消費税の軽減税率と法人税の軽減税率とは?経理担当者の実務ポイントも解説

軽減税率は消費税の8%だけではありません。法人税にも中小企業向けの15%特例があります。両者の違いと、経理担当者が確認したいインボイス対応・適用要件・期限、2027年4月の飲食料品1%引下げとの関係までをわかりやすく解説します。
そもそも「軽減税率」とは?消費税と法人税の違い
軽減税率とは、特定の目的のために、標準より低い税率を適用する仕組みです。
消費税は「生活に欠かせないものの負担を和らげる」ため、法人税は「中小企業の財務基盤を支える」ためと言えます。
軽減の中身や対象など、まずは全体像を一覧で見てみましょう。
| 消費税の軽減税率 | 法人税の軽減税率(中小法人の特例) | |
|---|---|---|
| 軽減の中身 | 標準10% → 軽減8% |
本則19% → 特例15%(年800万円以下の所得部分)。 所得が年10億円を超える事業年度は 17% |
| 対象 | 酒類・外食を除く飲食料品、週2回以上発行の定期購読新聞 | 資本金1億円以下などの中小法人(一部除外あり) |
| 制度の性質 | 恒久制度(2019年10月〜) | 時限の租税特別措置 |
| 期限・今後の動き | 2027年4月1日〜2029年3月31日は 飲食料品を1%に臨時引下げする大綱が決定 (法案は審議前) |
令和9年3月31日までに開始する事業年度が期限。 延長の可否は 令和9年度税制改正で議論 |
| 主に影響する実務 | 経費精算、税区分マスタ、インボイス | 決算、税額試算、資金計画 |
消費税は「毎日の正確さ」、法人税は「期限と要件の管理」が問われる制度です。
関わる担当部署も、消費税は日常経理やシステム担当、法人税は決算経理・財務・経営企画と、分かれるのが一般的です。
【消費税】毎日の経費精算で迷わないための軽減税率
8%になるもの、ならないもの
消費税の標準税率は10%(国税7.8%+地方消費税2.2%)、軽減税率は8%(国税6.24%+地方消費税1.76%)です。
消費税で軽減税率が適用されるのは、飲食料品(酒類と外食を除く)、そして定期購読契約に基づく週2回以上発行の新聞です。
「消費者向けの制度では?」と思われがちですが、企業間取引でも同じルールで税率が決まります。
会議費や福利厚生費、手土産代など、法人の日常経理にはこの判定が毎日のように登場します。
経理実務で迷いやすい4つの場面
法人の日常経理において、どちらの税率が適用されるか、以下の4つの場面をもとに見ていきましょう。
| ① 会議の食事 | 飲食店での店内飲食は10%です。 会議室にケータリング(出張料理)を呼ぶ場合、盛付けなどのサービスを伴うため外食扱いで10%。 一方、お弁当を買って持ち帰る、宅配で届けてもらうだけなら8%です。 同じ「会議のお昼」でも、頼み方で税率が変わります。 |
| ② 手土産とお酒 | 茶菓子の手土産は8%、酒類は10%です。 意外と迷うのが調味料で、アルコール分1度以上の本みりんは酒類なので10%、みりん風調味料やノンアルコール飲料(1度未満)は8%になります。 |
| ③ ギフトセット | 食品と食品以外を一体にしたセット商品は、税抜1万円以下で、かつ食品の価額が全体の3分の2以上なら、全体が8%。 この条件を外れると全体が10%になります。 |
| ④ 栄養ドリンク | 医薬品・医薬部外品に分類されるものは軽減税率の対象外で、10%です。 |
インボイスの確認ポイントと、2026年10月からの変更
受け取った請求書や領収書では、登録番号、税率ごとの対価と税額、軽減税率の対象品目である旨の記載が揃っているかを確認し、会計ソフトにも正しい税率で入力します。
あわせて押さえたいのが、2026年10月1日からの見直しです。
免税事業者など、適格請求書発行事業者以外からの仕入れに認められている仕入税額控除の経過措置は、令和8年度税制改正で、当初予定の50%ではなく70%へと緩やかに縮小する形に変わり、措置自体も2031年9月30日まで延長されました。
控除割合ごとに仕入額を管理できているか、会計システムの設定を確認しておきましょう(各期間の割合は国税庁の最新資料でご確認ください)。
【要注目】2027年4月から、飲食料品の消費税が1%に
2026年9月15日に閣議決定された大綱では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を1%に引き下げるとされています。
対象は現行の8%が適用される飲食料品と同じ範囲で、外食や酒類は対象外です。
事業者向けには、本則課税への移行の届出、簡易課税、総額表示などの特例も示されました。
ただし、法案は臨時国会(10月5日召集)で審議される段階で、現時点では成立していません。
確定内容は法案成立後に改めて確認が必要ですが、経理・システム担当が今から動けることもあります。
下記4点にまとめました。
- 1. 自社の取引で「飲食料品に当たる支出・売上」を棚卸しする(福利厚生の飲食、会議用のお弁当、手土産、食品を扱う事業なら売上全般)
- 2. 経費精算・購買・会計システムの税区分マスタに「1%」を追加できるか、ベンダーに確認する(10%・8%・1%が併存する可能性があります)
- 3. 2027年3月と4月をまたぐ取引(請求・支払)の税率判定ルールを、社内で決めておく
- 4. 法案成立後に、国税庁の特設サイトで確定内容を再確認する
【法人税】決算で効いてくる「15%特例」
800万円までの所得に15%
中小法人の所得のうち年800万円以下の部分には、本則19%に代えて特例の15%が適用されます。
