資本準備金は財務戦略を立てるうえで様々なメリットがあります。
将来の赤字を補填する際に積み立てるという効果があるなど、資本準備金を有効活用することで企業活動の助けとなるでしょう。
今回は資本準備金のメリットについて、有効活用する方法や注意点なども交えて解説していきます。
資本準備金とは、株式会社に払い込まれたお金のうち、資本金として組み込まれない部分のお金のことです(会社法第445条)。
有事の際に備えて積み立てていくお金であり、企業の財務戦略上で役に立つお金です。
資本金は企業に払い込まれた資本のことであり、企業の財産として基本となるお金です。企業の体力を表すお金ともいえます。
資本準備金は、払い込まれた資本のうち、有事の際に備えて積み立てるお金という位置づけです。
また、後述するように資本準備金を取り崩すハードルは資本金を取り崩すよりもハードルが低く、柔軟な財務戦略に役立ちます。
資本準備金と似た勘定科目に「資本剰余金」というものがあります。
資本剰余金とは、資本取引のなかで余ったお金を指します。
そのため、払い込まれた金額を根拠とする資本準備金とは成り立ちが違うのです。
資本剰余金の例としては、自己株式処分差額やその他有価証券評価差額金などが挙げられます。
資本準備金を積み立てておくことで、将来の赤字を補填する際に役立ちます。
また、会社の規模を抑えることにより税制面で優遇を受けられるというメリットもあります。
資本準備金を有効活用することで企業の財務戦略で大いに助けとなるのです。
資本準備金をあらかじめ積み立てておけば、赤字が出たときに資本準備金を補填できます。
該当する会計期間が赤字になった場合、繰越利益剰余金がマイナス残高になる恐れがあります。マイナスとなった残高を補填するために資本剰余金を活用することで、赤字を補填するという仕訳が可能です。
例えば、1,000千円の赤字を計上した場合には以下のような仕訳でマイナス残高を補填します。
【会計仕訳例:資本準備金1,000千円を繰越利益剰余金に振替】
借方勘定科目 | 借方金額 | 貸方勘定科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
資本準備金 | 1,000千円 | 繰越利益剰余金 | 1,000千円 |
払い込まれたお金を資本金ではなく資本準備金に組み入れることで、税制の優遇を受けられることがあります。
というのも、税制を適用するうえでは資本金の金額が基準になるため、資本金の額を抑えることで払わなければならない税金が少なくなるなど、税制で優遇を受けられます。
その他、資本金の額を抑えることで外形標準課税の対象外になる、消費税の免税事業者となります。
資本金が1,000万円を超えない事業者は、一定の条件を満たせば免税事業者となれるため税制面で優遇を受けられるでしょう。
一般的に、資本準備金を取り崩す際は株主総会の普通決議で足ります(会社法448条1項)。
資本金を取り崩す場合は株主総会の特別決議が必要であり、債権者保護が必要です。
そのため、資本金を取り崩す場合に比べて取り崩しの手続きが容易であるため、柔軟な会計処理を進められます。
財務戦略をするうえで便利な資本準備金ですが、資本準備金には限度額が設定されているなど、いくつか注意点があります。
その他にも債権者保護手続きを行わなければならないなど、必要な手続きを忘れずに行うなど制度面での確認をしていきましょう。
資本準備金の計上には上限があり、払込金額の2分の1が上限となっています。
「資本準備金が資本金より多い」という状況は認められていないので、資本準備金を計上する際には注意しましょう。
例えば、「払い込まれたお金を全て資本準備金にしてしまい、資本金を増やすことを避けよう」という会計処理は認められていません。
資本準備金は企業の財務戦略において何かと便利な制度ですが、設定する金額に上限があることに注意してください。
資本準備金を取り崩す場合は、債権者保護手続きが必要です。
しかし、資本準備金のみを減額する場合(資本金に変動がない場合)は、債権者保護手続きを省略することができます。
手続きをする際は人件費などがかかるため、省略できればコストカットにも繋がるでしょう。
資本準備金のみを減額する場合で、以下のケースに相当する場合に債権者保護手続きは不要になります。
資本準備金を活用するメリットについて見ていきました。
資本準備金を積み立てておくことにより、財務戦略上で様々なメリットがあります。
資本準備金は取り崩しが比較的容易であり、赤字が出てしまったときの補填として便利です。
資本準備金の性質やメリットを理解し、財務戦略で有利になるように役立ててください。