税金の額を計算するには所得の計算方法や計算過程を正しく理解していなければなりません。細かい制度を理解して所得を計算する際には、具体的な事例を交えながら確認しておくと理解が早いです。今回は合計所得金額と総所得金額等の違いについて、事例を交えながら解説していきます。
法人税や所得税を計算する際には所得の金額を計算しなければなりません。
所得を計算するには複雑な計算過程を理解する必要があります。
なかでも、「合計所得金額」と「総所得金額等」は違いが分かりづらいものです。
両者の定義や違いについて、詳しく解説していきます。
合計所得金額と総所得金額等の違いは、「純損失や雑損失を控除する前か後か」という違いになります。
所得を合算した際に、最初に計算されるのが「合計所得金額」です。
合計所得から、純損失や雑損失などの繰越控除額を差し引いて計算したものが「総所得金額等」となります。
そのため、計算順序としては一旦「合計所得金額」を計算した後に「総所得金額等」を計算することになります。
所得を計算する際に、まず計算するのが合計所得金額になります。
合計所得金額とは、それぞれの所得を合算した金額のことです。
具体的には、以下の所得を合算した数値となります。
参考:国税庁『合計所得金額』
合計所得金額は主に以下の所得の判定をする際に使用されます。
所得が一定の水準を上回るか下回るかで、様々な税制優遇を受けられるかが決まるため、正確に計算しなければなりません。
合計所得金額は以下のケースに使用されます。
合計所得金額を計算したら次に総所得金額等を計算します。
総所得金額等とは、合計所得金額から純損失または雑損失等の繰越控除を適用したあとの金額のことです。
なお、純損失または雑損失等がない場合、合計所得金額と総所得金額等の額は一致します。
【総所得金額等の計算方法】
総所得金額等を計算する際に控除する金額としては、以下の繰越控除額が挙げられます。
過年度の純損失や雑損失など、繰越控除がある場合は総所得金額等の計算に考慮可能です。
参考:国税庁『総所得金額等』
「総所得金額」と「総所得金額等」は似ている言葉ですが、実は計算方法が異なります。
総所得金額等は総合課税と分離課税が含まれていますが、総所得金額には総合課税のみ含まれています。
一般的に、所得を計算する方法は総合課税と分離課税を合計して考慮することが多いので、税務で利用するケースは「総所得金額等」が多いです。
なお、分離課税とは他の所得と合算しないで計算する所得のことで、山林所得や退職所得などが代表例です。
総所得金額等の数値は以下のようなケースで利用されます。
ここからは、事例と共に解説していきます。
Aさんが以下のような所得を得ている場合、「合計所得金額」と「総所得金額等」の計算について確認しましょう。
なお、過年度の繰越控除が100万円あるものとする。
以上のケースの場合、「合計所得金額」は以下の計算で算出されます。
合計所得金額=500万円(事業所得)+100万円(不動産所得)+10万円(雑所得)+10万円(一時所得)×1/2+10万円(山林所得)=625万円
一方、「総所得金額等」は以下の計算で算出されます。
総所得金額等=625万円(合計所得金額)‐100万円(繰越控除)=525万円
総所得金額等は合計所得金額から繰越控除を差し引くため、同額あるいは総所得金額等の方が小さい数値になります。
合計所得金額と総所得金額等について見ていきました。
合計所得金額とは所得を合算した金額であり、合計所得金額から純損失や雑損失を控除したものが総所得金額等になります。
所得を計算する際は、細かい計算の違いで税負担額が大きく変わることがあります。
所得の計算方法を正しく理解して、税務に役立ててください。