法人税の軽減税率は延長される?経営管理人材が押さえたい「節税か成長か」の判断軸

法人税の軽減税率(15%特例)は、2027年3月末までに始まる事業年度が期限です。このまま延長されるのか、見直されるのか。経理・財務担当の方にとって、気になる話題ではないでしょうか。本記事では、公表されている資料をもとに、制度の基本や現在の状況を整理しました。ぜひチェックしてみてください。
中小企業における法人税の軽減措置とは
まず、中小企業の法人税率について確認しましょう。
所得の金額によって、税率は次のように分かれます。
- • 年800万円以下の部分:15%(特例) ※特例がない場合は、本則の19%
- • 年800万円を超える部分:23.2%
法人税の税率は、会社の規模によって異なります。
資本金1億円超の大企業は、所得の全額に23.2%がかかります。
資本金1億円以下の中小企業は、年800万円以下の部分が本則の19%で、年800万円を超える部分は大企業と同じ23.2%です。
さらに、中小企業の財務基盤を支えるため、年800万円以下の部分の税率を、19%から15%へ引き下げる措置が設けられています。
これが、法人税の15%特例です。
中小企業における法人税の軽減措置(15%)の期限と見直しの論点
法人税の軽減措置(15%)はいつから?
法人税の軽減措置(15%)は、そもそも2009年度にリーマン・ショック対応として2年限定で始まりました。
日本経済新聞によると、その後7回の延長・拡充を重ねています。
令和7年度改正でも2年延長されましたが、適用の条件は絞られました。(*1)
所得が年10億円を超える事業年度は、年800万円以下の部分の税率が15%から17%になります。
グループ通算制度を使っている法人は、15%特例の対象外となり、年800万円以下の部分にも本則の19%がかかります。
(*1)出典:国税庁|令和7年度法人税関係法令の改正の概要「3 中小企業者等の法人税率の特例の見直し」
法人税の軽減措置(15%)はいつまで?
法人税15%の特別措置が適用される期限は、令和9年(2027年)3月31日までに開始する事業年度までです。
前回の令和7年度の与党税制改正大綱には、次の期限が来たときに、特例のあり方を改めて検討するとされています。(*2)
その検討の結果は、今年12月にまとまる令和9年度の与党税制改正大綱で示される見通しです。
法人税の15%特例の廃止は、まだ決まっていませんが、延長されるのか、見直されるのかが決まる時期は、近づいている点を押さえておきましょう。
(*2)出典:内閣府|第7回 税制のEBPMに関する専門家会合(2026年9月1日)資料一覧「【証7-2】財務省説明資料(中小企業税制)」
法人税の軽減措置(15%)見直しの論点とは
中小法人における、法人税の軽減措置(15%)の見直しの論点は、令和8年9月1日の政府税制調査会・専門家会合で整理されました。
財務省は、15%特例が投資や賃上げを促す仕組みになっていないこと、赤字の企業には届かないこと、利益の大きい会社にも同じ額が減ることなどを課題に挙げています。
一方、経済産業省は、減税で増えた手元資金が人件費や設備投資に回っていると説明し、経団連、日本税理士会連合会とともに、適用期限の延長を求めました。
今後の焦点は、法人税の軽減措置(15%)を延長するかどうかだけでなく、どのような企業を支援対象とし、減税措置をどのような政策目的に結びつけるかという点にもあります。 現時点では、廃止や延長の結論が決まったわけではありません。
経理管理部門の担当者としては、制度の動向を追うとともに、自社の所得規模や適用条件を確認し、特例が見直された場合に税負担がどの程度変わるのか、あらかじめ試算しておくことが重要です。
15%の軽減措置がなくなると、納める法人税はいくら増える?
15%特例が失効すると、年800万円以下の所得部分の税率は本則の19%に戻り、納める法人税が増えます。
国税(法人税)の増加額は、次の式で求めることができます。
- 納める法人税の増加額 = 年800万円以下の所得部分 × 4%(本則19% − 特例15%)
- • 所得300万円の会社:300万円 × 4% = 12万円
- • 所得500万円の会社:500万円 × 4% = 20万円
- • 所得800万円以上の会社:800万円 × 4% = 32万円(所得10億円超は 800万円 × 2% = 16万円)
ここまでの32万円は、国税(法人税)のみの金額です。
実際には、地方税も一緒に増えることを踏まえて計算すると、次のとおりです。
- • 法人税:32万円
- • 地方法人税:約3.3万円(法人税 × 10.3%)
- • 法人住民税の法人税割:約2.2万円(法人税 × 7%。税率は自治体で異なる)
- • 合計:約37.5万円
15%特例を使えるのは、2027年3月31日までに始まる事業年度です。
事業年度とは、会社の会計の1年間(決算から次の決算まで)のことです。
基準になるのは、その年度がいつ終わるかではなく、いつ始まるかです。
例えば、3月決算の会社が最後に使えるのは、2026年4月に始まり、2027年3月に終わる年度です。
次の年度は2027年4月に始まるので、対象外になります。
12月決算の会社は、2027年1月に始まる年度まで使えます。
この年度が終わるのは2027年12月ですが、始まりが2027年3月31日より前なので、対象に含まれます。
自社の決算月に当てはめて、特例を使える最後の事業年度がいつなのか、確認しておきましょう。
「節税」と「成長投資」、どちらを取る?
