労働分配率は、付加価値に占める人件費の割合のことです。
主に、「自社の人件費が適正な水準にあるか」を測る経営指標として使用されています。
「労働分配率ってどうやって使うの?」
「計算方法がわからない!」
そんなお悩みのある方。今回はこの労働分配率の計算方法について詳しく解説していきます。
そもそも「労働分配率」がよくわかっていないという方はまずは下記のコラムをご覧ください。
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労働分配率の見方は複数あります。
よく言われているのが、労働分配率から従業員の士気を読み取る見方です。
通常、労働分配率があがると、従業員の士気があがりやすくなります。逆に労働分配率が下がることで、従業員の士気が下がりやすくなったり、人材の流出がおこりやすくなったりします。
これは、労働分配率が上がる、ということは給与や賞与、福利厚生などが従業員に使用されるため、従業員の満足度があがりやすくなることが要因です。
下がっている場合は、人ではなく設備投資など別の部分に支出があてられ、従業員に満足にお金が渡っておらず、不満がたまりやすい環境となっている可能性があります。
このように、労働分配率の変動をみることで、人にまつわる現在の自社の状態を測りやすくなります。
また、別の見方をすれば、労働分配率が低いということは、「低い人件費で高収益をあげている」という見方もできるため、どういった観点で労働分配率をみるかで印象は異なるでしょう。
あなたの会社の労働分配率はどの程度の率にすべきでしょうか?
基準とされる労働分配率の値は会社の規模や業種によってさまざまです。
例えば、経済産業省の「経済産業省企業活動基本調査速報 2020年経済産業省企業活動基本調査(2019年度実績)図表5-1」では労働分配率は
2019年度
製造業…50.8%
卸売業…49.5%
小売業…50.0%
という数字が確認できます。
自社が小売業であれば、小売業の数字を参考にしましょう。
このような数字を参考とすることで、自社の労働分配率をどのくらいにするべきかがわかるようになります。
大事なのは、人件費のコントロールができていること。
同業他社と比較したり、自社の過去と比較したり、今後の労働分配率を決めて、実際に運用してコントロールしていきましょう。
労働分配率の計算方法は
労働分配率=人件費÷付加価値×100
で求められます。
人件費は、給料や賞与、退職金など、はば広く人に関わる費用です。
付加価値は売上をあげることで新しく生み出される価値のことを言います。
人件費や付加価値についてはこのあと詳しくみていきましょう。
最初に、労働分配率の計算をする際に使用する付加価値についてご説明します。
付加価値の計算方法は控除法と加算法の2つあります。
自社の価値から他社の価値を控除する方法で、中小企業庁方式ともいわれる計算方法です。
付加価値=売上高-外部購入価額
メーカーであれば材料費、購入部品、運賃などが外部購入価額、小売や卸売業であれば商品仕入高が外部購入価額に該当します。
自社が生み出した価値を積み上げていく方法で、日銀方式ともいわれる計算方法です。
付加価値=経常利益+人件費+減価償却費+金融費用+賃借料+租税公課
次に、労働分配率の計算をする際に使用する人件費についてご説明します。
労働分配率の計算をする際に使用する「人件費」には
などが含まれます。これらの勘定科目はどの会社でも使用する基本的な勘定科目ですので、必ず押さえておきましょう。
また、「あれ?これって人件費?」と思うような科目としては
・教育費
・賞与引当金繰入
などがあります。項目の集計漏れがあった場合、大きく労働分配率がズレる可能性があるので、集計の際漏れがないように自分の会社の「人件費」に該当する部分をピックアップしておきましょう。
労働分配率のほかに、労働生産性という指標があります。労働生産性は生産性分析の指標の一つで、従業員一人当たりの付加価値額を示します。
計算方法は
労働生産性 = 付加価値額 ÷ 常時従業者数
という算式で求めることができます。
労働分配率が高く、労働生産性が低いということは、従業員にお金を費やしているが成果が出ていないということなので、資金の配分が間違っている可能性があります。
労働分配率が低く、労働生産性が高いということは、少数精鋭の従業員で収益性の高い事業を行えている、と読み取ることができます。
労働分配率と組み合わせて考えると分析しやすいでしょう。
いかがでしたでしょうか?
今回は
についてご紹介いたしました。
自社の人件費を適正な水準にコントロールするために、押さえておきたい管理会計上の指標のひとつです。
社員の士気をあげるために労働分配率をあげた結果、利益を圧迫しては経営が傾いては本末転倒です。
逆に、他に資金を回した結果、労働分配率はさがったが、社員の労働意欲がなくなったり、離職につながったりすることもあります。
どちらにもならないように、コントロールをしていきましょう。
また、労働生産性をみながら、生産性があがっているかなどもあわせてチェックしておけばより安全です。
参照元:経済産業省企業活動基本調査速報 2020年経済産業省企業活動基本調査(2019年度実績)(PDF形式:575KB)