
AIの進化により、経理・人事・労務・会計事務所などの業務は大きな変革期を迎えています。「自動化が進み、もっと効率的に」と期待される一方で、現場はどう変化しているのでしょうか。そこで、転職エージェント「ヒュープロ」では、働き方に関するアンケートを実施しました。そこから見えてきた、現場のリアルな声とは…?
近年はAIやDX化が進み、バックオフィス業務を取り巻く環境も大きく変わり始めています。
例えば、領収書や請求書のデータ化、仕訳入力の自動化、給与計算システムの高度化など、これまで人が多くの時間をかけていた業務は、少しずつ効率化されるようになりました。
その一方で、「AIで便利になったはずなのに、なぜか忙しさは変わらない」「むしろ業務範囲が広がった気がする」と感じている方もいるかもしれません。
実際のところ、現場ではどのような変化が起きているのでしょうか。
今回はヒュープロ登録者を対象にアンケートを実施し、士業・管理部門で働く方々のリアルな働き方について調査しました。
| 調査対象 | 管理部門(経理・人事・労務・総務・法務など)および士業(会計事務所スタッフ・公認会計士・社労士など)の就業者 |
| 有効回答数 | 39名 |
| 調査時期 | 2026年5月 |
| 主な調査内容 |
・残業時間の実態 ・リモートワークの理想と現実 ・フレックスタイム制の希望 ・理想の働き方 |
残業時間に関するアンケートでは、主に以下4点に沿ってお聞きしました。
それぞれについて、アンケート結果を詳しく見ていきましょう。
【繁忙期における平均残業時間】

【閑散期における平均残業時間】

| 残業時間 | 繁忙期 | 閑散期 |
|---|---|---|
| 0〜10時間 | 35.9% | 51.3% |
| 10〜20時間 | 5.1% | 23.1% |
| 20〜40時間 | 25.6% | 23.1% |
| 40〜60時間 | 20.5% | 2.6% |
| 60時間以上 | 12.8% | 0% |
今回のアンケート結果から概算すると、繁忙期の平均残業時間は約30時間、閑散期は約14時間となりました。
繁忙期は閑散期のほぼ2倍の残業が発生している計算です。
会計領域は、特定の時期に業務が集中しやすい職種です。
(経理であれば月次・年次決算、会計事務所であれば確定申告や年末調整など)
そのため、年間を通じて一定の忙しさが続くというよりも、繁忙期と閑散期の差が大きいのが特徴です。
実際、一般的な労働者の月平均残業時間が13〜15時間*程度とされる中、今回の調査では閑散期が約14時間とほぼ同水準だった一方、繁忙期は約30時間と大きく上回る結果となりました。
常に長時間労働というわけではないものの、特定の時期に業務負荷が集中しやすい。
これが、士業・管理部門ならではの働き方の特徴と言えそうです。

過去5年間で残業時間が「大幅に増えた」「やや増えた」と回答した方は、全体の約55%という結果になりました。
AIやDXの話題を聞く機会は増えましたが、「実際はそこまで楽になった実感がない」という方も多いのではないでしょうか。
転職相談の現場でも、「システムは入ったけど結局手作業が残っている」「人が辞めても補充できず、仕事だけ増えている」といった声を耳にすることがあります。
便利なツールは増えているものの、それを使いこなす体制づくりや業務の見直しまで進んでいる企業は、まだそれほど多くないという背景があるのではないでしょうか。

残業が増えた理由として最も多かったのは「人手不足・採用難」、次いで「業務範囲の拡大」という結果になりました。
近年はバックオフィス人材の採用が難しくなっており、特に経験者採用では企業側が苦戦するケースも少なくありません。
実際に現場で働いている方の中にも、退職者の補充がされる前に業務を引き継いだり、気づけば経理だけでなく労務や総務まで担当している、といった経験がある方は多いのではないでしょうか。
また、法改正への対応も見逃せないポイントです。
雇用保険の適用拡大や定額減税対応など、ここ数年だけでも実務担当者がキャッチアップすべき内容は増えています。
AIやDXが進む時代だからこそ、「何を自動化するか」だけではなく、「誰がその仕組みを設計し、運用するのか」がますます重要になっていると考えられます。

一方で、残業が減った理由として「システム導入・DX」が約7割にのぼる結果となりました。
結局DXって意味あるのか、そう感じる方もいるかもしれません。
ですが、今回の結果を見る限り、活用できている企業ではしっかり効果が出ているようです。
エージェントの視点から見ると、現在はまさに「DXを推進できる組織」と「アナログから脱却しきれない組織」の格差が広がる時代と言えます。
転職市場でも、単なる作業・処理をこなす人材というよりも、「ツールの導入・運用で業務改善ができる人材」の市場価値が高まっています。