法人税の軽減措置を実務に落とし込むと、所得が800万円を超えそうな場合に、税負担を抑えるために決算前の支出を増やす、という考え方もあるでしょう。
ただし、まず押さえておきたいのは、所得が800万円を超えても、利益全体に対する税率が上がるわけではないということです。
税率が23.2%になるのは800万円を超えた部分だけであり、800万円以下の部分には引き続き15%が適用されます。
では、節税と成長投資を考えるにあたって、所得を790万円に抑えた場合と、1,200万円まで伸ばした場合で、企業に残るお金を試算してみましょう。
なお、地方税を除き、法人税(国税)だけで計算します。
- 所得を790万円に抑えた場合
- • 法人税=790万円 × 15%=118.5万円
- • 税引き後に残るお金=790万円 − 118.5万円=671.5万円
- 所得を1,200万円まで伸ばした場合
- • 法人税=800万円 × 15%+(1,200万円 − 800万円)× 23.2%=120万円 + 92.8万円=212.8万円
- • 税引き後に残るお金=1,200万円 − 212.8万円=987.2万円
所得を790万円から1,200万円に増やした場合、法人税を差し引いても、会社に残るお金は671.5万円から987.2万円へと増加します。
増えた所得410万円のうち、法人税の増加分は94.3万円です。
つまり、増加した所得の約77%にあたる315.7万円が、税引き後に会社に残る計算です。
この試算からわかるように、所得が800万円を超えたからといって、必ずしも利益を抑えることが有利になるわけではありません。
一方で、事業の状況によっては、支出によって税負担を抑えることに意味がある場合もあります。
事業計画に活かすための考え方
節税か成長投資かを考えるにあたっては、節税額だけではなく、支出によって得られる効果や、将来の売上・生産性への影響、手元資金の必要性なども含める必要があります。
何から考えるべきか迷った際は、以下3つの観点からまずは整理してみましょう。
| 税負担の比較 | 15%特例が適用される場合と、適用されない場合の納税額を試算する |
| 支出の効果 | 採用や設備投資によって、売上や生産性がどの程度向上するかを検討する |
| 資金回収の見通し | 投資額に対して、どのくらいの期間で回収できるかを試算する |
たとえば、所得1,200万円の場合、15%特例が適用されると法人税は212.8万円、適用されない場合は244.8万円となり、税額の差は244.8万円 - 212.8万円=32万円(地方税を除く)となります。なお、計算式は以下のとおりです。
- ・ 15%特例が適用される場合: 800万円 × 15% + 400万円 × 23.2% = 212.8万円
- ・ 15%特例が適用されない場合: 800万円 × 19% + 400万円 × 23.2% = 244.8万円
- ・ 税額の差: 244.8万円 − 212.8万円 = 32万円
一方、採用や設備投資によって売上や生産性の向上が見込める場合は、税額の差だけでなく、投資によって得られる効果も比較する必要があります。
投資額の回収見込みも、その判断材料の一つです。
仮に200万円の投資によって年間80万円の増益が見込める場合、単純計算では投資額の回収に2.5年かかります。
このように、税負担と投資効果を数字で整理することで、事業計画に複数の選択肢を反映しやすくなります。
税額を計算するだけでなく、その数字を資金の使い道や今後の事業展開を考える材料として活用することも、経理人材に求められる役割の一つと言えます。
数字で提案できる経理が、キャリアの選択肢を広げる
管理部門、特に経理・財務を担当されている方にとって、日々の業務を進めながら税制改正などの情報をキャッチアップし、実務に落とし込むのは、なかなか簡単なことではないと思います。
一方で、税制改正の内容を自社の数字に置き換え、事業計画や経営判断に必要な材料を整理することは、経理・財務における経験やキャリアの幅を広げる機会にもなります。
また、経理のキャリアには、システム導入や業務改善を進めるプロジェクト推進型、経営数値を分析して戦略を支える経営戦略型など、さまざまな方向性があります。
自分の経験を活かせるキャリアにはどのような選択肢があるのか、ほかの業務タイプと比較してみたい方は経理の仕事を8つの業務タイプに分けて解説した記事もチェックしてみてください。
この記事を書いたライター

Hupro Magazine編集部 石田
株式会社ヒュープロにて、オウンドメディア「Hupro Magazine」のライティングを担当。専門性の高いテーマでもわかりやすく、実務に役立つ記事づくりを心がけています! 業界動向や転職市場のリアルを踏まえた情報発信を通じて、キャリア形成に役立つコンテンツをお届けします。士業・管理部門での転職をご検討の方は、業界特化型の転職エージェント「ヒュープロ」をぜひご活用ください。







