
30代・40代の経理人材が、AI時代に身につけるべき市場価値とは何か。管理部門専門転職エージェント「ヒュープロ」のキャリアアドバイザー・田村拓靖さんに、転職市場のリアルや、これから評価される経理人材の条件について聞きました。
ご相談いただく方のバックグラウンドは結構バラバラではあるんですが、割合として特に多いのは、月次・年次決算を一人で回せるような経験をお持ちのリーダークラスの方から、係長・課長クラスといった、30代〜40代の方々を中心に支援させていただいています。
そうですね。
ただ、最初から「キャリアを上げたい」とご相談に来られるかというと、そうでもないんです。
最初はやはり「今の会社が忙しすぎる」「年収がなかなか上がらない」「働き方が柔軟じゃない」といった、条件面の悩みが相談の入り口になるケースがほとんどですね。
30代、40代になってくると、介護や育児といったライフイベントと仕事をどう両立させるか、リアルに悩まれる時期ですからね。
はい。
ただ、そこから少しだけ踏み込んで、「では、残業が減って年収が希望通りになったら、本当は何をしていきたいですか?」と中長期的な目線をすり合わせていくとどうなるか。
最終的には、「今のままで自分の市場価値は果たしてどれくらいあるんだろう?」という、将来への不安に行き着くことが多いんです。
そうですね。
実際、多くの方が「経理として実務経験は積んできたけれど、この経験が今後も評価され続けるのだろうか」という不安を持たれています。
特にここ数年はAIの進化が非常に速いので、「自分がやっている仕事は将来的に残るのか」「何を身につければ市場価値を高められるのか」といったご相談も増えていますね。
ただ、今後の市場価値を考えるうえで大事なのは、「何年実務経験を積んでいるか」だけではなく、「その経験を通じて組織にどんな変化をもたらしたか」だと考えています。
はい。
要するに、「これまでに自分が所属してきた会社を、管理部門の立場からどう成長させてきたか」という足跡ですね。
例えば、「裏方としてIPO(新規上場)を達成させた」とか、「経理業務の仕組み化を進めて生産性を向上させた」とか、あるいは「内部統制の整備によって組織運営を安定させた」といった実績です。
単に業務を担当したという話ではなく、自分がどのような価値を発揮したのかを語れる方は、企業側からも『実力のある管理部門人材』として高く評価されやすいですね。
間違いなく言えるのは、AIの波が経理部門にも急速に押し寄せてくるということです。
実際にCFOクラスの方々とお話ししていても、AIの活用は世の中的にも大きなトレンドになっており、「自動化によってどれだけ工数を削減し、会社を効率的に回せているか」といった点が、株主からも注目される重要なポイントになってきています。
これはIPO(新規上場)を目指す準備企業でも同じです。
少し時間はかかりますが、その変化は確実に各社の「求人票」の要件として落ちてきます。
AIをツールとして実務に組み込めることは、今後ますます前提になっていくと思います。
ただ、AIで業務を効率化すること自体は、すでにスタッフレベルでも広がってきていますよね…
だからこそ今後評価されるのは、「与えられた業務を正確に処理する人」ではなく、「業務そのものをどう改善するか」「どこまでをAIに任せるべきか」を考えられる人になってきています。
経理業務の仕組みづくりや業務改善に主体的に関わってきた経験は、今後ますます市場価値につながっていくと思います。
「経理部門」と「事業・経営」をしっかりと接続させて、経理体制を構築できるか、いわゆる全体最適の視点が鍵になるかと思っています。
これまでは、各部署から正確に情報を集約し、緻密に仕訳を切って決算数値をまとめ上げることが「経理の重要な役割」とされてきましたよね。
ですが、これからはそういった実務の多くをAIやRPA、あるいはAIエージェントなどが代替していくようになります。
だからこそ、そういったシステム化が進む局面において、「ここまではAIに任せて、ここは人が判断しよう」と自ら意見を出せる人や、的確な判断を下していける人材が求められているんです。
まさにそうです。
なので、転職時のアピールポイントとして「今まで定型業務を一生懸命やってきました」というだけだと、企業側からすれば「それはAIやアウトソーシングでもできるのでは?」と判断されてしまいがちです。
管理部門は本来、会社の方針やルールを現場に落とし込んでいく役割を担っています。
だからこそ、現場のスタッフよりも一段高い視座を持ち、中長期を見据えた組織づくりを考えられるかどうか。
そうした視点を持てる人こそが、これからのAI時代に高く評価される経理人材だと考えています。
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