財務会計という言葉を聞いても、具体的にどんな会計なのか?何の目的で作成されるのか?イメージしにくい方も多いと思います。ここでは、財務会計の概要とその目的について、分かり易く説明します。
まず会計の全体像を把握するため、会計とは何か説明します。会計とは簡単に言えば、「ある時点でいくらお金や資産があるか?ある期間でいくら稼いだか?金額を把握し数字として見える化させる手続き」、のことです。
そのため一口に会計と言っても世の中には様々な会計があります、例えば馴染みのある家計簿も会計のひとつと言えます。 このように様々な会計がありますが、企業が行う会計は一般に、①財務会計、②管理会計、③税務会計、3つに大別されます。
では、財務会計とは具体的にどのような会計なのか説明します。 財務会計とは、一言でいうと「会計基準に従い、企業の財務情報を作成すること」です。財務会計には会計基準というルールがあり、そのルールに従って会計情報を作成します。
なお会計基準には企業会計原則、米国会計基準、国際会計基準など様々な会計基準がありますが、どの基準であれルールが明文化されており、そのルールに従って財務情報を作成することが要請されます。
そして、そのルールに従って作成される財務情報のことを、財務諸表と言います。詳細は後述しますが、財務諸表は主に貸借対照表(B/S=Balance Sheet)、損益計算書(P/L=Profit and loss statement)、キャッシュフロー計算書(C/F=Cash flow statement)の3つがあります。
財務会計で作成される主な財務諸表である、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書について説明します。 貸借対照表は、企業のある「時点」での残高を表すものです。時点というのは、例えば12月31日時点というように、ある時点を指しています。
貸借対照表はある時点における企業の資産、負債、資本を表しており、その企業に現金や固定資産等の資産がいくらあるのか、借入などの負債がいくらあるのか、資本金や過去の儲けの積み上げがいくらあるのか、といった残高の情報を示しています。
損益計算書は、企業のある「期間」での儲けを表すものです。期間というのは、たとえば1月1日~12月31日までの1年間を刺しています。損益計算書はある期間における企業の売上や費用や利益といった情報を示しており、いわば企業の成績表といえるものです。
キャッシュフロー計算書は、企業のある「期間」での現金の動きを表すものです。損益計算書と似ていますが、キャッシュフロー計算書は現金の動きのみに注目し、営業活動・投資活動・財務活動における現金の増減を示しています。
では、財務会計はそもそも何のために行われるのか、その目的について説明します。財務会計の目的は、「企業の財務情報を利害関係者へ情報提供すること」です。
ここでいう利害関係者の範囲は、銀行、投資家、取引先、政府、従業員等幅広く、その企業に関わる人は全て利害関係者といえます。こうした利害関係者へ、企業の財政状態や損益情報を説明するために、財務会計により作成された財務諸表が用いられるわけです。
例えば、皆さんが銀行として企業に融資する立場としましょう。その際、単に必ず返せるのでお金を貸してくださいと言われても判断に困ると思います。その代わり、いくら資産を保有しているか分かる貸借対照表や、いくら儲けがあるか分かる損益計算書を見せてもらえたら、融資の判断がしやすくなります。このように財務会計により、企業の財務状況を目に見える数字として提供することができます。
なお上場企業や一定規模以上の企業は、公認会計士による財務諸表監査が法令により要請されます。監査とは、独立した第三者である公認会計士が、企業の財務諸表を会計基準に従い適正に作成されているかチェックを行い、意見表明を行うことです。監査により、企業が作成した財務諸表の信頼性が高まります。
このように企業の経営状態・経営成績を財務諸表により見える化し、利害関係者に客観的な情報を提供することが、財務諸表の目的です。
参考として、財務会計以外の主要な会計である、管理会計と税務会計について説明します。 管理会計とは、主に企業の内部報告用に使用される会計です。例えば、店舗別の収益報告、短期~長期の予想収益計画等のように、主に企業経営の参考情報として作成されます。
財務会計が主に外部の利害関係者への情報提供が目的であるのに対し、管理会計は主に内部報告向けの会計となります。管理会計には特に決められた規則はなく、各企業が自社の運営形態に応じて、様々な管理会計を行っています。
一方、税務会計は税務申告用に使用される会計です。実際には、財務会計で作成された数字をベースに税務用に修正することにより、税務申告の金額を計算する会計です。
世の中には様々な会計がありますが、財務会計は企業が利害関係者に財務情報を提供することを目的とする会計です。財務会計により、企業の財政状況を見える化し客観的な情報を提供することが可能となることから、私たちの経済活動を支えている制度の一つと言えるでしょう。