お客様が起業する時点からサポートするため、最初から高度な専門知識が求められるような場面があまり無く、会計業界の経験が無くても対応が可能です。お客様の成長に合わせて難しい問題も出てくるようになるのですが、それに合わせて自分自身も成長していくことが出来ればお客様も満足してくれます。気がつけば、基礎知識やお客様の対応能力が基礎からしっかりと身についています。ただ、そのためにはいい環境といいお客様が重要です。スタートアップ税理士法人なら、その両方を用意できます。また、弊社なら、税務会計のスキルを身につけたあとに、希望すれば、人材育成や営業、マーケティングなど、税務会計以外の組織運営に係わっていくことも可能です。

弊社の理念や思いに共感できる人には、ぜひ仲間になってほしい。一緒に起業のサポートをできる日を楽しみにしています。

今回お話を伺ったスタートアップ税理士法人のHPはこちら

この記事を書いたライター

2000年中央大学法学部法律学科卒業。㈱ドン.キホーテ、会計事務所勤務を経て、2012年税理士登録。WEBで税務記事を多数執筆。
カテゴリ:キャリア

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