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公認会計士はAIに代替されてしまうのか?会計事務所従事者が考えてみた。

HUPRO 編集部2019.09.11

公認会計士など仕業はいつの時代も権威のある職業として人気ですが、皆さんは「公認会計士って計算だらけだしAIに代替されるのではないだろうか?」という疑問は持ったことはないでしょうか。筆者は会計事務所で働いており、その経験からよく公認会計士の仕事はAIに代替されるのかという質問をよくされます。私自身は公認会計士ではありませんが、実際に会計事務所で公認会計士の方と一緒に働く中で客観的に考察した内容を整理してみました。

公認会計士の仕事とAI

 公認会計士の仕事がAIに代替されるかどうかを考えるうえでまずは公認会計士の仕事はどのようなものなのか理解しておく必要があるでしょう。
公認会計士の仕事のメインは財務諸表監査といい、上場企業が決算書を発表するのに欠かせないものです。よくニュースや新聞で「〇〇商事が決算発表、30%の減益で国内市場で難航」といった報道や記事がありますよね。ずばり、その決算に権威として承認を与える先生というイメージです。もっと具体的に言うと、企業は自社の営業部門が集計した売上を経理部門でまとめてそれを売上と主張しますが、売上以外でも販売管理費や貸借対照表の資産の金額などそれが正しいかどうか・日本の会計基準に即しているかどうかを公認会計士が調査して問題ないかどうか意見を出します。これが監査意見です。監査意見があることで、その会社の決算書が信頼できるものとして投資家が安心して証券所で投資したり他の会社が業務提携したりでき、資本市場が成り立っているのです。
では従業員は何をするかというと、かなり泥臭いと公認会計士の方からはよく言われます。例えば、クライアントから業務記述書やデータを受け取り売上集計まで不正が起きていないかをチェックし、エクセルに「どう売上科目の金額を調査したか」や「調査した結果、問題がなかったか」をひたすらまとめていく作業になります。そして、「何をチェックするかのロジックを構成する」というシニアの業務と、「そのロジックを実際に実行していく」というジュニアの業務が大きな柱となります。

AIがそもそも未熟

 公認会計士の仕事がAIに代替されるかどうかという話ですが、結論からいうとここ5年はまず殆どないでしょう。これには2つの理由があり、1つにはAI自体がまだ未熟であり、研究や論文レベルのことはできても実務やビジネスで実際に応用されている分野が全般的に限られるからです。会話できるAIがあるとしても、これはロボオペレーターや一部のホテル窓口だけであり、すし屋の店員や保険の営業ビジネスパーソンがAIになることはまだ考えられないでしょう。そんな中で、法律でも規定されており、ミスや不十分があると何億とクライアントや投資家から訴訟されかねない監査業務をAIが代替することはまず考えられないです。

会計事務所がAIを導入できない背景がある

 2つ目は、1つ目と被るところも多いですが、日本の監査業界の特徴にあります。それは、「大手会計事務所は殆どが外資でノウハウがそろっている点」と、「中小の監査法人は監査対象が規模が小さい」という点です。大手会計事務所にはたとえばKPMGだと、KPMGのブランドを借りてあずさ監査法人が業務を行うため、本社KPMGのブランドルールを厳守しないといけません。こうした外資ブランドは本社のルールが非常に厳しく、業務効率化という名のもとで安易に名も知れないソフトウェアや人材を利用して何か失敗があり本社ブランドを日本現地法人に傷つけられることがないよう、とくにこういうAIソフトウェアを業務に突っ込むとかいう話にうるさいです。よって、海外本社がAIを業務に使おうとか言うことにならない限りまずAIが業務に介入してくることはまずないでしょう。もし、「監査にAIを!」といって抜本的な改革をしたとして、欧州の長い歴史で培ってきた外資ブランドが、抜本的改革で日本支店がやらかすリスクがあるのでかなり慎重になるはずです。こういう点からも大きくAIを入れて会計士を代替させる時代は遠いと思います。
中小監査法人がAIを代替する可能性が低いことは想像しやすいと思います。クライアント規模も小さく、エクセル数ファイルで業務が完結するような案件にクライアントに多大な金額は請求できません。つまり、中小監査法人の案件はAIを代替する予算や出資を投入できるほどの規模ではないということです。

まとめ

 以上AIの現在の状況と公認会計士業界がAIを取り入れる姿勢について述べてきましたが、いかがでしたでしょうか。筆者は会計事務所でITのコンサルタントをしておりますが、実際のAIはやはりGAFAなど巨大IT企業等に最先端技術を扱うことが限られ、市場としてはRPAの自動化などもっと低次のものしか商用化されていないと思います。皆さんもアマゾンエコーやGoogle検索のサジェスチョンのほかにAIが身の回りで使われているか想像してみてください。そうしたAIが監査業界に導入されること自体は将来あるでしょうが、やはりまだ先の話でしょう。ちなみに、会計事務所がクライアントからもらう監査報酬は人力(関与人数×稼働時間)に応じてほぼ比例するので、公認会計士がAIに代替されたら監査報酬体系も変わる大きな変革です。今後の監査業界動向に関するニュースはチェックしていきましょう。

カテゴリ:コラム・学び

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