残業理由として最も多かったのは「日中に終わらなかった通常業務」でした。
一方で、「イレギュラー対応・社内からの問い合わせ対応」も約3割を占めています。
特に、経理や総務の方なら、「自分の仕事を進めたいのに、気づけば問い合わせ対応で一日が終わっていた」という日も、あるあるなのではないでしょうか。
管理部門や士業は組織を支える立場だからこそ、顧問先や他部署からの質問、何か書類を回収するためのリマインドなど、気にかけることも多いはずです。
その結果、決算や申告書作成などの集中業務を、残業時間に行っているケースも多いのかもしれません。
残業を減らすためには、業務量そのものの削減だけでなく、「集中できる時間をどう確保するか」という発想が重要になってくるのではないでしょうか。
リモートワークに関するアンケートでは、以下3点についてお聞きしました。
それぞれの結果を詳しく見ていきましょう。
【現在のリモートワークの頻度】

【理想のリモートワークの頻度】

| 頻度 | 現在の頻度 | 理想の頻度 |
|---|---|---|
| 原則出社 | 87.2% | 15.4% |
| 月数回 | 2.6% | 12.8% |
| 週1〜2日 | 5.1% | 28.2% |
| 週3〜4日 | 2.6% | 30.8% |
| フルリモート | 2.6% | 12.8% |
現在のリモートワークの状況で最も驚いたのは、「原則出社」が87.2%という結果でした。
コロナ禍を経てリモートワークが広がったイメージがありますが、士業・管理部門の現場では、今も出社が当たり前という企業が大半のようです。
経理や労務は、紙の証憑や契約書の管理、セキュリティの観点からどうしても出社を求められる面もあります。
一方で、理想の働き方を見ると「週1〜4日程度のリモート」を希望する方が過半数を占めています。
完全在宅ではなく、「出社も在宅も選べる働き方」が求められていることが分かる結果となりました。

リモートワークのメリットで最も多かったのは「通勤時間の削減」でした。
家事・育児・勉強との両立や集中力の向上が続いていることからも、多くの方が求めているのは「時間を有効に使える働き方」なのかもしれません。
特に士業・管理部門は、資格勉強や知識のアップデートが欠かせない職種です。
1日往復1〜2時間などの通勤時間をどう使うか。
その積み重ねが、働き方の満足度にも影響していると考えられます。

一方で、リモートワークのデメリットの1位は「コミュニケーション不足」でした。
この結果からも、求められているのはフルリモートではなさそうです。
「集中したい日は在宅で働きたい。でも相談や打ち合わせは対面で行いたい」
士業・管理部門で働く方々のリアルな本音がここにありそうです。

フレックスタイム制については、「導入されていないため、強く希望する」と「導入されているが、業務上活用しづらい」を合わせると約64%でした。
多くの方が、働く時間をもっと柔軟に調整したいと感じていることがわかりました。
経理の月次・年次決算、税理士事務所の確定申告、社労士事務所の年度更新や算定基礎届など、士業・管理部門の仕事にはどうしても繁忙期と閑散期があります。
だからこそ、「毎日同じ時間に働く」よりも、「忙しい時期はしっかり働き、落ち着いた時期は勉強や家庭の時間に充てたい」と考える方が多いのかもしれません。
実際、転職相談でも「フレックス制度があるか」を気にされる方は年々増えています。
ただ、制度があるということを確認するだけでは不十分です。
「周囲が使っていないから利用しづらい」「結局決まった時間に出社している」といった声も少なくありません。
もし転職活動をする際は、エージェントを通して、制度の活用状況もあわせて確認すると良いでしょう。
最後に、士業・管理部門で働く皆さんの理想の働き方について、自由記述でお聞きしました。
回答を見ていると、単に仕事量を減らしたいというより、「専門性を高めたい」「勉強や家庭と両立したい」「自分で働き方をコントロールしたい」といった声が目立ちました。
また、「経営に近い立場で意思決定を支えたい」「業務改善にも関わりたい」といったコメントもあり、キャリアへの意欲の高さもうかがえます。
今回のアンケートから見えてきたのは、士業・管理部門で働く方々が求めているのは「楽な働き方」ではなく、「成果を出しながら長く活躍できる働き方」だということです。
リモートワークやフレックス制度も、そのための手段の一つでしょう。
AI時代だからこそ、「どんな仕事をするか」だけでなく、「どんな環境で力を発揮できるか」の重要性は、ますます高まっていきそうです。