800万円を超えた部分は23.2%です。
ここで大事なのは、高い税率がかかるのは「超えた部分だけ」という点です。
所得が800万円をわずかに超えたからといって、全体の税率が跳ね上がるわけではありません。
なお、事業年度が12か月に満たない場合は、800万円を月数で按分します。
特例がなければ198.4万円なので、差額は32万円です。
これが、国税(法人税)でみた1社あたりの軽減効果の上限になります。
15%が使えないケース:「資本金1億円以下」だけでは判定できない
「うちは資本金1億円以下だから大丈夫」と思い込むのは危険です。
次のようなケースでは、扱いが変わります。
- ・ 資本金が1億円を超える法人:特例の対象外で、所得の全額に23.2%
- ・ 大法人(資本金5億円以上など)の完全子会社など:中小法人に当たらず、全額23.2%
- ・ 前3事業年度の平均所得が15億円超(適用除外事業者):年800万円以下の部分も本則の19%
- ・ 当期の所得が年10億円を超える事業年度:年800万円以下の部分は17%(令和7年度改正)
- ・ グループ通算制度を適用している法人:15%特例の対象外(令和7年度改正)
親会社の増資や組織再編で、気づかないうちに要件を外れることもあります。
株主構成や所得の推移は、決算のたびに確認したいところです。
「2027年3月」は決算月ではなく、事業年度の開始日
「2027年3月まで」と聞くと3月決算の会社を連想しがちですが、期限の基準は決算月ではなく、事業年度の開始日です(令和9年3月31日までに開始する事業年度)。
延長されなかった場合、15%が使える最後の事業年度は、
- ・ 3月決算なら2027年3月期(2026年4月1日開始)
- ・ 12月決算なら2027年12月期(2027年1月1日開始)
です。
自社の決算月に当てはめて、何期分が残っているかを確認しておきましょう。
経理担当者が気をつけたい3つのリスク
ここまで見てきた2つの軽減税率には、共通する落とし穴があります。
以下3点を解説していきます。
- ① 「恒久」と「時限」を混同しない
- ② 判定ミスは、あとから追徴で返ってくる
- ③ 税金を減らすために、会社の成長を止めない
① 「恒久」と「時限」を混同しない
1つ目は、消費税の軽減税率は恒久制度ですが、法人税の15%は期限付きの租税特別措置という点です。
しかも2027年4月からは、消費税にも臨時の「1%」が加わる見込みです。
経営管理部門の方にとって重々承知ではあるかと思いますが、「どの税率が、いつからいつまで」を整理しておくことが日頃重要になります。
法人税の15%は、2009年度にリーマン・ショック対応として2年限定で創設され、延長を重ねて今に至っています。
「ずっと続くもの」と思い込まず、毎年の税制改正で期限と中身を確認する習慣をつけたいところです。
② 判定ミスは、あとから追徴で返ってくる
2つ目は、資本金だけを見て15%で申告していたのに、実は除外規定に当たっていたといった点です。
こうしたケースでは、税務調査などで誤りが見つかると、本則税率との差額に加えて、加算税や延滞税が課される可能性があります。
判定の根拠は、定期的に社内で記録に残しておくと安心です。
③ 税金を減らすために、会社の成長を止めない
3つ目は、制度そのものではなく、使い方についてです。
「年800万円を超えると税率が上がるから」と、期末に不要な経費を使ったり、役員報酬を調整したりして、利益を790万円あたりに抑える...そんな思考が過ぎりませんか?
上述したとおり、23.2%がかかるのは800万円を超えた部分だけです。
利益が100万円増えれば、税金を払ってもなお手元には資金が残ります。
年間最大32万円の軽減を守るために、事業拡大や人材投資の機会を逃してしまうのは、自社の財務戦略として正しい判断なのか、考える必要があります。
【注目】今、管理部門が最も注視すべきは「法人税の軽減税率(15%)」の行方!
最後に、これから動く可能性が高い「法人税の15%特例」の現状に触れておきます。
この特例は、7回の延長・拡充を重ねてきました。
直近の令和7年度改正でも、所得10億円超の部分的な引上げと通算法人の除外という見直しをしたうえで、2年延長されています。
ところが今年9月、政府税制調査会の専門家会合で、リーマン対応が続くのは不自然で継続は不要、との意見が出たと報じられました。
一方で、経済産業省は令和9年度税制改正要望(2026年8月)で、「政策効果を高める観点から見直しを行った上で延長」を求めています。
結論は、年末の与党税制改正大綱で示される見通しで、廃止が決まったわけではありません。
ただ、もし廃止されれば、所得800万円以上の会社では、国税だけで年間一律32万円の負担増です。
地方法人税や法人住民税の法人税割まで含めると、概算で約37〜39万円(地方の税率により変動)になります。
管理部門としては「延長」「見直しのうえ延長」「期限切れ」の3つのシナリオで、翌期以降の税額と資金計画を試算しておくと、対応がスムーズです。
この記事を書いたライター

Hupro Magazine編集部 石田
株式会社ヒュープロにて、オウンドメディア「Hupro Magazine」のライティングを担当。専門性の高いテーマでもわかりやすく、実務に役立つ記事づくりを心がけています! 業界動向や転職市場のリアルを踏まえた情報発信を通じて、キャリア形成に役立つコンテンツをお届けします。士業・管理部門での転職をご検討の方は、業界特化型の転職エージェント「ヒュープロ」をぜひご活用ください。







