新規上場を目指す準備として、内部統制が適切に機能していることを報告する資料を作成します。今回は内部統制をおこなうときに作成される3点セットについて解説していきます。
内部統制とは、「会社が健全な経営をするためのルールや仕組みのこと」を言います。会社の全ての部署で行われている業務に組み込まれています。
2000年代に米国で優良企業とみなされていたエンロン事件、日本でも大和銀行の巨額損失事件がおこりました。次々に発生した大企業の有価証券報告書等の虚偽記載に関する事件を受け、不祥事防止対策として機能させるために内部統制の取り組みがはじまりました。
内部統制をおこなうために、多くの一部上場企業で作成している評価文書があります。
この評価文書は3点セットと呼ばれ、「業務記述書」「フローチャート」「リスク・コントロール・マトリックス(RCM)」があります。
3点セットは、必ず作成することが求められている文書ではありませんが、内部統制で必要な基本ツールとされて作成されているのです。
業務記述書とは、会社のあらゆる業務の流れを文書化し、見える化したものです。会社のあらゆる業務内容を文章にして記述していきます。
各担当者が行う業務の流れに従い、それぞれのステップを文章に書き出すことで
より詳細な業務内容の整理や理解に有効な資料になるのです。
また、担当者が抱えるリスクやそれ対策を見つけることが可能になります。
フローチャートとは、会社のあらゆる業務の流れを図にして、見える化したものです。業務の流れを見える化することで、整理し、誰もが理解しやすくなることを目的としています。
フローチャートを作成することで「内部統制に問題はないか」また「業務のどの部分にリスクがあるのか」を発見しやすくしているのです。
リスク・コントロール・マトリックス(RCM)とは、それぞれの業務に存在するリスクに対し、どのように対処していくのかを一覧にした文書です。
業務記述書やフローチャートで業務の流れを見える化することで、表面化したリスクへの対処方法が見えてきます。
リスク・コントロール・マトリックスによって、業務で発生するリスクをどのようにコントロールしているのかを理解するために有効な文書になります。
「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」2つの基準に対応できるよう内部統制の文書を作成することが求められます。
3点セットと呼ばれる業務記述書、フローチャート、リスク・コントロール・マトリックスの作成手順について決まりはありません。現状の業務を理解するために業務記述書、フローチャートをドラフト作成した後、リスク・コントロール・マトリックスを作成する順番が効率よく作成できます。
まずは、3点セットのたたき台を作成するため、各業務担当者からヒアリングをしていきます。ヒアリングのポイントは、「誰が」「何を」「どのように処理したのか」をしっかり押さえることです。
各業務担当者のヒアリング内容をもとに、文書化し、業務の流れを図式化することで、ただき台を作成します。たたき台を作成することで業務全体の流れを把握することに繋がります。
「業務記述書」と「フローチャート」で作成した、たたき台をもとに「リスク・コントロール・マトリックス」を作成していきます。
実際に業務に関わる担当者と、客観的な視点で業務を見る内部統制のプロジェクトチームでリスクをピックアップしていくのです。リスクについては、業務を進めるうえで発生するミスや不正を判断し、アサーションの影響を考え作成していきます。内部統制におけるアサーションとは、リスク回避を指します。アサーションの要素は、次の6つです。
・実在性
・網羅性
・権利と義務の帰属
・評価の妥当性
・期間配分の適切性
・表示の妥当性
これらのアサーションを考慮し「リスク・コントロール・マトリックス」を作成することがポイントになります。
現場で業務をしている担当者に作成した「業務記述書」「フローチャート」「リスク・コントロール・マトリックス」の内容を確認してもらいます。
実際の実務と乖離はないか、リスク・コントロールが適切かなど判断・修正を加えながら3点セットの整合性の配慮が必要になります。
「フローチャート」「業務記述書」「リスクコントロールマトリクス(RCM)」は、財務報告プロセスに存在するリスクを分析できるため、今でも多くの会社で作成されています。
有効的な方法ですが、広範囲の業務の流れを3点セットに落とし込み、社内環境の変化を反映させ、継続的に運用することは大きな負担となることが指摘されています。
自社のリソースで不備なく作成できるか不安や時間短縮を考えている場合には、コンサル会社など専門家に相談ることもひとつの方法です。